レノファ山口:強靱化の道に潜む「ラスト5分」の穴。千葉に苦戦、4試合ぶりの黒星
J2レノファ山口FCは4月15日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でジェフユナイテッド千葉と対戦。押し込む時間帯もあったが試合終盤のPKで失点し、0-1で敗れた。4試合ぶりの黒星。ゲームの進め方に課題を残した。
明治安田生命J2リーグ第8節◇山口0-1千葉【得点者】後半46分=ラリベイ(千葉)【入場者数】4287人【会場】維新百年記念公園陸上競技場
0-0で最終盤に差し掛かったとき、うまくゲームを進められればそれを「勝てる試合」や「勝ち点を拾える試合」にできる。現時点において強靱で完成されたチームならば確実に勝ち点を持ってくることだろう。しかし、レノファは勝ち点を失った。まだパワーや経験や意思統一が足りないのだ。
試合後、DF福元洋平は次戦の戦い方について質問を投げかけられた。彼は試合全体の進め方にはレノファらしさを貫くとした上で、「ラスト5分。この前の試合もそうだが、もっと目の前の結果を見た進め方をしていかないと、取れるものも取れなくなる」と力を入れた。
ラスト5分という穴。ゲームをしたたかに進められなかったレノファの、埋めなければならない穴に今節も嵌ってしまった。
狙いすぎた相手の背後
対戦相手の千葉は、J2では異色と言える高いライン設定が特徴。その分だけ必然的に生じてくる背後のスペースを使い、レノファはチャンスを作ろうとする。1トップで先発した米澤令衣は十二分に裏のスペースを使うことができる選手。実際に前半8分にはMF小野瀬康介のクロスから米澤がヘディングでゴールを狙う。だが、千葉のGK佐藤優也が好反応を見せてシュートはクロスバーを直撃。なおもレノファは左サイドから切り込んだMF和田昌士が、相手DFとGKの間でボールを受けようとするが、やはりGK佐藤の飛び出しのほうが早く好機を逸してしまう。
時間の経過とともに、千葉の細かなプレーがレノファの上を行くようになる。クリアボールの当てる場所やパスの精度、ディフェンスの意思疎通。これらの精密さが徐々にレノファを苦しめ、次第にレノファはセカンドボールを自分たちのものにできなくなる。前半25分を過ぎる頃から千葉がゲームの流れに乗り、シュートシーンも増加。それでもレノファもGK山田元気が好セーブで応戦し、なんとか前半を耐え抜いて後半に入っていく。
レノファらしい攻撃には遠く及ばず
ハイラインで、プレッシャーの早い千葉にレノファの攻撃は蓋をされていた。サイドバックもなかなか動き出せず、DF星雄次も「自分の上がる時間やスペースがなかなかなかった。思ったよりも(ハイラインに対して)難しかった」と悔やむ。
こうした状況の打開を狙い、レノファは後半の早い時間からスピードのあるMF加藤大樹を投入。後半14分にはボランチにMF池上丈二を充て、ここまで2ゴールのMF小塚和季のプレーエリアを一列前に変更する。スペースがあれば加藤を走らせればいいし、しっかりとしたビルドアップをするのであれは池上や小塚、MF佐藤健太郎などの中心軸で落ち着いて作り込めばいいはずだった。
確かにメンバーや立ち位置の変更は効果があり、加藤は後半20分にコンビネーションからシュートを狙う。小塚も高い位置を取れる利点を生かし、特に終盤はボールに積極的にコミット。ポストに嫌われたもののGK佐藤の頭上を行くループシュートで千葉ゴールを脅かした。
ただ、時間が深くなっていっても依然として千葉のハイプレスは効果を保ち、レノファも安易なクリアや単調な縦の攻撃が目立った。レノファサッカーを体現しうる十分な顔ぶれが並んでいたものの、中盤でゲームを作り前線には人数を割くというレノファらしい攻撃パターンは、最終盤に入るまで回数は限られた。
続くアディショナルタイムでの失点
後半アディショナルタイム。千葉のスピードを持った攻撃に対して後手に回ったレノファは、ボールホルダーのMF高橋壱晟に対して後追いのディフェンスになってしまう。するとDF前貴之と高橋が競り合ってもつれたプレーがファールと判定され、PKを献上。これをFWラリベイに決められ、レノファは2試合続けてのアディショナルタイムでの失点となった。
本筋論ではないが、ここでの一連のプレーがPKにまで至るものだったかというと疑問符は付く。主審は前と高橋がもつれたあとすぐにペナルティスポットを指さしたものの、筆者の位置からは判定理由に関するジェスチャーは確認できなかった。ジャッジの難しいシチュエーションだったことは付言しておくが、前が不正に足を掛けたようには見えず、ファールに値するようなディフェンス手段ではなかっただろう。また高橋も故意に倒れたわけではなく、確かに2選手がボールを巡って交錯はしたがゴールキックで再開させるべきものだったと考える。
とはいえ、サッカーでは事故のような失点も起こりうる。ジャッジに悩みすぎず次に切り替えるほうが得策だ。当たり前のことだが、このシーンまでに複数得点を手にできていたら、ワンプレー、ワンジャッジで結果が左右されることはなかったのだから。
アディショナルタイムを通して何度かゴールに近づくものの、相手を崩しきれず0-1で敗れたレノファ。埋めるべき穴をしっかりと修復して次戦に進みたい。
自分たちのサッカーができていた時間帯もあったが、大半の場面で顕著に裏狙いに傾いた。これは大きな反省点だ。
上野展裕監督は「スペースがあり、裏があるというところで、そこを単純にやってしまう。自分たちの練習してきたことを出せれば良かったが…」と険しく振り返った。この点に関しては複数の選手からも「(裏を)狙いすぎた」という言葉が聞こえてきた。相手のGK佐藤が自信を持って跳ね返していたことを考慮すれば、スペースにおびき出すという千葉の術中に嵌ったとも言えるかもしれない。
「開幕の頃に比べれば希望が見える内容」(福元)へと進歩してきているだけに、愚直なまでにもっと賢くもっとレノファらしく攻めなければならないし、より手堅く最後を締める強靱なチームにもなっていきたい。次戦は敵地での名古屋グランパス戦。足りないものを埋めていけば、「勝てる試合」や「勝ち点を拾える試合」を作れるパーセンテージは高くなる。
熊本地震から1年。高柳が思い語る
このゲームの前日にあたる4月14日は、熊本地震で最初に震度7を観測した日から1年の節目だった。今節の維新公園の試合には昨シーズン熊本でプレーしたMF高柳一誠と千葉のFW清武功暉が出場。高柳は「もう1年が経ったんだなという気持ちが一番大きい。いまはチームが変わりレノファでプレーしているが、今でも(熊本と)関わりがあるし心にもある。自分にできることはあると思うので、考えて行動していきたい」と思いを語った。また、レノファサポーターは、震災以降の昨シーズンのゲームで掲げていた『火の国は必ず立ち上がる。頑張れ熊本』の横断幕を再掲出した。(高柳に関してはJ's GOALのコラムでも取り上げた)
※レノファの高柳一誠と千葉の高橋壱晟の「高」は異体字が登録名