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新商品「PSポータル」を発売前に体験 三つのポイント

河村鳴紘サブカル専門ライター
ソニーの新デバイス「PlayStation Portal」=筆者撮影

 ソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5」を利用し、携帯ゲーム機のような感覚で遊べる新デバイス「PlayStation Portal(PSポータル)」。15日発売の同機について提供を受け、発売前にいろいろ触ってみました。気になった三つのポイントについて触れてみます。

 「PSポータル」は、PS5のゲームをテレビのモニターなしで遊べるリモートプレー専用のデバイスです。8インチの液晶ディスプレーがあり、あたかも携帯ゲーム機のように遊べます。ただし通常の携帯ゲーム機のように単体では遊べず、PS5本体が必要。そしてWi-Fi(最低5Mbps、推奨15Mbps以上のネット環境)が必要です。

◇携帯ゲーム機の感覚で楽しめる

 第一のポイントは、PS5用ソフトの美しい画像が、携帯ゲーム機の感覚で遊べることです。

 この点は同機最大の長所で、実際に触ると最も喜びを実感する部分でしょう。従来の携帯ゲーム機はスペック的に家庭用ゲーム機より劣る分、グラフィックで見劣りする面がありましたが、「PSポータル」は違います。同機を立ち上げたとき最初にあるリモート接続時間以外は、実に快適でした。グラフィックもきれいで、読み込み時間も短いのですから。PS5本体のパワーをきちんと活用しているとも言えます。

 リモートのデバイスである以上「通信環境に左右される」のは、その通りです。私もその点が気になり、さまざまなネットワーク環境で遊んでみたものの、問題なく遊べました。リモートでネックになるであろう通信遅延について、影響を受けやすいであろう、スポーツ系のゲームを選択し、あえて外出先から何度も遊んでみましたが、違和感なく楽しめました。

 ただリモートである以上、自宅ではなく外に持ち出して、普通のゲーム機と完全に同じ……というわけにはいかないでしょう。そこはユーザーそれぞれの通信環境、好きなタイプのゲームについて、それぞれが考慮するのが良いということになります。

 携帯ゲーム機のように寝転がってのプレーや、テレビモニターを占拠しないのでテレビ番組を見ながら楽しむこともできます。ゲームの途中で電源ボタンを押して「レストモード(スリープ状態)」にし、再起動してリモート状態を復活させて続きを遊ぶ……ということも(当然ですが)できました。このあたりは、リモートの利点でしょうか。

 繰り返しになりますが、手元に8インチのモニターがあり、美麗なゲーム画面が映し出されるのは、それだけでうれしいもの。ゲームの面白さに、グラフィックの豪華さは関係ありませんが、美しい方が良いのもまた事実です。

 ソニーの携帯ゲーム機といえば、2019年に生産を終了した「PS Vita」。その系譜が同機の終わりをもって断絶した格好になっていましたが、制限付きながら復活したような恰好になっています。大きめのモニターでもありますし、携帯ゲーム機が好きなゲーマーには、たまらないのではないでしょうか。

◇リモートの設定が簡単

 第二のポイントは、設定や操作が簡単で楽ということです。

 「PSポータル」の最初ですが、電源を入れてネットワークを設定し、PSNのIDとパスワードを一度設定してしまえば、あとは普通にPS5のように使えます。別のネットワークにつなぐときも、最初にネットワークの設定をすれば、すぐ楽しめます。

 リモート機器ゆえに、PS5と同じ操作なのが大変便利なのですが、ゆえに落とし穴もあります。例えば外出先で「PSポータル」を操作して、PS5本体の電源をオフにできるのですが、その後「PSポータル」からPS5本体の電源を再び入れようとしてもできません。その場合は、外出先から一度PS5本体のある場所に戻り、本体の電源を入れなおさないと、リモートで遊べません。

 つまり「PSポータル」を外出先で使う場合、PS5の電源をオフにせず、「レストモード(スリープ状態)」を活用するわけです。……ということは、外出先に「PSポータル」を持ち出したとき、うっかりしてPS5本体の電源を入れ忘れる、もしくはレストモードにしていない場合も、ダメということになります。

 ともあれ、リモート機器には、本来設定する上でのわずらわしさがあります。それを極力軽減する仕組みは良いといえます。また同機の使用は、自宅のWi-Fiネットワークが最適……とありますが、外部でのWi-Fi使用を強く意識していることは、使っていても感じるところでした。

◇ユーザーの環境・条件次第 評価が割れるか

 第三のポイントは、個々のユーザーの環境・条件次第で、大きく評価が割れるデバイスであることです。

 「PSリモート」の価格は2万9980円で、それだけであれば携帯ゲーム機の価格に似ていますが、前提としてPS5本体が必要なデバイスです。PS5本体がない場合は、計10万円近い出費になります。価格を気にする人は、不満が出てしまうはずです。

 そして自宅を空けることが多かったり、出張がある人で、Wi-Fiのある場所で待機時間がある人は「欲しい」となるでしょう。逆に、家以外でPS5をする可能性のない人は、ゲーム好きであっても「別にいらない」となるわけです。

 総じて言えば、触った評価では満足すると予想します。ただし、触る前の評価だと、どうしても価格だけがクローズアップされてしまうし、「ディスプレー付きのコントローラー」という見方になると、割高感は出るでしょう。

 いずれにせよ各ユーザーに、PS5のゲームがリモートで遊べるという「選択肢がある」のは、喜ぶべきことです。そして発売後にゲームファンからどう評価がされるのか注視したいと思います。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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