ゲームセンターをも席巻する「鬼滅の刃」 プライズゲーム用景品が大人気
今春、全国各地のゲームセンターは新型コロナウイルスの流行により、地域によっては臨時休業を余儀なくされ、オペレーター(※ゲームセンターの経営会社)各社は大きなダメージを負ってしまった。現在は客足、売上がコロナ禍以前の水準に少しずつ戻りつつあるようだが、どこのオペレーターもいぜんとして厳しい状況が続いていると思われる。
そんななか、ちょうど政府の緊急事態宣言が出された前後のタイミングで出荷が始まり、今なおたいへん活況を呈しているゲームがある。それはプライズゲーム、より正確に言うと漫画「鬼滅の刃」のグッズを景品として使用したプライズゲームだ。
休業していたゲームセンターが一斉に営業を再開した6月以降、筆者が行く先々で足を運んだ店のプライズゲームコーナーには、必ずと言っていいほど「鬼滅の刃」の景品が投入されている感がある。景品の種類はフィギュア、ぬいぐるみをはじめ、キーチェーンマスコットやクッション、あるいは作中に登場した武器を模したおもちゃにいたるまで、実に多岐にわたる。
客層も男女を問わず、若いアニメファンから、親子で来店したファミリー層にいたるまで幅広く、昼夜を問わず客付きが非常に良い印象を受ける。人気が集中するあまり、「鬼滅の刃」の景品を投入したプライズゲームには「おひとり様1個まで」などと書かれたPOPを貼った店舗も少なからず見受けられる。
メーカー、オペレーター各社で売上が絶好調、客の評判も上々
大手オペレーターのバンダイナムコアミューズメントでは、「鬼滅の刃」の景品を利用したキャンペーンなどを特に積極的に展開している。
同社にメールで伺ったところ「『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開を記念し、タイアップキャンペーン”『鬼滅の刃』弐ノ章(にのしょう)-戯典(ぎてん)-”を2020年10月1日~11月29日まで、全国215店舗の直営アミューズメント施設『namco』で開催しました。
期間中、遊びをテーマとした描きおろしイラストを使用した『缶バッジ』や『スタンド付きアクリルプレート』をはじめ、『ちょこっとひっかけフィギュアぷち』、『ぽてっとフィギュア』『ともぬい-彩典-』、『カード付マトリョーシカ缶」など12種、計58品がナムコ限定アミューズメント景品として登場しています」という。
また、「コロナ禍により店舗の売上が前年を大きく下回っていた状況から、『鬼滅の刃』人気により回復基調へのスピードが速まっています。現在、アミューズメント景品を使用したキャンペーンで、歴代最高売上を更新中です」(同社広報)というのだから驚きだ。
ゲームセンターの運営を手掛けるセガ エンターテインメント、景品の製造・販売を手掛けるセガの両社でも、「セガプライズからは、ぬいぐるみ、フィギュア、雑貨と幅広いラインナップで展開しておりますが、そのどれもが予想を上回る売れ行きです。
特にフィギュアが好調で、女性層に向けた手軽なフィギュアなども好調になっています。想定を上回る好評をいただいており、幅広い年齢層のお客さまにお求めいただいております」(セガグループ広報)という。
自社で「鬼滅の刃」景品の製造・販売はしていないものの、タイトーが経営するタイトーステーションでも「たいへん人気があり、映画の公開前後からは常に人気プライズのトップ3にランクインしています」(タイトー広報)とのことだ。
また、「鬼滅の刃」景品を多数販売しているフリューは、今月12日に通期業績予想の上方修正を発表。キャラクタ・マーチャンダイジング事業の説明を見ると、「新型コロナウイルス感染症の影響により、アミューズメント施設の市場環境は厳しいものの、当社のクレーンゲーム景品における受注好調を反映して、通期売上高の見通しを引き上げました」(※「通期業績予想の修正に関するお知らせ 」より引用)というのだからすごい。
各社とも、来店客からの評判もすこぶる良いようだ。
「お客さまから、たいへん多くの反響をいただいております。遠方からのご来店や初めてのご来店など、これまでナムコ店舗にいらっしゃらなかったお客様にもご来店いただいております。小学校低学年のお子様連れの、3世代ファミリーでのご来店などが目立ちました。11月25日現在で、無料の配布チラシ配布数は50万枚を突破しました。表紙を5種類準備しているため、全種類を集めたお客様もいらっしゃいました。
前述の劇場半券施策で配布するノベルティ『ポストカード』も、準備した80万枚がほぼなくなりました。なくなった店舗より、6月~7月で実施した『壱ノ章特典 イラストカード』(※全13種)の配布を行っています」(バンダイナムコアミューズメント広報)
「想定を上回る好評をいただいており、幅広い年齢層のお客さまにお求めいただいております」(セガグループ広報)
「全国のタイトーステーション、およびタイトーFステーション全店で、何かしらの『鬼滅の刃』プライズを導入しており、いずれの店舗でも好評をいただいております。特に、ぬいぐるみやフィギュアは人気があり、商品によっては店頭に出して早々に売り切れてしまうものもあるため、発注数が他のコンテンツのプライズよりも多い状況です」(タイトー広報)
オンラインプライズゲームでも人気アイテムに
スマホやPCで遊べるオンラインクレーン(プライズ)ゲームでも、「鬼滅の刃」景品はたいへん盛況だ。
バンダイナムコアミューズメントが運営する「とるモ」では、「既存のユーザーの参加率向上に加え、幅広い新規ユーザーを獲得でき、コロナ禍でのオンラインクレーンに対する需要の高まりに対し、さらなる盛り上がりを見せる大きな要因となっています。
『鬼滅の刃』関連景品のプレイ時に、炭治郎の録りおろしボイスが聞けるようにして、お客様の遊ぶ楽しみが広がる企画となっています」(同社広報)と、オペレーションにも面白い工夫をこらして人気向上につなげている。
「セガキャッチャーオンライン」でも、セガグループ広報によると「鬼滅の刃」の景品は「同サービス内においてもトップクラスの人気でご好評をいただいております」という。同じくタイトーからも「『タイトーオンラインクレーン』でも、同様に『鬼滅の刃』は人気があるため、他コンテンツのプライズよりも数量を多く発注している状況です」とのコメントをいただいた。
筆者がゲームセンターで働いていた90年代から、各メーカーがプライズゲームの景品として作るグッズ類は、発売の半年~3か月ほど前までに注文を締め切る受注生産方式で販売されている。一部の定番商品をのぞき、どんなに好評な景品でも再生産されないため、「早く取らないと入手できなくなってしまう」というプライズゲームならではの回転の早さも、その人気に拍車をかける要因となっているように思われる。
これから年末~年始にかけての書き入れ時を迎えるにあたり、引き続き「鬼滅の刃」景品の新アイテムが全国各地の店舗に多数投入されることになるだろう。コロナ禍でオペレーター各社の売上が大幅に減少するなかで、これだけの人気を集めるのは本当にすごいことだ。
今から10年ほど前に、同じく週刊少年ジャンプの漫画「ワンピース」の景品が人気を博したことがあったが、もしかしたら「鬼滅の刃」はこの人気、売上ともに上回ることになるかもしれない。
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable