「浦和とACL」ふりかえり 過去の韓国勢との対戦で起きたハチャメチャな「軍隊v.sレッズサポーター」
いよいよ、その時だ。”決戦その1”が今晩に迫っている。
AFCアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝戦第1レグ
アル・ヒラル(サウジアラビア)―浦和レッズ
アウェーゲームは26時30分(30日2時30分)にキックオフ。遠きアウェーの地、リヤドのキング・ファハド国際スタジアムでどんな出来事が起きるだろうか。
ここでは浦和レッズに起きた歴代のアジアの地でのちょっとしたハプニングの振り返りを。あまり知られていないが、韓国の地で驚くべき出来事があった。
"これみよがし"に真横で「地元駐屯員たちが大合唱」
レッズと韓国といえば、2017年5月31日のラウンド16第2レグ、済州ユナイテッド戦での「大乱闘事件」の記憶などが強烈だ。いっぽうアウェーゲームでは、日本ではあまり知られていないもののこんな出来事があった。
「レッズサポーター v.s 韓国海兵隊」
事は2016年3月2日のグループリーグ第1レグ、浦項スティーラース戦で起きた。韓国・浦項(ポハン)でのアウェーゲームで、当地に駐屯する海兵隊の軍人たちが浦和サポーターの真横にわざわざ陣取り、試合中にも時折、浦和の声援を遮るような
かたちで大声援での応援を始めたのだ。
試合中には大きなトラブルはなかったものの、韓国内で最も注目を集めたのは試合後の出来事だった。
この試合、浦和は0-1で敗れた。それでも試合後にチームを称えるコールを繰り出すレッズサポーターの真横で…なんと軍人たちの大合唱が始まったのだ。
唱題は「八角帽(パルガンモ)の男」。軍歌だ。海兵隊の象徴的な帽子をタイトルにしたこの曲は、本来、悲しい旋律に強い軍人の意思を乗せたものだ。
八角帽の迷彩模様 海行く男
青黒い怒涛に乗って俺たちは行く
俺の祖国 この地を守り
火の海へ突き進む俺たちは海兵
八角帽 八角帽 八角帽の男
俺たちは格好いい八角帽の男
勝利した浦項のある選手を称えてのものだった。当時所属したDFキム・ウォニル。かつて兵役時代にこの部隊に所属した経歴を持っていた。試合後、ゴール裏に挨拶に訪れた彼とともに、浦和サポーターの目の前でこれみよがしに大合唱してみせたのだ。
翌日の「ソウル新聞」がこの様子を"してやったり"と言わんばかりに伝えた。
「日本のサッカーファンを黙らせた海兵隊の威厳」
相手クラブフロントの「企み」だった…
韓国東岸に位置する浦項には海軍第1師団という有名な舞台がある。部隊員たちが時折ホームスタジアムのスティールヤードを訪れ、スタジアムの一角で手拍子と軍歌だけの応援を繰り広げる姿は風物詩となってきた。なにせ500人から1000人規模の大人数が一心不乱に繰り出す出す応援は大迫力。ゴール裏のホームサポーターよりも目立つことが度々ある。
ただこの海兵隊往年、スタジアム内での定位置は、バックスタンド2階席の四隅。いわば「末席」でその時間を楽しんできたわけだが…
- 近年では蔚山現代との「東海岸ダービー」など重要な試合ではメインスタンドに陣取ることも。動画は2019年シーズンの様子
浦和レッズ戦だけは違った。
背景にはレッズが07年に韓国に「初上陸(つまりACLに初出場)」して以降、韓国からかなりの警戒対象となっていることがある。試合翌日の現地大手紙「朝鮮日報」はこう記している。
「『URAWA BOYS』と呼ばれる浦和レッズサポーターは、組織的な応援で有名だ。ホームの埼玉スタジアムでは芸術に近いコレオグラフィが繰り広げられる。観客席を埋める赤いチームマフラーの波も見どころだ。大規模のアウエー応援ツアーも度々組まれるが、2007年の大会ではファン4000人余りが(韓国の)全州と城南を訪れ、まるでホームのような雰囲気を演出した。この日も遠く浦項まで訪れてきた500人余りのサポーターが赤い文字で「血戦」と書いた幕や日章旗を掲げて洗練された応援を繰り広げた」
平日夜のゲーム。再びジャックされるわけにはいかない。そこで浦項側はある企みを実行した。同じく当時の「朝鮮日報」がこう続ける。
「浦項のフロントは(地元の)海兵隊にSOSを送った。浦和のファンの気合を削ぐための妙案だった。浦項海兵隊第1師団の1000人は当初2階の観客席で試合を観戦する予定だったが、クラブ側の要請により浦和サポーター席のすぐ横に陣取ったのだ。サッカーの慣例上、両チームの応援団は遠く離れて座るのが原則だ。この日は浦和のファンが応援歌を歌い始めると、海兵隊の将兵たちも『八角帽の男』などの軍歌を歌いながら、対抗した。一心不乱の応援に浦和の応援のリズムが途切れたりもした」
この策が浦和サポーターにどれほど"効いた"かは定かではないが…いまやレッズは、こうやってアジアの地でもかなり強く意識され、あれやこれやで「やられまい」と対策を立てられる存在になっている。これを改めて認識できるハプニングだった。アジアの地でのこういった歴史を経て、今晩と5月6日の2戦で行われる決勝のステージがある。どんな熱狂が待っているだろうか。
(了)