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暇つぶしのアメリカ的恋愛リアリティー番組が及ぼす影響とは

長谷川朋子テレビ業界ジャーナリスト
世界でヒットする恋愛リアリティ番組の本場アメリカ版「バチェラー」主役のふたり。(写真:ロイター/アフロ)

日本オリジナルが増えている定額制の動画配信サービスの番組には地上波では成立しにくい類のものが多く、ホラー系や挑戦的な企画のバラエティなどが目立つ。世界でヒットしているフォーマット番組もそのひとつ。Amazonプライムビデオの「バチェラー・ジャパン」は世界225か国で放送されている「バチェラー」の日本版だ。シーズン2の制作が発表されたところで、Amazonプライムビデオの人気コンテンツのひとつだという。

世界約30か国でローカル版制作されているヒット作

「バチェラー・ジャパン」とは、アメリカ発の恋愛リアリティーショー「バチェラー」の日本版で、概ね内容はひとりのイイ男を巡って女たちが恋愛サバイバル戦を繰り広げるもの。暇つぶし番組の極みだが、世界約30か国でローカル版が制作されているだけあって、番組の作りは至ってシンプルかつベタな展開でわかりやすい。

登場人物は主役の「バチェラー」と呼ぶ独身男性と、一般募集された複数の女性たち。脚本がないリアリティショーのお決まりでもある設定の共同生活をしながら、各話の最後にはこの番組の肝である「ローズセレモニー」という名の絞り込みが行われる。女性たちがあれこれと攻めた成果がわかる場であり、バラが渡された女性は次のステージに進んでいき、最終的に勝ち抜いた女性がバチェラーのパートナーに選ばれるというストーリーで結ぶ。

こうしたアメリカと同様のフォーマットで作られた「バチェラー・ジャパン」もどうやら好評のようで、シーズン2の主役「2代目バチェラー」が発表され、今月10日まで女性の参加者を一般募集していたところだ。来春に配信予定されている。

「バチェラー・ジャパン」が人気コンテンツであることを、コンテンツ東京2018のセミナーでアマゾンジャパンのコンテンツ事業本部長/アジアパシフィックリージョナルヘッド James Farrell氏がこのように話していた。

「2015年9月から日本でプライム・ビデオサービスを開始し、日本オリジナルコンテンツは大きな成功を収めています。オリジナル18本の内、7本が第2シーズンに突入しました。人気トップ5は『松本人志ドキュメンタル』、『バチェラー・ジャパン』、『仮面ライダー』、『はぴまり』、『クレヨンしんちゃん外伝』の5本。それぞれ視聴者層が全く異なることから、Amazonプライムビデオのニーズは多様化していることがわかります。『バチェラー・ジャパン』は私も好きで、広く好かれる内容です。今後もより広く、より多くの方々に向けていろいろな番組を追加していきます。」

賞金獲得を好む海外の番組、トークメインの日本の番組

人気があることはわかったところで、注目すべきは海外でヒットしている番組が日本でウケていること。というのも、これまで日本が海外のバラエティ番組のフォーマットを買い、ローカライズするケースは極まれだからだ。

世界で成功しているバラエティのフォーマット番組が日本でも実績を作ったのは過去に『クイズ$ミリオネア』(フジテレビ)ぐらいしか見当たらず、ここ5年で『覆面リサーチ ボス潜入』(NHK総合)や『X FACTOR』(沖縄テレビ)の事例があるのみ。

海外のバラエティ番組の多くは、一般視聴者が参加し、目的は賞金獲得。もしくは「バチェラー・ジャパン」がそうであるように、勝ち抜き形式など明確なルールのもと、展開される。日本の場合はトークメインの番組が多く、勝敗を競うゲーム形式はあまり好まれない。だから、海外で流通している番組フォーマットは日本ではフィットしにくいため、なかなか導入されない事情がある。

そんな状況を変えつつあるのが、定額制動画配信サービスの存在だ。タイムテーブルがないため枠の制限はなく、多様な番組を揃えることに重きが置かれる。だから、今、世界のトレンドでもあり、様々な斬新な企画が世界で流通されている恋愛リアリティーショーも選択肢に入ったのだろう。今後、世界のリアリティーショーのニーズが高まれば、日本向けにローカライズした多様な番組を視聴できる楽しみが増えるかもしれない。

一方、恋愛リアリティーショーと言えば、日本では「テラスハウス」があり、Netflix版が世界配信されている。海外の視聴者からは「通常の恋愛リアリティーショーに比べて、日本のものはドラマチックな展開がない。あまりにも何も起こらないので、それがかえって新鮮に映る」という評価もある。北米のあるWebニュースの記者からは「一般ウケはしないが、日本フリークの間で話題になっているので注目している」と話を聞いたところだ。日本らしい要素も継承される環境の必要性も感じる。

まずは日本市場で日本的「テラスハウス」とアメリカ的「バチェラー・ジャパン」が共存していけば、暇つぶしの選択肢は広がり有り難い。日本の番組の作り方にいい影響を及ぼすことにも期待しつつ。。。

テレビ業界ジャーナリスト

1975年生まれ。放送ジャーナル社取締役。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。得意分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。仏カンヌの番組見本市MIP取材を約10年続け、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威あるATP賞テレビグランプリの総務大臣賞審査員や、業界セミナー講師、行政支援プロジェクトのファシリテーターも務める。著書に「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)、「放送コンテンツの海外展開―デジタル変革期におけるパラダイム」(共著、中央経済社)。

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