猛暑に不慣れな北国ノルウェーで農家が悲鳴
北欧ノルウェーでは、異例の猛暑を記録している。
5月は過去100年で、最も猛暑の年としての記録を更新した。
25~30度前後となる日が続く毎日。本来は、首都オスロがある南部では、10度を超えると、「夏がくる」と地元の人が言い始め、20度の日が来ると、「もう夏は終わる」と、短い期間の夏を楽しむ。
筆者はノルウェーに住んで10年となるが、時には「今年は、夏はあったっけ?」という年もあったほどだ。
2018年は、「涼しい短い夏」とは言い難い。天気予報をみると、25度を超える日がまだ続くとみられ、地元の人々は、複雑な心境のようだ。
ノルウェーでは、本来は太陽を浴びている時間が短いため、住民は欠乏するビタミンD摂取のために、フィッシュオイルを飲まなければいけないほどだ。
日本と異なり、長い冬に備えて、あたたかさがこもる設計になっている建物ばかり。屋内には、クーラーや扇風機などがついていないことが多い。
ノルウェーは、今は夏休み休暇。本来であれば、人々は太陽を求めて、スペインなどの南部へと旅行をする。今年は、ノルウェーにいたほうが、夏の旅行気分を体験できる状態だ。
「いつまで続くかわからない夏を楽しむなら、いまだ」。
オスロ中心地に入り込んでいる穏やかなオスロフィヨルドや山々の湖などでは、人々が日光浴や海水浴を楽しんでいる。
「仕事場が暑くなり始めたら、早めに帰宅してもよいか」、「男性が、職場に半ズボンを履いてくるのは、ありか」という議論が現地メディアでも盛り上がった。
農家はもはや喜んではいられない状態
猛暑のために、草が枯れ、家畜のエサとなる飼料が足りていない。輸入という手段には、国内に病気などが持ち込まれるリスクが伴う。
農家らは、空腹となる家畜を、予定よりも早く食肉として解体し始めている。
13日のアフテンポステン紙の報道によると、3000頭の家畜に飼料がいきわたっていない。
関連業者らは、夏休みを返上して、飼料業者を手あたり次第に探す、家畜を食肉にするなどの作業に追われている。
予定よりも早く、泣く泣く家畜を食肉にする農家ら。倉庫に保存できる肉の量にも、限界がある。
農家団体Norturaらは、全国各地に店舗を置くスーパーマーケットに、国産肉を優先して店頭販売するように呼び掛けている(15日、ノルウェー国営放送局NRK)。
水不足、家庭の食卓や財布にも影響
国内では、すでに今年は300か所以上で山火事が発生。火を消すための水不足、飲料水の供給が追い付かないリスクなども懸念されている。各自治体では、市民の庭での水やりを禁止するなどの処置をとっている。
他にも、光熱費が高くなる、イチゴ、穀物、キノコなどの収穫にも影響を与え、野生動物であるハリネズミの減少が懸念されている。
日光浴や海水浴を楽しみたい反面、「気候変動について、もっと真剣に議論すべきだ」という声も現地新聞には掲載されている。
Photo&Text: Asaki Abumi