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トランプ氏がスニーカーを発売 ド派手な限定版はすぐ完売 何足売れば650億円超の賠償金を支払えるのか

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
不屈のハイトップスニーカー。写真:gettrumpsneaker.com

 大統領に返り咲く可能性が高まっているトランプ氏が、2月17日、フィラデルフィアのコンベンションセンターで行われたスニーカーの大展示会「スニーカー・コン」で、トランプ・ブランドのスニーカーが発売されると発表し、会場でお披露目した。

 トランプ氏が会場で掲げたスニーカーの名前は「The Never Surrender High-Tops(決して降伏するなハイトップ)」。サイドに大きな「T」の文字が縫い付けられた、トランプ氏らしいド派手なゴールドのスニーカーで、背面には星条旗が施されており、価格は399ドル(約6万円)。

 販売用のウェブサイトには、このスニーカーは1000足の超限定版で、各スニーカーにはナンバーが付いており、さらに、少なくとも10足にはトランプ氏のサイン付きとある。しかし、SOLD OUTとなっているので、1日もたたずに完売したようだ。

若者やマイノリティー層を取り込めるのか

 このスニーカーの説明書きでは「不屈のスニーカーは、靴という形でのあなたの結集の叫びだ。レースを締め、征服する準備をして歩き出してください」という呼びかけも行っている。ウェブサイトには「この新しい事業は政治的なものではなく、いかなる政治運動とも何の関係もない」と記載されてはいるものの、スニーカー名といい、説明書きといい、大統領選を意識したにおいがムンムン漂う。

 また、このスニーカー以外にも、第45代大統領だったトランプ氏にちなんだとみられる「T」と「45」の文字がサイドに入れられた2種類のスニーカー(T-Red WaveとPOTUS 45、各199ドル(約3万円))と大統領選に勝利して第47代大統領就任を狙っているからだろう「Victory47」という名の香水とコロン(各99ドル(約1万5,000円)の予約注文も受け付けている。

T-Red WaveとPOTUS45は予約注文を受け付けている。写真:gettrumpsneaker.com
T-Red WaveとPOTUS45は予約注文を受け付けている。写真:gettrumpsneaker.com

大統領選に勝利して第47代米国大統領になるのを目指しているからだろう、コロンと香水は「Victory47」というネーミング。写真:gettrumpsneaker.com
大統領選に勝利して第47代米国大統領になるのを目指しているからだろう、コロンと香水は「Victory47」というネーミング。写真:gettrumpsneaker.com

 会場で行ったスピーチで、トランプ氏はスニーカーの発売について「これは私が12〜13年前から話していたことだ。大成功するだろう」とスニーカーは大ヒットすると豪語。

 さらには、「最も重要なことは投票することだ。この国はあまりうまくいっていない。我々は迅速に状況を好転させるつもりだ。 急いで方向転換していく」と来場者に投票するよう訴えた。

 その来場者たちには、若者やマイノリティーの人々が数多くいたからだろう、「いつもとは少し違う聴衆だ。でも、私はこの聴衆が大好きだ」と媚びることも忘れなかった。スニーカー発売の背景には、民主党支持者が多い若者やマイノリティーの有権者を取り込もうとする狙いがあると思われる。

 会場の反応はというと、ブーイングの声や“USA、USA”と連呼する声が入り乱れ、“分断のアメリカ”が象徴されていたようだ。

賠償命令額をカバーするには何足売ればいい?

 トランプ氏はこれまでも、様々な商品を販売してきた。2016年の大統領選時には「トランプ・ステーキ」を発売したがあまり売れなかった。もっとも、2022年12月半ばに発売した、自身をスーパーヒーローや宇宙飛行士などに模したデジタル・トレーディング・カード(トレカ)は1日もたたずに完売、450万ドルの純売上高をあげたことから、2023年4月には第2弾のトレカも発売し、これも1日で完売している。

 ところで、トランプ・ブランドのスニーカーの発表は、2月16日にニューヨークの裁判所が、トランプ氏とその一族の企業が不正な利益を得たとして、トランプ氏側に対し3億5,500万ドル(約533億円)の賠償命令を下した翌日というタイミングで行われた。1月には、トランプ氏を名誉毀損で訴えた作家ジーン・キャロル氏に対し8,330万ドルを支払うよう賠償命令が下されている。合わせて4億3,830万ドル(約657億円)の賠償命令だ。そのため、「この賠償額をカバーするには、100万足強販売するだけで十分だ」と皮肉っているメディアもある。

 大統領選の投票まであと約9ヶ月。トランプ氏は、スニーカーで若者やマイノリティーの支持者を増やすことができるのか。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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