隕石の破片もクレーターも未発見…謎だらけのツングースカ大爆発の真相が解明
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回はこのような「ツングースカ大爆発の真相」というテーマについて詳細に解説していきます。
YouTubeでも動画で同様の解説をしているので、以下の再生フォームも併せてご参照ください。
1908年、北シベリアの上空で突如巨大な火の玉が現れました。
爆発の被害は甚大で、爆心地から半径30km~50kmの森林を焼き払い、東京都とほぼ同じ面積の木々をなぎ倒すほどのものでした。
これほどまでの大爆発だったのにも関わらず、その原因は未だ断定はされていません。
100年以上前にロシアで起きた大爆発の原因は何だったのか?その謎に迫っていきましょう。
●ツングースカ大爆発の謎
ツングースカ大爆発が地球に接近した小惑星によるものであれば、その痕跡としてクレーターや隕石の破片などが残るはずです。
しかし、この大爆発は、隕石の衝突であれば残るはずのクレーターや隕石の破片などの証拠を、何1つとして残していないのです。
そのため、「ブラックホールが通過した」などのさまざまな説が乱立するようになりました。
記憶に新しい隕石の衝突として、2013年にロシアで起きたチェリャビンスク隕石が挙げられます。
直径約17m重さ1万トンの隕石は大気圏に突入し、そのほとんどが上空で蒸発してしまいました。
隕石の威力はTNT換算で約500キロトンにのぼり、これは広島型原爆の約30倍のエネルギー量になります。
チェリャビンスク近郊では隕石によって発生した衝撃波により1,000人以上の負傷者を出し、隕石の恐ろしさを知らしめた災害でもあります。
隕石は大気圏突入後、チェリャビンスクの上空約20kmで分解し小さな破片となって地球に落下し、氷を張った湖に直径約8mと6mの穴を空けました。
この災害の場合は、隕石の破片を確認できたため、隕石によるものであることが断定できました。
一方、ツングースカ大爆発はチェリャビンスク隕石の約10倍のエネルギーを持つほどの大爆発だったのにもかかわらず、クレーターも隕石の破片も見つかっていません。
ただ、チェリャビンスク隕石と類似点もあるのです。
それは、衝撃波が襲う前に強い光が観察されていることです。
チェリャビンスク隕石の場合、至近距離では太陽の30倍もの光を放つ火の玉が目撃されています。
また、ツングースカ大爆発のときも上空に明るい火の玉が目撃されています。
チェリャビンスク隕石とツングースカ大爆発を比較すると、明るい火の玉や大きなクレーターが残されていないことなど、よく似ています。
そのため、ツングースカ大爆発は隕石によるものという仮説が最も有力になっています。
では、大爆発の元凶である隕石そのものはどこに行ってしまったのでしょうか?
●地球スレスレをすり抜ける小惑星
シベリア連邦大学のカーレンニコフ氏が率いる研究チームはツングースカ大爆発の原因究明に乗り出しました。
研究チームは、鉄、石、氷でできた直径200、100、50mの小惑星が大気圏を通過するとどうなるのかをそれぞれシミュレーションし、ツングースカ大爆発と同じ現象を引き起こす条件を割り出しました。
彼らの研究によって、ツングースカ大爆発の原因は鉄でできた小惑星が地球の大気圏をすり抜けて行ったことであるという新たな説が提唱されます。
シミュレーションによると、鉄を主成分とする小惑星が最低高度にして10~15km上空をすり抜けて、再び宇宙へと抜けていったというのです。
エベレストの高さが約8.8kmであることやジェット機が飛ぶ高さが高度10kmであることを考えると、いかに地球スレスレを飛んでいったかが分かります。
しかしここで、「小惑星が再び宇宙へ飛び去っていったのでは無く、チェリャビンスクと同じようにほぼ全て蒸発してしまったのではないか?」という疑問が浮かび上がります。
確かに、氷でできた惑星であれば、断熱圧縮で発生した熱によって全て蒸発してしまっても不思議ではありません。
シミュレーションによると、氷でできた小惑星は大気圏での断熱圧縮による熱に耐えられず、再度宇宙空間に抜けていくことはできないようです。
これは、鉄と石と氷でできた小惑星の速度変化のシミュレーション結果です。
初速度20km/sで大気圏に突入した場合、鉄でできた小惑星は18km/に速度を落としたものの、10%程度しか減速していません。
一方、氷でできた小惑星はグラフを見ても分かる通り急激に速度を落としています。
これでは再び宇宙空間に脱出できそうにはありませんね。
このように、氷の小惑星が消滅するまでに大気圏を通過した際の衝撃波によって大爆発が起こったとされる説もあるものの、本研究チームはその可能性は低いと考えています。
その理由は、氷の小惑星が完全に蒸発するまでに飛行する軌道の長さは、観測データに基づいて推定された軌道の長さよりも短くなるからです。
この小惑星軌道の奇跡的なポイントは、大気圏への突入角度がとても小さかったことです。
突入角度が11度よりも大きかったとしたら、地球に衝突していた可能性は一気に跳ね上がります。
●隕石落下のリスク
カーレンニコフ氏の研究チームが出したシミュレーション結果が真実だとしたら、ツングースカ大爆発は不幸中の幸いだと言えます。
鉄の小惑星が地球に近づくタイミングや方向が少しでもずれていたら、地球に衝突して大きなクレーターを作っていたかもしれません。
実は、1913年から2013年のたった100年間で大小合わせて605回も隕石が確認されています。
これは、偶然確認された数であるため、実際にはさらにたくさんの隕石が地球に降り注いでいるでしょう。
海と陸の面積比や森林などの観測できていない部分も考慮すると、年間約40個程度の隕石が地球に降り注いでいると推測されています。
実際、ツングースカ大爆発やチェリャビンスク隕石のように自然災害となった隕石は、ここ100年で11年に1回の頻度で発生しています。
隕石被害の頻度を考えると、人類は天体衝突を自然災害として認識し、備えていく必要があるのかも知れません。
例えば、小惑星が接近する数日前から人々に知らせることが可能になれば、大きな防災効果を得られるでしょう。
緊急地震速報のような防災システムが、隕石に対しても機能している未来が来ると良いですね!