デリケートゾーンの痒みの原因「カンジダ外陰腟炎」の治療法や予防法とは
デリケートゾーンの不快なかゆみに悩む女性は少なくありません。不意に襲ってくるかゆみで困り、そのせいで日常生活に支障が出ることもありますよね。
多くの女性が実はこのような悩みを抱えており、その主な原因として「カンジダ外陰腟炎」というものがあります。
本記事では、この「カンジダ外陰腟炎」の特徴や治療法などについて解説します。
デリケートゾーンのかゆみを引き起こす原因とは?
女性の外陰部にかゆみがある場合、いくつかの原因が考えられます。以下は、その主な原因となる疾患や状態です。
1. カンジダ外陰腟炎
カンジダという酵母菌(カビの一種)が過剰に増殖することによって症状が現れる疾患です。白っぽいカッテージチーズ様のおりもの、外陰部のかゆみや赤みを伴うのが特徴です。
2. 細菌性腟症
カンジダとは異なる様々な菌が腟内で増殖することにより生じる炎症です。魚のような臭いのするおりものやかゆみを引き起こすことがあります。
3. 外陰部皮膚炎
アレルギーや刺激物質に反応して皮膚が炎症を起こした状態です。かゆみ、赤み、腫れなどが現れます。
4. 外陰部乾癬(かんせん)
皮膚に赤い発疹や鱗屑(りんせつ)が現れ、かゆみを伴うことがある疾患です。感染がきっかけとなることもありますが、乾癬自体は感染症と必ずしもイコールではありません。
5. 外陰部湿疹
環境、ストレス、アレルギーなどが原因で、外陰部に湿疹ができてかゆみや赤みを伴うことがあります。
6. 性感染症
クラミジア、ヘルペスなどの性感染症で、外陰部のかゆみとして症状が現れることもあります。
7. 女性ホルモンの変動
生理周期や更年期、妊娠など、女性ホルモンの変動がデリケートゾーンかゆみの原因となることがあります。ホルモンの影響と判断するには、他の疾患ではないことを確かめる必要があります。
カンジダ外陰腟炎について
カンジダ外陰腟炎は、カンジダが女性の外陰部や腟内で過剰に増殖することによって引き起こされる疾患で、外陰部や腟内に炎症が生じます。
全ての女性のうち4人に3人は生涯で1回以上罹患すると考えられており、とても頻繁にみられる疾患の1つといえるでしょう。
カンジダは、健康な女性の消化管や皮膚、腟内にも自然に(普段から)存在しているため、単に「腟内にカンジダがいる」だけでは「カンジダ外陰腟炎」の診断や治療対象とはならず、「かゆみなどの症状が出ている」ことが重要となります。
カンジダ外陰腟炎は以下のような状況で発症しやすいことがわかっています。
<カンジダ外陰腟炎が起こりやすい状況・環境>
抗菌薬使用
妊娠
糖尿病や悪性疾患(がん)などの罹患
化学療法や免疫抑制薬の実施
通気性の悪い下着の使用
腟内の不適切な洗浄
産婦人科でどんな検査をするの?
デリケートゾーンのかゆみがあって産婦人科を受診していただくと、以下のような診察・検査をしてカンジダが原因かを調べます。
- 問診(合併症、最近の抗菌薬の使用、性行為の状況など)
- 診察(内診)
- カンジダの存在の確認(外陰部や腟から検体を採取)
かゆみなど具体的な症状があって受診をする場合には、カンジダが原因かどうかにかかわらず保険診療での検査が可能です。
治療法・予防法は?
1. 治療法
カンジダ外陰腟炎の治療には専用の薬(抗真菌薬)を使う必要があります。
<具体的な治療薬の例>
・クロトリマゾール(商品名の例:エンペシド腟錠、エンペシドクリーム)
・ミコナゾール(商品名の例:フロリード腟坐剤、フロリードDクリーム)
・オキシコナゾール(商品名の例:オキナゾール腟錠、オキナゾールクリーム)
・イソコナゾール(商品名の例:アデスタン腟錠、アデスタンクリーム)
診察の上で、クリーム、錠剤など、医師の判断で適切な薬を使用します。しっかりと治すには、症状が改善しても指示された日数・量の薬をきちんと使うことが重要ですので、自己判断で薬の使用を中断しないようご注意ください。
2. 予防法など
普段からの予防や、治療中により回復を早めるための工夫も大切です。
(1) 生活習慣の改善
洗浄力の強すぎる石鹸の使用を避けて外陰部や腟内をゴシゴシこすらない、通気性の良い下着を選ぶ、適度な乾燥を保つなどの工夫が大切です。
他にも、バランスの良い食事をとる、十分な睡眠をとる、ストレスを減らすなども重要です。
(2) 再発を繰り返す場合の対処
カンジダ外陰腟炎の約9割は初回の治療で治癒しますが、一部の女性では再発を何度も繰り返すことがあります。年間4回以上の再発をする場合、「再発性外陰腟カンジダ症」と呼ばれます。
こうした場合には、初回治療とは異なる種類の治療薬に変えたり、投与期間を通常より長くしたりして治療効果を観察します。
再発を繰り返す女性は(1)の生活習慣の改善がうまくできていない場合もありますので、再発を予防するためにもしっかりと日々の工夫をしてみましょう。
カンジダ外陰腟炎とセックスの関係は?
最後に、セックスについても触れておきましょう。
まず、カンジダ外陰腟炎は性感染症ではありませんが、セックスを通じてパートナー間でカンジダが移行し合う可能性はあります。例えば、女性がカンジダ外陰腟炎を患っている場合、セックスによって男性にもカンジダが増殖する可能性があるため注意が必要です。男性の場合には、陰茎の亀頭周囲が赤くなったり、白いカスが出て皮むけしたり、かゆみを伴ったりします。
また、カンジダ外陰腟炎を患っている女性がセックスをする場合、痛みや不快感を覚えることがあるでしょう。これは、外陰部と腟の炎症によるものです。
加えて、セックスの際の物理的刺激によって炎症が悪化してしまうと、カンジダの治療がうまく進まないこともあります。
特に、治療薬が腟内に入っている場合には、薬の治療効果を正しく発揮させるためにセックスを避ける必要があります。
以上から、パートナーとのコミュニケーションが大切になります。
カンジダ外陰腟炎の症状や治療、セックスに与える影響についてお互いに理解し、うまくコントロールしていきましょう。
参考文献
・日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023.
【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】