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なぜバルサは強さを取り戻したのか?ヤマル、ラフィーニャ、レヴァンドフスキの爆発と指揮官の狙い。

森田泰史スポーツライター
好調を維持するバルセロナ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

強いチームが、戻ってきた。

バルセロナの調子が上がってきた。リーガエスパニョーラでは、開幕から11勝1敗で首位をキープ。チャンピオンズリーグでは3勝1敗でグループ突破に近づいている。

■ハンジ・フリックの手腕

とりわけ、大きかったのはチャンピオンズリーグのバイエルン・ミュンヘン戦とクラシコのレアル・マドリー戦の勝利だ。

バルセロナは歴史的に「コレクティブ」を重視する。また、名監督がいる時、このクラブは強い。リヌス・ミケルス、エレニオ・エレーラ、ヨハン・クライフ、ジョゼップ・グアルディオラ…。歴代の名将がチームを高みに引き上げてきた。

一方で、マドリーは「個人」を大事にする。アルフレッド・ディ・ステファノ、ウーゴ・サンチェス、ジネディーヌ・ジダン、クリスティアーノ・ロナウド…。個の能力を際立たせることで、彼らはチャンピオンズリーグで15回の優勝を誇るクラブになった。

そういう意味で、クラシコの「4−0」は衝撃的だった。キリアン・エムバペ、ジュード・ベリンガム、ヴィニシウス・ジュニオールらを擁する攻撃陣が沈黙して、 ハイライン・ハイプレスでコレクティブに戦ったバルセロナが大勝したのだ。

無論、バルセロナにもラミン・ヤマル、ペドリ・ゴンサレス、ロベルト・レヴァンドフスキといったワールドクラスのプレーヤーが揃ってはいる。

だが、ここで触れなければいけないのはハンジ・フリック監督だ。今夏、バルセロナの指揮官ポストに就いたドイツ人監督は、わずか数ヶ月でチームを劇的に変えてしまった。

会話を交わすアンチェロッティ監督とハンジ・フリック 監督
会話を交わすアンチェロッティ監督とハンジ・フリック 監督写真:ロイター/アフロ

ハンジ・フリック監督は、バルセロナを率いるようになり、チームに厳格なルールを設けるようになった。規律を重視するように仕向け、如何なる選手であっても、それを遵守できない者には例外なく罰を下した。エクトル・フォルト、フレンキー・デ・ヨング、ジュール・クンデらが、これまで指揮官ないしコーチングスタッフから注意を受けている。

しかし、それに対して、誰も不満を漏らしてはいない。ハンジ・フリック監督が公平だからだ。

またハンジ・フリック監督は、バルセロナのトレーニングメソッドに変化を加えた。プレシーズンから、フィジカルトレーニングを強化。クラシコでマドリーに勝利した翌日でさえ、選手たちにトレーニングを課した。

ここでも、不満は出なかった。ハンジ・フリック監督が、しっかりトレーニングを行った選手を観察して、きちんと試合で使うためである。

■ハイラインの戦術

かくして、「走れる」バルサの選手たちが出来上がった。元々、テクニックの高い選手たちだ。そこに、走れる、ハードワークできる、という能力が加われば、まさに鬼に金棒だ。

走れる選手たちが揃ってきた。そして、その心強い事実はバルセロナの戦術を昇華させる。

今季のバルセロナは、ハイライン・ハイプレスで戦っている。先のマドリー戦では、エムバペ、ヴィニシウスを筆頭に、マドリーのアタッカーを12回にわたりオフサイドに「引っ掛ける」ことに成功した。

バルセロナはクラシコにおいてマドリーから前半だけで8回のオフサイドを取っていた。45分間での8回のオフサイドは、この11年間のラ・リーガで最高の数字だった。

シュートを止めるイニャキ・ペーニャ
シュートを止めるイニャキ・ペーニャ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「監督は初日からラインを高くしてプレーするように言っていた。背後にスペースを空けて戦うのは、とてもリスクがある。でも、僕たちはバイエルンやマドリーの世界トップレベルの選手たちに対して、完璧にやれた」とはGKイニャキ・ペーニャの言葉だ。

「最終ラインを下げてはいけない。その考え方は僕たちのプレースタイルに合っていた。オフサイドの数を見れば、僕たちがどれだけ良い仕事をしたかが分かると思う」

「この時を楽しまなければならない。だけど、まだシーズンは残されている。ビッグチーム相手にどれだけやれるかが、目標に関わってくる。僕たちのメンタリティは変わって、チームは改善された。多くのゴールを奪えるようになったけど、フリック監督はクリーンシートにもすごく拘っている」

ニャブリを厳しくマークするフェルミン
ニャブリを厳しくマークするフェルミン写真:なかしまだいすけ/アフロ

ヤマル、ラフィーニャ、レヴァンドフスキのトリデンテは、ここまで公式戦で37得点をマークしている。これはバイエルン、マドリー、マンチェスター・シティを上回り、 欧州でトップの数字だ。

他方、イニャキ・ペーニャは今季、9試合にフル出場し、クリーンシートを4回、達成している。GKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲンの負傷を受け、チャンスが巡ってきた。GKヴォイチェフ・シュチェスニーの加入もあったが、レギュラーポジションを確保している。

走れるバルサが、フリック監督の下、躍動している。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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