Yahoo!ニュース

スバルが踏み出すNEXTステップ【スバルが挑む、9度目のニュル24時間レース Vol.1】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

今年も「世界最大の草レース」と呼ばれる、ニュルブルクリンク24時間レースが今週末、開催される。日本のスバルはこのレースに、2008年から参戦し続けている。今年で9度目の挑戦となる。

これまでの戦績は、2011年、2012年にクラス優勝を果たし、そして昨年2015年にもクラス・チャンピオンに輝いている。そして今年も、目指すはクラスの頂点。ドイツで開催されるレースだけに、ライバルはお膝元のドイツメーカーであり、それはつまり世界最高峰の自動車との戦いを意味している。実際、昨年から引き続き、今年も最大のライバルとなるのはアウディTT。スバルはそんな名車を、同社のフラッグシップスポーツであるWRX STIで迎え撃つ。

欧州でスバルが名を馳せたのは、ご存知のように世界ラリー選手権・WRCでのインプレッサWRXSTIの活躍が大きい。WRCに参戦した1993〜2009年の間に、マニュファクチュアラーズチャンピオン3回(1995年、1996年、1997年)、ドライバーズチャンピオン3回(1995年、2001年、2003年)を獲得した功績は、このブランドをラリーと強く結びつけ、その後のイメージを牽引した。

しかし2008年にWRCから涙の撤退をし、その後WRCには戻っていない。ただし、これに変わって日本で最も人気のあるレースであるスーパーGTに2009年から参戦。またそれと前後する2008年から、ニュルブルクリンク24時間レースに参戦し続けている。そうしてスバルは、ラリーではなくサーキットにおいて、モータースポーツへの挑戦を続けている。

日本ではモータースポーツ自体が、欧州ほど認知されていない現状がある。1960〜70年代には高度経済成長に併せて、日本車が世界に追いつけ追い越せで進歩したことに従って、モータースポーツも多くの人を集めた。しかし現在では、かつての勢いは感じられないのが実際である。しかし世界的に見ても自動車メーカーとモータースポーツは切っても切れない重要な関係にあり、グローバルで戦う自動車メーカーにとっては無視することのできない要素であることも間違いない。

特に欧米では自動車の歴史が始まって以降ずっと、モータースポーツはイコールで自動車メーカーの「ブランド」を作り上げるために欠かせない大切な要素のひとつとなっている。そうした部分を、スバルはしっかりと見据えてモータースポーツに関わりを持ち続けている。

事実、今回のニュル24時間レースへの挑戦に関して関係者に話を聞くと、皆一様に「ブランド」についての話をすることを忘れない。すでにこの地で三度のクラス優勝を果たしてもなおここに挑戦し続ける理由は、単にこのレースで勝つということだけでなく、スバルはこのレースを通してブランドを育てていくことを大きな狙いとしているのだと筆者は感じた。

そこで今回はスバルのニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦を通して、「スバルが踏み出すNEXTステップ」を見ていきたいと思う。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

河口まなぶの最近の記事