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バットを振らずとも、ブライス・ハーパーは打席で圧倒的な存在感を放つ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブライス・ハーパー(ワシントン・ナショナルズ)Aug 4, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

9月3日、ワシントン・ナショナルズは15対1でアトランタ・ブレーブスを下した。この試合では、ナショナルズのスターティング・ラインナップに名を連ねた9人のうち、投手のジョーダン・ジマーマンを含む8人がヒットを放った。

けれども、ナショナルズで最も存在感を示したのは、先発出場した選手では唯一ヒットのなかったブライス・ハーパーだった。3番打者として試合に臨んだハーパーは、四球で4度出塁して、その4度とも得点を記録した。4度目はライアン・ジマーマンの二塁打で、一塁からホームインした。この時は、三塁を回ったところでヘルメットを飛ばして激走した。

ESPNスタッツ&インフォによれば、1シーズンに1試合4四球&4得点を2度記録したのは、1950年のドム・ディマジオ以来のことだ。実に、65年ぶりということになる。また、過去に0打数0安打の試合で4四球&4得点(あるいはそれ以上)を記録したのは、ラリー・ドビー(1951年9月19日)、ジョー・モーガン(1973年7月27日)、リッキー・ヘンダーソン(1989年7月29日)だけ。彼らは3人とも殿堂入りしている。ドムは、兄のジョーとも隣を守っていたテッド・ウィリアムズとも違い、殿堂には入っていないが、オールスター・ゲームに7度選ばれている。

ハーパーは8月18日のコロラド・ロッキーズ戦では、6打席のうち2度アウト――見逃し三振と内野フライ――に仕留められ、敬遠四球も1度あった。それに対し、9月3日は敬遠なしの4打席4四球。ストライクの4球を含めて一度もスウィングはせず、満塁で迎えた2打席目には打点も挙げた。6回裏にジェイソン・ワース、ライアン・ジマーマンとともに試合から退いたため、この日は4打席で終わったが、最後まで出場していれば5四球や6四球もありそうな雰囲気だった。

今シーズン、ハーパーは打率・出塁率・長打率のスラッシュラインがいずれもリーグ1位の.333/.467/.634で、32本塁打は3位、31二塁打は7位タイ、80打点は8位タイに位置している。これだけ打っていれば、相手が警戒するのも頷ける。過去3年に9.4%、12.3%、9.6%だった四球率は、19.6%まで跳ね上がっている。これは、ハーパーがボール球を振らないようになったことも理由にあるが、それだけではここまで上昇しない。

来年、ケン・グリフィーJr.はドラフト・トップピック(全体1位指名)では初の殿堂入りを果たすだろう。2人目のトップピックとしてはチッパー・ジョーンズが有力で、薬物の件さえなければ、アレックス・ロドリゲス(ニューヨーク・ヤンキース)も殿堂入りしてもおかしくない。まだ22歳ながら、そこにハーパーも加えてもいい気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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