市議会に無断侵入、小学生の登下校を勝手に撮影 中国人インフルエンサーのSNS投稿が急増するワケ
このところ、中国人インフルエンサーが日本の市町村の議会に無断侵入したり、小学生の登下校の様子を撮影したりして、SNSに投稿する件が相次いでいる。奈良県大和郡山市の市議会で議長室を撮影したり、鳥取県北栄町などでも議長室の内部を無断撮影、山形県新庄市でも同様の動画を撮影、SNSに投稿していたことがわかった。
また、小学生の登下校の様子を撮影する動画も各地で多数撮影、投稿されている。なぜ、最近、こうした投稿が急増しているのか。
中国で注目を浴びやすいから
筆者は中国のSNSを頻繁に見ているが、その中には、昨今、問題になっている日本の市議会への無断侵入や、小学生の登下校、幼稚園生が散歩する様子を動画や写真に撮り、投稿しているものが少なくない。
「日本の市議会の中はこんな感じ。質素ですね」や「中国とはかなり違いますね」「椅子の座り心地はこんな感じです」などの呑気なコメントが添えられているものもある。中国とは建物も内部も異なる日本の市議会は、中国に住む人々からすると物珍しく、興味をそそられて、多数の「いいね」がもらえる。
一方、日本の小学生がランドセルを背負って登下校している様子も、中国のSNSではよく見られる人気コンテンツのひとつだ。中には子どもの顔がはっきりと写っているものもあるが、背後から動画で撮影したものや、保護者や地域ボランティア、先生などが旗を持って横断歩道の付近で誘導している様子などもある。
中国では、誘拐などの危険性があるので、子どもがひとりで通学することはほとんどなく、集団登校もない。ランドセルもないため、見ている人は興味をそそられるようだ。
特定の有名インフルエンサーが投稿しているものもあれば、誰かの投稿をシェアするという形で一般の人が投稿しているものもあり、小学生の登下校風景はとくに人気がある。シェアしている一般の人の多くは悪気がなく、「日本は子どもがひとりでも登校できる。安全な国」などと好意的に受け止めている。
日本人が知れば驚くだろうが、子どもの顔が写っていることに対して危険を感じたり、疑問を持ったり、こうした投稿自体が問題である、と受け止める人は少ないのが実情だ。
SNS投稿に対しての意識、プライバシーに対する意識が日中の人の間でかけ離れているから起こることだが、投稿しているインフルエンサーは単に「バズること」を目的としているので、このような日本での撮影、投稿はさらにエスカレートしていく一方だ。
とくに最近では、中国でもSNSが飽和状態なため、日本など海外の珍しい風景は比較的注目を集めやすい。そのため、なりふりかまわずやっている、という悪質なインフルエンサーもいる。
彼らの投稿は、日本のX(旧ツイッター)などに投稿したり、何らかの形で中国のSNSに投稿したことが日本で話題になったりしない限り、日本では発覚しない。中国のSNSだけで出回っているもののほうが多く、実際には、数えきれないほどの投稿があるのではないだろうか、と感じている。
罪に問うことは難しいのか
子どもの登下校の様子が拡散された山形県米沢市では、Xの公式アカウントで「警察、教育委員会、学校が協力してパトロールを実行する」としている。12月3日の弁護士ドットコムニュースによると、「公道上で子どもたちを勝手に撮影する行為で『罪』に問うのは難しい」としている。
だが、「軽犯罪法の適用はあり得る」「民事上の責任は問い得る」という。「刑法上、このような撮影を禁じる規定はとくにないが、ストーカー規制法、迷惑防止条例などで規制ができないかも問題となる」と紹介している。
中国国内では、「バズれば勝ち」といった意識で、オリンピック選手の自宅の横にある木によじ登って室内を撮影したり、やらせの動画を撮影したりする投稿が後を絶たない。
中国ではもはや取り締まりもできないほど、こうした投稿は多いが、SNSというデジタル空間は簡単に国境を超えられる。何らかの罰則や取り締まりをしたり、中国のSNSを頻繁にチェックする体制を整えない限り、日本での中国人のSNS撮影は、今後も増えるのではないかと考えられる。