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糸谷哲郎八段(32)銀河戦準決勝で苦戦をしのいで三浦弘行九段(46)に勝利 決勝の相手は藤井聡太二冠

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成)

 12月10日。囲碁・将棋チャンネルにおいて銀河戦準決勝▲三浦弘行九段(46歳)-△糸谷哲郎八段(32歳)戦が放映されました。棋譜は公式ページで公開されています。

 三浦九段、糸谷八段はともにA級在籍中の実力者です。

 三浦九段は1回戦で出口若武四段、2回戦で船江恒平六段に勝利。関西所属の棋士を連破してのベスト4進出となりました。準決勝で対戦する糸谷八段もまた関西所属です。

 糸谷八段は1回戦で橋本崇載八段、2回戦で村山慈明七段を破って勝ち上がってきました。

 三浦九段は2008年、糸谷八段は2011年に準優勝の経験があります。両者にとってはそれ以来の決勝進出を目指すことになります。

 振り駒の結果、先手は三浦九段。後手の糸谷八段は得意の一手損角換わりから、ダイレクト向かい飛車の作戦を取りました。

 三浦九段は銀冠、糸谷八段は美濃囲いに組みます。そして41手目、三浦九段が4筋の歩を突いて仕掛け、戦いが始まりました。

 銀河戦の持ち時間は各15分。使い切ると1分の考慮時間が10回あり、それも使い切ると1手30秒未満で指すことになります。

 三浦九段は先に15分を使い切ります。対して名うての早見え棋士として知られる糸谷八段は、その半分ほどしか減っていません。ただしそこから時間を使って、中盤の難しいところを進めていきます。

 互いの駒が次第にさばけ、駒台に銀桂歩が乗って、そろそろ中盤戦も後半かというところ。手番を握った三浦九段は角のにらみで糸谷玉をねらいます。対して糸谷八段はその角を攻めていきました。

 69手目。三浦九段は角を逃げずに、攻めていきました。きわどいタイミングでの、金取りの歩打ち。この歩が通るかどうかは、大きな勝負所です。

 糸谷八段は妥協せず、強く角を取りました。この前後から、形勢は一手ごとに大きく揺れ動いたようです。

 三浦九段有望と思われた場面も何度もありました。しかし時間が次第に切迫してきます。進んでみると、糸谷八段の頑強な受けを前にして、攻めあぐねた格好となりました。

 最後は攻守ところを変え、糸谷八段が満を持して反撃。そのまま押し切って、96手で三浦九段投了となりました。

三浦「いやあ、寄せがわからなかった・・・」

 終局後、三浦九段はそう小さくつぶやきました。

 これで糸谷八段は決勝に進出。最終決戦で藤井聡太二冠(18歳)と優勝を争うことになりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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