このままでは「女性管理職」が増えない! 転勤を昇格ポイントにしている大企業が窮地
転勤に関する実態
厚生労働省の「雇用管理調査」によると、従業員5,000人以上の企業では 実に95.8%が「転居を伴う配置転換=転勤」があるとしています。(1,000人~4,999人規模では82.9%)職種にもよりますが、つまり、ほとんどの大企業では「転勤」を体験する人が必ず存在する、ということです。
年齢別でみますと、「転勤が多い年齢層」は30代が67.4%で一番多く、続いて40代の48.3%(いずれも国内)となっています。(20代は39.1%)
「結婚したら転勤」「子どもが生まれたら転勤」「家を建てたら転勤」……などといった都市伝説があるように、だいたい20代後半から、30代。そして40代前半まで、数年置きに転勤があるのが、全国に拠点があるような大企業では転勤のパターンではないでしょうか。
注目すべきは男女別です。「転勤経験がない」という男性が7.8%に対し、女性は51.7%。――このように大きな差が出ています。
転勤が昇格要件の会社
昇格要件に「転勤」が入っている会社も多くあります。転勤したほうが出世するスピードがはやくなる、もしくは転勤しなければ出世の道がなくなる、という会社。転勤を「昇格ポイント」にし、人事考課の面で有利にする制度はジョブローテーションの観点からしても理にかなっていると言えます。
しかし、いっぽうでデリケートな問題が顕在化しています。先述したとおり、実態として女性が転勤する割合は、男性に比べて極端に低い。転勤者が男性に偏りすぎているのです。これは、2つの側面から理由を考えることができます。
■そもそも将来の女性管理職候補が少なかったため
■女性に転勤辞令を出せない諸々の理由があるため
前者の、そもそも将来の女性管理職候補が少なかった、というのであれば、増やせばいいだけの話です。政府が「女性活躍促進」を強く推し進めており、女性管理職の人数を数値目標に掲げている企業もたくさんありますから、そのような意識で採用し、キャリアプランを本人とともに会社が考えれば解決することです。
デリケートな問題は後者です。20代後半から30代にかけて、結婚し、出産する女性は多いことでしょう。この前後の時期(約10年ほどか)に転勤を言い渡すと、
「結婚したばかりで、これから2年以内には子どもを作りたい。今は転勤ムリ」
「育休から戻ってきたら転勤? そんなのムリに決まっている」
「二人目の子どもが、まだ小学校低学年。この時期に転勤は厳しい」
このような反応が出ることは容易に想像できます。したがって、相手の事情も考慮せず、システマチックに転勤辞令を出すわけにはいきません。
女性管理職を増やすには
前述したとおり、転勤が昇格要件になっている企業は多い。そうなると、転勤のたびに「昇格ポイント」が貯まる企業においては、「女性管理職」を増やすことが難しくなってきます。幼いこどもを抱えた女性がフルタイムで働くための支援は、テレワークの導入や、男性が育休をとりやすくするなど、それぞれの企業で工夫されるようになりました。
いっぽう、転勤はどうか。本人がよくても、いざ数年置きに転勤……となると、その要件を受け入れる女性は男性と比べて多くはないでしょう。もちろん女性にだけ「転勤を昇格要件からはずす」としてしまうと、不公平感が出ます。その結果、女性管理職を企業の思惑通りに増やせない、ということになります。
テレワークや育休の導入など、新たな仕組みや制度によって、女性にとって働きやすい環境は整備されつつあります。しかし女性管理職を増やす取り組みとしてはどうか。転勤ではない、他の「昇格ポイント」を企業は考えていかなければなりません。