Facebookのメタバースに反発の声、囲い込みに警戒感も
Facebookが社名をMetaに変更し、メタバース事業に本格参入することに対して、警戒する声が多数挙がっています。なぜこのような反発が起きているのでしょうか。
Facebookの発表後、メタバース関連株や仮想通貨の相場は急騰。パソコン、スマホと進化してきたインターネットの「次」が示されたことで、マネーが惹き付けられている印象を受けます。軟調な決算で株価を下げていたFacebook自体も持ち直しつつあります。
一方で、批判的な声も増えています。まず、社名変更は最近のスキャンダルを覆い隠すことを狙ったのではないか、との指摘です。元社員からの内部告発により、Facebookはヘイトスピーチや未成年への悪影響を放置してきたのではないかとの疑いを持たれ、イメージが悪化しています。
日本ではFacebookのユーザーは2600万人(2019年7月時点)とTwitterよりも少ないとみられ、あまり日常的な影響力を感じないものの、世界の月間アクティブユーザー数は29億人に達しており、人類が抱えている問題の大半がFacebook内で起きている状態といえます。
それに加えて、「囲い込み」への懸念もあります。もともとインターネットには誰に対しても開かれた空間であるべきという理念があります。その中に特定の人だけの空間を作ることはできるとはいえ、それが地球規模に広がり、どの検索エンジンも到達できない巨大な空間が生まれるとインターネットは分断されてしまいます。
そのFacebookが提唱するメタバースに対して、SNSのFacebookのような囲い込みを警戒する声が増えることはやむを得ないでしょう。Facebookがメタバースをどれくらいオープンなものにしていくか、厳しい視線が注がれることになりそうです。
Facebookにとって生き残りをかけた戦いに
Facebookは投資家向けにメタバースに関連した研究開発の部門を独立させる考えです。そこに投じる資金は100億ドル(約1兆1400億円)以上。最初に売上が立ちそうなのはVRヘッドセットなどのハードウェアですが、長期的にはメタバースのプラットフォームから生まれる莫大な収益が期待されるところです。
このプラットフォームは次世代のスマホOSやアプリストアに匹敵する存在に成長する可能性を秘めています。アップルやグーグルはこれらのプラットフォームから着実に利益を上げる一方で、Facebookはアップルのプライバシー仕様の変更によって広告収入を大きく脅かされています。
地球上で最大のSNSを構築したはずのFacebookは、実は他社の手のひらの上で踊らされていたともいえるわけです。10年や20年といった時間軸でFacebookが生き残っていくために、自社のプラットフォームを立ち上げることは避けられないと判断したのでしょう。
ただ、メタバースが事業として本格的に立ち上がるには少なくとも数年はかかるとみられ、その間にSNSのスキャンダルに足を引っ張られる恐れがあります。また、Facebookに対抗してメタバースに参入するライバル企業が現れるかどうかにも筆者は注目しています。