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混迷を極めるアスレティックの現状。満身創痍の「レオネス」は牙を剥けるのか。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶイニャキとデ・マルコス(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

手負いのライオンほど、怖いものはないかもしれない。

現地時間11日に行われたリーガエスパニョーラ第23節、アスレティック・ビルバオは本拠地サン・マメスでバルセロナに引き分けた。首位バルセロナと2位レアル・マドリーとの勝ち点差が6ポイントまで縮まり、リーガに再び活気が注ぎ込まれている。

■低迷

近年欧州カップ戦の常連となっていたアスレティックだが、この2シーズンは苦しんでいる。今季に関しては一時降格圏内に足を踏み入れ、監督と会長の入れ替えが続けざまに行われた。

昨年11月、ホス・ウルティア前会長は辞職を決断し、前倒しで会長選を行うことを決めた。

2011年に会長職に就いたウルティア氏はマルセロ・ビエルサ監督(現リーズ)をアスレティックに迎え入れ、ヨーロッパリーグで決勝に進出するなど、アスレティックファンを虜にした。

ヨーロッパリーグ決勝進出、コパ・デル・レイ準優勝2回、スペイン・スーパーカップ制覇。スポーツ的側面において、ウルティア政権のアスレティックは十分な成功を収めたと言えるだろう。

それだけではない。ハビ・マルティネス(バイエルン・ミュンヘン)、アンデル・エレーラ(マンチェスター・ユナイテッド)、アイメリク・ラポルテ(マンチェスター・シティ)、ケパ・アリサバラガ(チェルシー)の売却で、アスレティックはこの数年で2億2200万ユーロ(約272億円)を得た。そのすべてが、契約解除金が支払われた末に成立した移籍だった。

経営の観点から見ても、間違いなくウルティア氏は優秀だったのだ。

■エフェクト・ビエルサへの期待

2017-18シーズン、ホセ・アンヘル・シガンダ元監督に率いられたアスレティックは、リーガエスパニョーラで6勝しか挙げられなかった。失望の一年を終え、エフェクト・ビエルサ(ビエルサ効果)を思い起こすように、ウルティア前会長は今季開幕前にビエルサの愛弟子であるエドゥアルド・ベリッソ前監督を招聘した。

だが、迷走は続いた。

37歳のアリツ・アドゥリスの決定力に陰りが見え始め、後継者と目されたイニャキ・ウィリアムスは2016年12月4日から本拠地サン・マメスで770日間ノーゴールを続けることになった。

3-5-2への布陣変更を断行したが、それでも結果は出なかった。マンマークをベースにした戦い方は守備に綻びが生じやすく、ベリッソ指揮下では、リーガ14試合で23失点を喫した。

リーガ第14節でレバンテに0-3と敗れ、ベリッソ前監督が解任された。後任には、ガイスカ・ガリターノ監督が就いた。その時点で、勝ち点11で18位に位置。2部降格が現実味を帯び始めていた。

■新たな会長

昨年12月28日に前倒しで会長選が行われた。アルベルト・ウリベ・エチェベリア氏との一騎打ちを制して、新たに会長職に就いたのはアイトール・エリセギ氏だった。

この会長選においては、1万9340票が投じられた。エリセギ氏に9264票が、アルベルト・ウリベ・エチェベリア氏に9179票が投じられ、僅差でエリセギ氏が当選した格好だ。ただ、投票率はソシオ(会員)全体で46,77%と関心度の低い結果となった。

エチェベリア氏はウルティア前会長の下で会計士を務めていた。そのエチェベリア氏が、エリセギ氏に敗れた。これは熱心なソシオが変化を強く求めていた証だろう。

降格の危機を味わった、2006-07シーズン。アスレティックは最終節でレバンテに2-0と勝利して、ぎりぎりで1部残留を決めた。

同じ轍を踏むまいと、全員が同じ方向に向けて動いた。エリセギ会長とガリターノ監督の就任で、アスレティックはリーガで4勝4分け1敗と立て直して13位につけている。

7年半続いたウルティア政権に別れを告げ、傷つけられたレオネス(アスレティックの愛称/スペイン語で『ライオン』の意)が牙を剥こうとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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