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アイドルは3作目で変わる。指原莉乃プロデュースの≠MEがダークなバレンタインソングを歌う意味

斉藤貴志芸能ライター/編集者
左から蟹沢萌子、谷崎早耶、冨田菜々風、菅波美玲(撮影/S.K.)

指原莉乃プロデュースで昨年メジャーデビューしたアイドルグループ、≠ME(ノットイコールミー)。さわやかでエモい青春路線の楽曲が人気を呼び、オリコン1位も獲得したが、3rdシングル『チョコレートメランコリー』は一変。一方的に好きな相手に執着して、狂気にも似た想いでチョコを作るダークなバレンタインソングに。この変化が意味するものは? メンバーから4人に聞いた。

ライブ前の円陣は珍しいほど長くて

――YouTubeチャンネルのツアー潜入企画では、≠MEはライブ前の円陣が長いということでした。リーダーの萌子さんの確認事項が多いからですか?

蟹沢萌子 私が話し始めますけど、メンバーそれぞれ、私が気づかなかったことも指摘してくれます。あんなにたくさん話が出る円陣は珍しいんじゃないかと(笑)。でも、みんなが主体的なのは良いことなので、意見を言いやすい環境を作るのも自分の役割かなと思っています。

――早耶さんの「100の質問」の企画では、コミュニケーションの本を読んでいるとのことでした。

谷崎早耶 このお仕事をさせていただくと、いろいろな世代の方と交流があって。以前は誰にでも話し掛けられたのに、最近、若干人見知りになってしまったんです。自分が大人になるにつれて、考えることが多くなった分、初めての方だと構えてしまって。それで距離を縮めようと、コミュニケーションの本を買いました。その本を読んでから、相手の方を知るために、たくさん質問したりしています。

――携帯の待受はメンバーの永田詩央里さん、という話も出てました。

谷崎 今は変えて、その日やることのリストにしています。今日の私の待受は「ドン・キホーテに行く」(笑)。お話し会で着るものを買いたかったんです。実はもう買ったんですが、1週間くらい、そのままになっていました(笑)。

菅波美玲 私も「○○の締切はいつ」というのを待受にしています。すぐ忘れてしまうので。

冨田菜々風 萌子のいたずらで私との2ショットを待受にされたので、仕返しで、私も別の2ショットを萌子の待受に設定しました(笑)。

蟹沢 変えどきがわからなくなって、ずっとそのままですね。

冨田 その前は、地元の鹿児島の霧島神宮のご神木を下から撮った写真を、待受にしていました。

蟹沢 私のホーム画面の待受はこの1年くらい、ずーっと櫻井ももちゃんです。季節ごとに夏ももちゃん、冬ももちゃんと変えていて(笑)。次の季節には最新バージョンにしたいと思います。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

イントロから「こう来たか!」と

――3rdシングルとなる『チョコレートメランコリー』の音源は最初、メールで送られてきたりしたんですか?

冨田 みんなで集まって聴きました。

菅波 何かのコメント録りかと思って行ったら、「次の曲が決まったので聴きましょう」みたいな。

――そこでゴシックロックの曲が流れて、どよめいたり?

冨田 「うわっ!」という感じでした(笑)。

蟹沢 3枚目なので、今までとちょっと違う曲かなと、楽しみにしていたんです。イントロが流れた瞬間、「おーっ! こう来たか!」と。早耶ちゃんと目が合った記憶があります。

谷崎 合ったね。お互い「こういう曲なんだ!」と思って。=LOVEさんも3枚目の『手遅れcaution』でテイストが変わって、曲によっていろいろな見せ方をできるのが素敵だなと思っていたので、ノイミー(≠ME)も今回は挑戦になると、気合いが入りました。

蟹沢 歌詞もみんなで目で追っていたら、<レクイエム>とか意味を知らない言葉や初めて聞く言葉が出てきて、新しいと思いました。

好きすぎて周りが見えなくなるのはわかります

――主人公の女の子は、やっぱり怖い感じはしました?

冨田 相手の人を相当好きなんだと思います。

菅波 好きすぎて行きすぎて、チョコレートの中に何か危ないものが入ってそうな怖さがありますけど(笑)、自分の中で物語を作ってしまうのはわかる部分もあります。

――おっ、そうなんですか?

菅波 私はアニメが好きで、熱中すると、その作品のことしか見えなくなってしまって。たとえば『BLEACH』に日番谷冬獅郎くんという大好きなキャラクターがいて、何をするにも「冬獅郎くんだったらどうするかな」とか考えていたり(笑)。この曲の女の子も<君>のことが好きで好きで、周りなんて見てないと思うんです。最後の最後に<話したことのない君のため>と出てきて、「えっ、話したことがないのに約束したの?」という、まさかの展開が待っていました。

冨田 ところどころ「おや?」となりながらも流れで聴いていて、そこで鳥肌が立ちました。でも、私も大好きなうちのワンちゃんのことを想ったら、こうなるかもしれません(笑)。

谷崎 私は現実にこういう気持ちになったことはないので、歌うときに感情移入するのは、すごくドキドキします。

冨田菜々風(とみた・ななか) 2000年7月17日生まれ、鹿児島県出身。ラジオ『≠ME鈴木と冨田のりんりん7!』(ラジオ日本)に出演中
冨田菜々風(とみた・ななか) 2000年7月17日生まれ、鹿児島県出身。ラジオ『≠ME鈴木と冨田のりんりん7!』(ラジオ日本)に出演中

この感情になって歌わないと見せかけになるので

蟹沢 私は自分にまったくない感情だと思いました。だからこそ、主人公の気持ちを知りたくて。この曲を初めて聴いたとき、胸が苦しくなったんです。「今はちょっと聴けない」というときと、逆にこれしか聴きたくないときがありましたけど、レコーディングまでに少しでも気持ちがわかるように、延々と聴いていました。

――主人公と同化して歌おうと。

蟹沢 やっぱりダークな恋の形を表現するに当たって、ちゃんと自分がこの気持ちになれないと、見せかけだけになってしまうので。振り入れを重ねていくほど、世界観に全員で入っていけました。頭で考えなくても、この感情が湧いてくるようになったと思います。

――萌子さんのパートだと、オチサビ前の<こっち見て喜んで? そんな目で震えないでよ>は、相手が震えているところも想像したり?

蟹沢 想像して歌いました。自分の中で<こっち見て喜んで?>は相手に期待の目を向けて、<そんな目で震えないでよ>はジトッとしたイメージです。レコーディングで最初は振り切りすぎたのか、前半と後半で人格が違うように聞こえてしまって、「もっとナチュラルに」と言われました。結果こうなって、自分でこだわったところです。

蟹沢萌子(かにさわ・もえこ) 1999年10月25日生まれ、神奈川県出身。ラジオ『ジェネZ』(bayfm)に出演中
蟹沢萌子(かにさわ・もえこ) 1999年10月25日生まれ、神奈川県出身。ラジオ『ジェネZ』(bayfm)に出演中

台詞パートには念を込めました

――美玲さんと早耶さんは台詞パートがあります。

谷崎 ≠MEの楽曲では、台詞は『てゆーか、みるてんって何?』で、みるてん(本田珠由記)が「いきまーす」と言っているのが唯一だったので、メロディから急に台詞が入るのは新鮮でした。サビ前だし、自分で言いたい気持ちが密かにあって、仮レコーディングのときから、すごく心を込めて言いました。

――早耶さんは2番の「君とだったら...私怖くないよ」になりました。

谷崎 笑っているのか、淡々としているのか。両方のニュアンスで録って、淡々としているほうが選ばれました。淡々と言いながら感情は込めて、2サビに入っていけるようにしました。

――1番の美玲さんの「一緒にいくって約束したでしょ?」は、普段の笑顔のイメージと打って変わって、ゾッとしました。

菅波 めちゃめちゃ練習しました。携帯にいろいろなパターンを録音して自分で聴いて、レコーディングでは念を込めたバージョンと虚無な感じの2パターンを録って。どっちが使われるかと思ったら、念を込めたほうになりました。

冨田 美玲の台詞の言い方がアニメ好きならではの上手さで、ゾワーッと鳥肌が立ちました。振付と一緒に見ると、さらにゾワゾワします。

蟹沢 さややん(谷崎)と美玲ちゃんは甘い言葉が上手で、普段は萌え台詞を言ってくれるメンバーなんです。今回のダークな台詞はどうなるかと思ったら、いつもと違う2人の声が聞けて、こっちもいいなと。

――意外さはありつつ?

蟹沢 そうですね。パフォーマンスのときも、いつものキュルンキュルンとした目と違って、どこか冷めた瞳でスッとしていて。

冨田 新しいファンがつきそう。

谷崎 どんなファンだろう(笑)。

冨田 お話し会で絶対「あの台詞を言ってほしい」ってなると思います(笑)。

谷崎 ご要望があれば言います!

谷崎早耶(たにざき・さや) 1999年10月7日生まれ、熊本県出身。ラジオ『オレたちゴチャ・まぜっ!~集まれヤンヤン~』(MBS)に出演中
谷崎早耶(たにざき・さや) 1999年10月7日生まれ、熊本県出身。ラジオ『オレたちゴチャ・まぜっ!~集まれヤンヤン~』(MBS)に出演中

想いが強すぎて怖いのをどう見せるか

――菜々風さんのオチサビの<これが真実だわ よく聞け 民衆よ>も、インパクトがあります。

冨田 曲の流れからは感情が爆発しそうなところで、予想外にすごく落ちていて。想いがさらに強くなりすぎて恐怖を感じさせるのを、MVでどう見せようかと考えました。振付がフリーだったので、床を舐めるようにしてみたら、振付のCRE8BOYさんが「いいね!」と言ってくださいました。

――MVでも全体的に、皆さんの今までにない表情が出ていますね。

谷崎 ≠MEはさわやかで疾走感がある青春ソングが多かったので、リップシーンでも笑顔を意識していました。でも、私は今回、一度も歯を見せてないくらい雰囲気をガラッと変えています。全員が見たことのなかった表情をしていて、メンバー同士でゾワッとなったり「いいね」と言ったりしているので、ファンの皆さんに新たなノイミーを見ていただけると思います。

菅波 まっすぐガッと見るのでなく、下から舐め回す感じにしたのは初めてでした。

冨田 ちょっと余談になりますけど、私と(落合)希来里がリップシーンを一緒に撮ったので、マネージャーさんが2人に動画を送ってくれたんです。でも、最初間違えて早耶に送られていて(笑)。

谷崎 今回は自分とリップシーンを同時に撮ったメンバーの分だけ送られたんですけど、私には菜々風と希来里の分も来たから「ラッキー!」と思って(笑)、家でめっちゃ見ました。2人の表現力が高くて横顔もクールで、楽曲の世界観にピッタリでした。

冨田 それはズルいから「早耶のも送って」と言ったんですけど、くれませんでした(笑)。

谷崎 恥ずかしいので(笑)。

蟹沢 私は美玲ちゃんとペアだったんです。自分で見返したら、ダークな顔をやりすぎていて。ちょっと恥ずかしくて、美玲ちゃんに2画面の私のほうを「絶対見ないで」と言いました(笑)。

菅波 そう言われましたけど、私は見ました(笑)。めちゃめちゃダークなのがすごく良くて、拍手喝さいでした。

友チョコを業者のように大量に作ってました(笑)

――実際のバレンタインには、どんな思い出がありますか?

菅波 高校までは毎年、お母さんと一緒にチョコを作っていました。私1人だと、オーブンの使い方もわからないので(笑)。夜9時から12時くらいまでかけて作って、テニス部のメンバーとクラスの友だちと先生にあげました。あと、忘れたらいけないのが、お父さんとお兄ちゃんとおじいちゃん。おじいちゃんからはホワイトデーにお返しが来て、去年はポーチでした。何10倍にもなって返ってきて(笑)。

冨田 私は実家の周りに年が近い友だちがたくさんいて、バレンタインに配りに来てくれたんですね。嬉しいのと同時に「ヤバい! こっちは作ってないぞ」と思って(笑)、毎年ホワイトデーにお返ししていました。

谷崎 お兄ちゃんとお父さんには毎年あげていたんですけど、中学生の頃に反抗期があって、お父さんのことがちょっとイヤというか、恥ずかしくなってしまって。その2年だけは、お兄ちゃんにしかあげませんでした。

菅波 私は逆だ。お兄ちゃんにあげなかった時期があります。

谷崎 うちはお兄ちゃんとは仲が良いんです。何年か経って、お母さんから「あの頃のパパは本当に悲しんでいたよ」と聞いて、申し訳なかったと思いました(笑)。

蟹沢 中学でも高校でも、バレンタインは友チョコパーティーのような日でした。前々日から業者のごとく(笑)、たくさん作って簡易的なラッピングをして、学校に行くんです。すれ違う女の子がみんな袋を持っていて、「渡したっけ? あげる」みたいな。帰る頃には自分が持ってきたチョコはほぼ空っぽで、みんながくれたチョコでいっぱいでした。毎年そうなるのがわかっていたので、バレンタインの1週間くらい前から、コンビニでお菓子を見ても買いませんでした(笑)。

菅波美玲(すがなみ・みれい) 2000年2月5日生まれ、福島県出身
菅波美玲(すがなみ・みれい) 2000年2月5日生まれ、福島県出身

フレッシュさをプロフェッショナルなものに

――ノイミーは去年メジャーデビューしましたが、その前後で変わった面はありますか?

蟹沢 先日、久しぶりにみんなでミーティングをしたとき、「ここをこうしたい」ということを話し合って、みんなの意識が前より高まったのを感じました。「頑張ろう」の先を見て、意見を言い合えるようになりました。

――どんな意見が出たんですか?

蟹沢 デビューミニアルバム、1st、2ndシングルと楽曲がすごく増えて、だからこそ1曲1曲を大切にしようと。今までのノイミーのフレッシュな部分を、もっとプロフェッショナルなものにして、今だから出せるエモさをどう見せるか。そういった話をしました。

菅波 自分たちの楽曲だけでライブができるようになったのは、嬉しかったです。

谷崎 メジャーデビューのときに駅の看板(広告)になったり、1stシングルのときにアドトラックが走ったり、ノイミーを街中で見掛けるのが不思議な感じだったんですね。櫻井ももちゃんと一緒に、渋谷のスクランブル交差点の街頭ビジョンにノイミーが流れるのを見に行って、2人で「来たーっ!!」となっていたんですけど、待ち合わせをしている方とかも、見上げてくださっていて。嬉しかったのと同時に、アイドルとしての自覚がさらに強くなって、頑張らないといけないと実感しました。

冨田 今まで気にしてなかったことを、すごく気に掛けるようになったかもしれません。メディアに出させていただく機会が増えた分、姿勢を正すだけでも違うとか考えるようになって。私はメイクも詳しくなくて、塗っておけばいいくらいの感じでしたけど(笑)、「これを使ったほうがいい」「ライブではこういうラメが映える」と意識するようになったのは、自分の中の変化でした。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

「やりたいことはこれ」と胸を張って見せたいです

――『チョコレートメランコリー』から始まるメジャー2年目は、どう進んでいきますか?

蟹沢 ミーティングのときも話したんですけど、本気で走り抜ける1年にしたいなと。これまでのことへの感謝は絶対忘れず根っこに持ちながら、勝負をかけたいと全員思っています。1年目を超特急で走りましたけど、さらに加速度を想像がつかないくらいまで上げられるように。メンバーそれぞれ個性や魅力を磨いて、束になったときにすごく強いグループになっていきたいです。

――萌子さんだと、声優を務めるアイドルアニメ『シャインポスト』が夏から放送開始ですね。

蟹沢 そうなんです。初めての声優のお仕事で、毎回のレッスンで反省点も多くありつつ、ワクワクする気持ちもいっぱいで。アニメを通じても、ノイミーを知っていただけたらいいなと思います。

――3周年記念のコンサートも東京国際フォーラムホールAで開かれます。

蟹沢 初めてノイミーのパフォーマンスを見る方もいらっしゃると思うので、私たちがやってきたこと、そして、これから見せていきたいものはこれですと、胸を張って言えるようなコンサートにしたいです。

冨田 去年の紅白歌合戦が行われた会場で、今年初のコンサートができて、紅白出場に向けても良いスタートが切れそうです。

蟹沢 その先に日本武道館やさらに大きいステージへ、どんどん繋げていきたいと思います。

(C)YOANI/KING RECORDS
(C)YOANI/KING RECORDS

≠ME(ノットイコールミー)

指原莉乃がプロデュースする=LOVEの姉妹グループとして2019年2月に結成。同年8月に初のオリジナル曲『≠ME』を配信リリース。2021年4月にミニアルバム『超特急 ≠ME行き』でデビュー。7月に1stシングル『君はこの夏、恋をする』を発売。『≠ME 3rd ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』を2月23日に東京国際フォーラムホールAで開催。

公式HP

『チョコレートメランコリー』

2月16日発売

Type A(C)YOANI/KING RECORDS
Type A(C)YOANI/KING RECORDS

Type A(CD+DVD) 1,800円(税込)

Type B(CD+DVD) 1,650円(税込)

ノイミー盤(CD) 1,100円(税込)

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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