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南アフリカ代表初の黒人主将、シヤ・コリシ。ワールドカップ日本大会優勝へ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
同国史上3度目の優勝を狙う。(写真:ロイター/アフロ)

 シヤ・コリシは、ラグビー南アフリカ代表史上初の黒人主将だ。

 2019年11月2日には、イングランド代表とのラグビーワールドカップ日本大会決勝にフランカーとして先発(神奈川・横浜国際総合競技場)。遡って1日、共同取材で意気込みを語った。

「レインボーネーション」と言われる多民族国家の主将として、自分たちが勝つことの意義に言及する。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――特別な気持ちをどう対処するか。

「感情をうまくコントロールすればパフォーマンスは上がります。ただ、明日はひとつの試合ではないです。特別な試合です。そんなチャンスを与えられる人はそう多くない。チームとして正しい方向で気持ちの管理をしていきたい」

――次が50キャップ(代表戦出場数)目です。

「あまりそのことは考えていません。一番大事なのは、とにかくチームに貢献するということ。どの選手もそう思っているでしょう。50に達したのは嬉しいですが、大きいのは明日立派に試合するということ、その他のことは二の次です」

――対するイングランド代表のエディー・ジョーンズ監督は、相手が用意したゲームプランをやらせないのが上手。どう対処するか。

「それが、テストラグビーです。私たちは毎週、そういう経験をしている。相手はできる限りゲームプランを実行できないようかく乱してくる。それはいつものことです。エディーさんはスマートなコーチですが、私たちも優秀なコーチがついている。特別なことではないです」

――ラシー・エラスムス監督は、「コリシ選手を主将にした当初は、本当にこれでよかったのかと思うことはあった」と話していました。

「最初は大変でした。自分が主将になることは国の大きなニュースになりました。最初はイングランドツアーに参加しました。私としては最大限のプレーをしたつもりでしたが、重荷でした。しかしチームのコンディショニングコーチが有能で、スーパーラグビー(国際リーグ)の間にしっかりコンディショニングを整えることができました。おかげでプレーにフォーカスできるようになり、試合で任務を遂行できるようになった。リーダーシップはハンドレ・ポラードとも共有している。私たちが明日トロフィーを掲げられたら、国にとっても大きなこと。私にとってどんな意味を持つかという個人的なことではない。チームに、選手それぞれの人生にとって(大切)。今度の勝利はどこ出身であるかに関わらず本当に意味があることだと話してきました。本当に重要な決勝です」

――決勝の舞台にはお父様が来るそうです。

「父が海外の試合を観に来るのは初めて。そういう状況を作ってくれて、大変嬉しいです。父は今回、初めて外国に出たんです。父は私の親友であります。私がラグビーをすることで家族にこのような経験をさせられて嬉しいです。ちなみに父が私のラグビーを観るのは2回目。そして、海外での生観戦は1回目です」

――南アフリカ代表は1995年の自国大会で初優勝。国がひとつになりました。

「当時はまだ小さかったので、その様子はビデオで観ただけです。ただ、ビデオを通しても本当に素晴らしいと映りました。2007年のフランス大会優勝は、リアルタイムで体験しています(自宅にテレビがなく、近所の居酒屋で観戦した様子)。あれは大きな変化を国にもたらしました。それ以降、私はこのチームのためにプレーしたい気持ちが強くなった。大統領も議会で言っています。『皆でスプリングボクス(南アフリカ代表)のジャージィを着てテレビを観よう』と。国にとってラグビーは大きな意味を持つ。

 色々な人種がいる。それを世界に見せたい。人々が結び付ければ大きなことを生み出すということを、見せたいんです。立てた計画を信じて全力を出し切る。それがどういうことか、ここにいる3人(会見した自身、ポラード、ムズワンディル・スティックコーチ)もわかっている。明日トロフィーを獲得したら、国がどんな騒ぎになるか。想像もできません」

 相手の名将による無形の圧力へは、敬意を示しつつ「それがテストラグビー(代表戦)」と平然。母国における自分たちの影響力も淡々と述べる。ちなみに今大会で初の8強入りを果たした日本代表は、この戦士が先頭に立つ南アフリカ代表と準々決勝で対戦している。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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