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救助、待っていてほしい 熊本県球磨川流域の救助活動はどうすすむか?

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
ヘリコプターでの吊り上げ救助は家の2階バルコニーなどで待ってて(訓練、筆者撮影)

 夜明けからの洪水災害。未だに自宅の2階や屋根の上で救助を待っている方々が多いかと思います。まだ救助体制が整っていませんが、天候が回復傾向にあるので、徐々に救助が始まります。救助が来るまでしっかり命をつないでください。特に体を冷やさないようにしてください。そして冠水の中、無理して水の中を避難しないでください。ヘリコプターの吊り上げ救助、水上オートバイやゴムボートによる救助が始まります。

ヘリコプターによる救助

 屋根の上で避難している方、風の影響で体感温度が下がって寒いことと思います。その場合にはできるだけ身を寄せ合って、できるだけ服を重ね、防寒対策をしてください。NHKの映像では、自衛隊ヘリコプターによる吊り上げ救助が始まったようです。屋根でなくても、バルコニーから手を振りつつ、少し寒いようなら、部屋の中に残って、1人は空に向かって手を振ってください。曇り空なら、服装は白色や黄色の長そでが目立ちます。帽子も白色や黄色など明るい色をかぶると、髪の毛よりも目立ちます。発見次第、順次吊り上げ救助します。

 自衛隊、県防災航空隊、警察、海上保安庁などのヘリコプターが救助に向かっています。隣県の警察や消防からも災害派遣が決定されました。

 ただ、ヘリコプターの航続距離時間は限られています。筆者も何度もヘリコプターの救助訓練に参加していますが、s-76と呼ばれる比較的大きなヘリコプターでも一回のフライトで1時間強です。そのため、一度に吊り上げられる人数も数名に限られます。

 救助隊員が降下してきたら、すぐに優先順位に従って1人ずつ吊り上げてもらってください。その際、救助隊員と一緒に吊り上げていきます。航空隊によっては、カバー写真のように隊員が2人降りてきて、隊員1人が現場に残り、吊り上げ支援する場合もあります。隊員の指示に従って吊り上げ順序は、瞬時に判断してください。

救助用ゴムボートによる救助

 主に消防の陸上隊と警察が回ります。手漕ぎボートと船外機ボートがあります。手漕ぎは比較的家が密集しているところを回ります。隊員はボートをひきながら水中を歩いてきます。住民に救命胴衣を着用してもらい、それからボートにのせます。救命胴衣は救助隊が準備します。洪水の水はだいぶ冷たくて、長時間水の中を歩くのにはつらい時期です。隊員も交代しながら回りますので、半日とか1日とか、避難している人は家の中で待機しなければなりません。ここは我慢してください。

 エンジンのついている船外機はさらに早く回れますが、ボートへの収容人数は隊員も含めますので多くありません。そのため、優先順位をつけて避難することになります。体力の弱い方から順番です。船外機が使われるのは、ヘリコプター救助でなければアプローチできないような、孤立家屋が優先となります。

水上オートバイ

 かなり機動性が高く市街地の入り組んだところでも活動できます。消防本部でも配備するところが増えています。しかしながら、オートバイに1回に収容できる人数が数名に限られます。そのため、時間がかかります。水害時には全国から水上オートバイ愛好家が集まり、ボランティアで救助活動に加わります。こうなれば救助活動がいっきに加速します。こういう方々が集まってくるにはそれなりの時間がかかります。これもやはりじっくりと待つこと以外に方策はないかと思います。

まとめ

 とにかく、体を冷やさないように。そして暑くなってきたら、できるだけ薄着で体温を放出して。この体温管理が難しい季節です。ぜひ頑張って救助を待っていてください。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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