ノルウェー国語大辞典が「処女膜」を「膣のひだ」に変更、ブリタニカ百科事典も後に続く
用語「処女膜」は処女に対する誤解をうみ、女性を抑圧する。ノルウェー国語辞典が用語解説を変更し、ブリタニカ百科事典もその後に続いた。
ノルウェーの電子版国語辞典で、多くの国民に使用されている『Store norske leksikon』。
10月、「処女膜」を意味する「jomfruhinnen」を、「skjedekrans」=「膣(ちつ)の"ひだ"」へと変更していたことが11月20日に報道されていた(NRK)。
この辞典は著名な教授らによって執筆されている。辞典の編集長は「処女膜」項目の担当だったホルク教授に、「処女膜」を「膣のひだ」へと変更するように依頼。「処女膜」は補足用語となった。
「処女膜」という言葉がうむ誤解
昨年、ノルウェーでは、「処女検査」がいまだにおこなわれていたことが大きな話題を集めた。この時にも、「処女は、初体験で処女膜が破れて出血する」と誤解している人がいることが問題視されていた。
その後、保険・ケアサービス省は、処女検査は違法という見解を明確にする。
辞典の編集長のボルスタ氏は、「処女膜」は「処女かを検査できるのか」と誤解される不明瞭な用語だったと説明。
しかし、編集長からの指示で用語を修正したホルク教授にとっては、納得のいかない変更だったようだ。「すでに大学などで浸透した言葉なので、使い続けるべきだった」とNRKに説明。
「膣のひだ」が本用語で、補足用語となった「処女膜」。「かつては処女膜とも呼ばれていた。初めての性行為で処女は出血すると人々は信じていたが、それは正しくはない」という説明も加わった。
ノルウェーの注目は、ブリタニカ百科事典に
その後、ノルウェーの各メディアでは、話題は他国の国語辞典へとうつる。処女膜がいまだに「最初の性行為で破れる」と説明されているケースが目立った。
オールヴォルド医師は「真面目な著作物に処女膜と掲載されていれば、誰かが信じてしまっても不思議ではない。この神話は、もう終わらせるべきだ」と議論していた。同氏は、英語のブリタニカ百科事典に、用語解説を更新するべきだと抗議文を出していた。
ノルウェー国営放送局NRKも、ブリタニカ百科事典に直接連絡をとっていた。
結果、ブリタニカ百科事典は、NRK側が提出してきた記事などを読み、「vulva」(外陰部)項目の解説を新しくしたと報告。ブリタニカ百科事典のこの用語更新は1998年以降だとNRKは報道している。
ブリタニカ百科事典は「処女においては~」と説明していた文章から「処女」を削除し、「あらゆる活動で破れることがある」と修正した。
ノルウェーの人々は、自分たちの国が人口520万人の「小さな国」という自覚がある。そのため、ノルウェーでの出来事が他国に影響を与えると素直に喜ぶ傾向がある。
ブリタニカ百科事典の変更をオールヴォルド医師は喝采。NRKも「NRKの報道でブリタニカ百科事典が用語解説を更新!」と30日に報道した。
「処女膜の神話は女性の性を抑圧する。神話が事実と誤解されるような、昔ながらの辞典表記は期限切れとなるべきだ」と、オールヴォルド医師はNRKに語った。
Text: Asaki Abumi