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コンサートに美術展……「コト消費」がますます加速する中国人

中島恵ジャーナリスト
今月、上海で開かれた中島美嘉さんのコンサート会場の様子(写真提供:王嘉偉氏)

 先日、歌舞伎を見に行く機会があった。お正月らしく着物を着ている女性やおしゃれしている人がいて、華やかな雰囲気だった。プログラムを買ってみると、英語の解説がついていた。「あれ?英語の解説って以前からあった?」と思ったが、英語の説明があれば、外国人にも理解しやすい。歌舞伎界も少しずつ“国際化”しているのだろう、と感じた。

 実は最近、中国人の間でも、日本の歌舞伎やコンサート、現代劇、美術館などに興味を示す人が増えている。

 中国の検索サイト「百度」では、地方の小さな美術館の検索数が増加していると聞くし、昨秋、市川猿之助主演で話題を呼んだスーパー歌舞伎『ワンピース』には、日本のアニメファンである中国人がわざわざ桟敷席を購入して鑑賞しに来ている、と聞いて驚いた。

 中国の若者が日本のアニメに関心が高いことは知っていたが、“爆買い”と騒がれた2015年以降、彼らの消費傾向は大きく変化し、日本の文化や芸術など「コト消費」や「体験」に興味を示す人が増えてきているのだ。

コンサートのチケットが2万8000円!

 実は「コト消費」へのシフトは、日本など海外に関することだけでなく、中国国内でも猛烈なスピードで進んでいる。

 中国でも有名歌手がコンサートを開けば、満席となる盛況ぶりが続いているのだ。先週、歌手の中島美嘉さんが上海で開いたコンサートには大勢のファンや若者が詰めかけ、友人の微信(中国版のSNS)にもその情報が出回っていた。

 友人の投稿によると、チケットの価格は2階席でも980元(約1万6000円)だったそうだが、大変な盛り上がりを見せていたという。1階の最もよい席は1680元(約2万8000円)もしたそうだが、友人によると「ほぼ満席に近い状態」だったそうだ。中国人歌手のコンサートでも、金額はほぼ変わらないという。

 1万6000円といえば、私が日本で見た歌舞伎とほぼ同料金だが、中国人もこういうところに、ふんだんにお金を使うようになってきているということを、日本人ももっと認識するべきだろう。

 以前から、嵐などアイドルのコンサートなどのため、わざわざ日本にやってくる中国人ファンは少なくなかったが、最近は文化に対する興味・関心のすそ野が広がり、特定のアイドルや音楽や演劇ファンだけでなく、展覧会などにも足を運ぶ中国人が増えている。私の著書「なぜ中国人は財布を持たないのか」でも紹介したが、彼らの成熟化は各方面で進んでいるのだ。

 昨年末、上海では蜷川実花さんの展覧会が開かれ、映像作品も含め、「花」「金魚」などをテーマとした1000点以上の作品が展示されたが、大盛況だった。現在も、同じく上海で安藤忠雄さんの展覧会が開催中だが、こちらも上海の若者を中心に注目を集めている。

 昨年、埼玉県で開かれた「世界盆栽大会」にも多数の中国人客が訪れた。私も杭州のおしゃれなカフェで日本のすばらしい盆栽を発見したときには驚いたが、日本人が想像する以上に文化への興味は広がってきているのだろう。

 先週末、2017年の訪日観光客数が5年連続で過去最高を記録したことが明らかになった。2016年に比べて、約20%も増加し、約2870万人となった。中でも最も多いのは中国人で前年比15%増の約735万人。中国からの訪日客は、団体よりも個人客が急増しており、とくに若い女性の増加が顕著だ。

 こうしたことから、中国人の「コト消費」はますます加速していくと考えて間違いないだろう。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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