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デジタルラジオのみで運営するローカル局を訪ねた/ノルウェーでFM放送を廃止

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
オープン時からデジタル化されていたラジオ・トロンハイム Photo:Abumi

6月21日、ノルウェーの南部にある4県、ソグネ&フィヨーラネ県、ホルダラン県、ローガラン県、アグデル県でラジオの歴史が動いた。国営放送局NRKによるFMラジオ放送が幕を閉じ、デジタルラジオDAB+へと完全移行(民間放送のデジタル移行は9月15日)。

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数年間かけて、最終的には地方局もデジタル化を迫られる。

この日、筆者は中部に位置する第三の規模のまちトロンハイムにいた。トロンデラーグ県では地方ラジオをのぞいて、6月16日までに国営・民間大手はデジタル化へと完全移行済み。

ノルウェーでは今でもラジオのデジタル化においては意見が割れている。

「デジタルラジオ切り替えの準備ができていなくて、イライラしている車の運転手の人とかがいるんだろうなぁ」。そう思いながら、南部4県でのデジタル化のニュースをホテルの新聞で読んだ後、筆者はトロンハイム中心部にあるカフェでコーヒーを飲んでいた。

「おや」と気になったのが、カフェの中にあるガラスで仕切られた小さな部屋。「ラジオ・トロンハイム」と書かれている。「もしやローカル局?」と好奇心でのぞいてみると、アナウンサーとして働く男性が1人でいたので、お話を聞かせてもらった。

カフェJacobsen og Svartの奥にラジオ局 Photo:Abumi
カフェJacobsen og Svartの奥にラジオ局 Photo:Abumi

ラジオ・トロンハムは2015年11月にスタートしたローカルラジオ局。開始当時からDAB放送のみで、FMはしていなかった。

「今は夏休みでみんなのんびりしているから、ラジオでは音楽ばかりかけているよ」と話すのはボール・ダニエルセンさん。

「日本ではDABについて関心が高いの?DABについては確かに色々と議論はあるけれど、このラジオ局はDABがなければ始まらなかった。不満に思っている人もいるようだけれど、僕はいいか悪いかの議論には参加していない」。

アナウンサーのダニエルセンさん Photo:Asaki Abumi
アナウンサーのダニエルセンさん Photo:Asaki Abumi

毎日1万5千人の視聴者に向けて放送しているそうだが、経済的には運営できているのだろうか。デジタル化への移行には政府からの補助金がでるが、このラジオ局は補助金なしで、スポンサーなどからの広告で動いているという。

「視聴者にあった広告を見極めることが大事だ。うちの視聴者は年配が多いから不動産の宣伝が多い。若い人向けだったらコンサートや服の話題がいいのだろうけれど」。

「DABならどこからでも聞くことができる。新しいラジオを買わなければいけないとブツブツ言っている人、懐疑的な人には、まずは試して聴いてみろって伝えているよ」。

ラジオを聞いている人はどういう人かと聞くと、「トロンハイムが好きな人!」。今後の展望はと聞くと、「国中の人に聞いてもらうこと!DABならどこからでも聞ける」とダニエルセンさんはニヤリとした。ここではデジタルラジオの誕生で、わくわくした空気がうまれていた。

カフェの隣にラジオ局のマーク Photo:Asaki Abumi
カフェの隣にラジオ局のマーク Photo:Asaki Abumi

Text&Photo:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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