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パナソニックの「留職」は、働き方改革の起爆剤となるか? 単なるリストラ促進剤か?

横山信弘経営コラムニスト
創業100周年を迎えたパナソニックの働き方改革とは?(写真:ロイター/アフロ)

「留職」と「複業」

創業100周年を迎えたパナソニックが、働き方改革に向けて真剣に取り組んでいます。その目玉として取り沙汰されているのが「留職」と「複業」の2つ。

「留職」は他社で一定期間働いて、スキルアップや今後のキャリア形成を考えるきっかけを与えること。「複業」とは、本業とは異なるもう一つの「本業」を持つことを指します。パナソニックの社員でありながらも、他にも本格的な職業に就くことであり、ちょっとした小遣い稼ぎを目的とした「副業」とは異なるようです。

今回注目したのは「留職」という制度についてです。

そもそも「留職」というのは「留学」をもじった造語であり、グローバル感覚を身につけてもらいたい社員を、海外に事業展開している企業や団体へ赴任させることを指していました。「留職」を積極的に取り扱うNPO団体もあります。

しかし、今回のパナソニックが打ち出した新制度は、海外でなくてもいいし、グローバル感覚を養う必要もない「留職」のようです。海外も国内も関係がないのなら、単純に「他の企業で働いて、経験を積みたいなら、希望を叶えよう」というだけの話。

パナソニックの「留職」は、もはや「留学」をもじった造語ではなくなっています。

単なるリストラ促進か?

よっぽど特殊な職種でない限り、パナソニックほどの巨大企業の外でなければ学べない技能など、存在しません。あったとしても、必要なら組織からの指示で、その企業に派遣されます。社員に希望を募って「留職」などという、回りくどいことはしません。

「複業」はわからなくもないですが、海外にも行かない「留職」という新制度に、どんな意味が込められているのか、わかりづらいと言えるでしょう。そもそも「留職したい」と申し出たパナソニックの社員は、どのように上司を説得するのでしょうか。

いくら大企業とはいえ、空前の人材不足のご時世。限られた時間のなかで、最大限の成果を求められるこの時代に、

「この企業に留職したいんですが」

「いいじゃないか。若いうちに、ドンドン経験しなさい」

だなんて声をかける上司など、ほとんどいないでしょう。この制度があることで社員の意識が高まったり、働きがいを覚えられるようになるとは思えません。それどころか、一歩間違えれば「リストラ促進剤か?」と誤解される恐れもあります。

「君、当社に入って何年だ? もう8年か。そろそろ他社に留職でもしてみないか。他の会社の空気を吸ってみるのもいいぞ」

などといった使われ方も、想定してしまうのです。

今回のパナソニックスタイルの「留職」は、会社都合ではなく本人希望で実現できる制度。ありそうでなかった発想であり、とても興味深い。果たしてこの制度によってパナソニックの組織風土がより改善されるのか、新しい「働き方」を考えるきっかけになるのか、注目していきたいと思います。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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