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10代20代は「自分自身に満足」なんてしなくていい。あきらめずに生きているだけでいい

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:「社会貢献したい」でも「自信持てず」(中日新聞)

お腹と腰回りの肉が落ちにくくなった。食事の量は昔からあまり変わっていないし、運動不足は慢性的なので、加齢によって基礎代謝が落ちたことを認めざるを得ない。30代半ばを過ぎると、「老化」という言葉が切実なものになってくるのだ。

でも、年齢をここまで重ねて来て「いいこと」が一つだけある。自分の形のようなものが見えてくることだ。どんな生活環境でどのような仕事をすれば、自分は機嫌よく過ごせるのかが少しずつつかめてくる。逆に、自他を守るために忌避しなければいけない人やモノなども体験的にわかる。自分の限界を知ることで、力を発揮しやすくなるのだ。

10代20代のうちは社会体験が圧倒的に不足しているので、「自分は何ができて何ができないか。どのように社会に関わっていけばいいのか」を知ることはできない。頭に思い描く夢や理想像は、たいていの場合は他人の成功をなぞろうとしているに過ぎず、自分の体からにじみ出た欲望ではない。

今朝の中日新聞によると、内閣府が世界七か国(日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)の13~29歳の男女を対象に実施した意識調査で、「自分自身に満足している」と答えたのは日本は45.8%と最下位だった(1位のアメリカは86%)。「自分には長所がある」と答えたのも日本は68.9%で最下位だったらしい。

中日新聞は「日本の若者は自己評価が低い」と嘆いているが、僕は健全な数値だと思う。自信満々の明るいアメリカンも素敵だけれど、自分が何者なのかわからず、モヤモヤしながら日常に向き合っている自国の若者のほうに共感を覚える。

10代20代の若者に必要なのは自信や自己満足ではない。とにかくあきらめずに生きていくことだけだ。人生を台無しにするような大失敗(アイドルの握手会で流血事件を起こす、など)をしなければ、多少の失敗はむしろ有益だと考えていい。成功よりも失敗のほうが「自分の形」をつかませてくれるからだ。

社会に出て10年ぐらいが経ったとき、長所とその裏返しの短所を併せ持った自分に気づくだろう。できることとできないこともわかってくる。ささやかな自信と満足を初めて感じて、生活と仕事の両面でようやくスタートラインに立った気持ちになる。10代20代は長い準備期間だったのだ。

目の前にあるのは、かつて思い描いたピカピカの車道ではなく、誰も通らないような小汚い砂利道である。でも、間違いなくお前の道だよと体が言っている。これは夢の「あきらめ」ではなく、自分の人生を「受け入れ」ることだと僕は信じている。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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