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代表入りへ一時帰国を諦めた。マーク・アボット、来日時の決意明かす。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
予定より延びた午前練習後にオンラインで取材対応(スクリーンショットは筆者撮影)。

 来日前からその座を狙っていた。

 今年初めてラグビー日本代表に入ったニュージーランド出身のマーク・アボットが、6月1日、代表合宿中の大分県内でオンライン取材に応じた。代表入りへの思いや、今夏までに予定されているブリティッシュ&アイリッシュライオンズ(B&Iライオンズ)戦への思いを語った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——初参加となる代表合宿は5月27日に本格始動しました。

「光栄な気持ち。私も2019年の(ワールドカップ日本大会での)日本代表がファンを歓喜させていたのを見ていた。そこの一員にいられて嬉しく思います」

——スタッフから期待されるのは。

「タイトファイブ(前5人のポジション)としてのフィジカリティが求められている。タイトファイブはコリジョン(衝突)に勝つことが重要。それを意識してやっています」

——今度の対戦相手がB&Iライオンズとアイルランド代表と大きな相手です。

「興奮し、わくわくしています。ライオンズとは数年前に戦ったことがありますが、身体が大きくフィジカリティが強かった。自分たちは速さを活かし戦っていきたい」

——ご自身が話した通り、4年前にはスーパ―ラグビーのハリケーンズの一員としてニュージーランドでB&Iライオンズと対戦しています。

「彼らは4つの国から構成される。今回、向こうは初戦です。彼らにはまだつながりはないと思います。自分たちはスピード、精度、団結力で勝っていける」

——いまの代表では少人数ごとにグループを作り、相互理解を促進しています。周囲を見て思うことは。

「経験のある選手——名前を挙げるとしたら、リーチ マイケルキャプテンら——が身体のケア、練習への準備をしっかりしていると感じました。身体を整えることで、日々強度が上がる練習への準備がしっかりとできる。その部分には感心しました」

——日本代表では、スクラムでもロックの役割が重要視される。長谷川慎コーチの指導について。

「素晴らしい。エナジーがあり、おこなっていることもクリア。何をしなければいけないかがわかり、迷いはありません。やるべきことにクリアにフォーカスできているおかげでやりやすいです。

(スクラムでは)各チーム違うやり方があると思います。ひとつずつの動作をゆっくり確認するチームもありますが、我々の場合はできるだけ自分たちのシステムを素早くセットアップするよう言われている」

 身長197センチ、体重111キロの31歳。2014年から4シーズン、ハリケーンズでスーパーラグビー(国際リーグ)へ挑み、2017年に初来日してコカ・コーラ入りした。ロックとして「コリジョン」のエリアで存在感を発揮。当時在籍して2016年に代表デビューを果たすラファエレ ティモシー(神戸製鋼)とともに、低迷するチームにあって気を吐いた。

 2019年には日本のサンウルブズの一員としてスーパーラグビーに挑み、国内の所属先を宗像サニックスに移した。当時のサンウルブズの強化に携わった元宗像サニックス部長兼監督の藤井雄一郎・現日本代表ナショナルチームディレクターは、当時からアボットのタフさを評価していた。

——いつから、なぜ代表入りを目指したか。

「初来日は2017年。ここで自分としての長期的なゴールとして(日本代表入りを)設定しました。そのゴールを置くことで、自分がどこへ行ってもモチベーションを保てると考えました」

——日本という国を知る前から、日本代表を目指していた。

「そうですね」

——では、それが叶いかけているいまはどんな気持ちか。

「ゴールまでは半分くらいしか達成していない。試合も出ていませんし。これから試合に出られるすると興奮しますし、光栄なことです」

——昨年の活動がなかった時期も、代表資格の取得を目指し、母国へ帰らなかった。

「難しい時期を過ごした。家族とも会えませんでした。周りの外国人選手が帰るのに触れるのも難しかった。ただ、妻が日本にいた。その時間を使って日本の試合のことを知ることができたのはよかったと思います」

——ラグビーワールドカップフランス大会の開催年には、33歳になっています。今後へはどんな目標を立てているか。

「その時点のことはそこまで考えていません。いまは、これから数か月のことを意識しています。33歳の時の身体の状態は、ワールドカップが近づくにつれわかってくると思います。まずはワンジョブ。目の前の仕事をして、目の前の目標を達成する」

——今季トップリーグでの出場は少なかったが。

「不幸にも最初のゲームで怪我をしました。そこから5週間。その後も膝を打って、腫らして、3週間(試合に)出られないということがありました。いまは回復し、私としては万全な状態。何も問題ありません」

 海外出身者で占める日本代表のロック勢にあっては、ワールドカップに4大会連続で出たトンプソン ルークが昨年、現役を引退。新たな黒子役の出現が待たれていた。

 異国での「ロックダウン」に耐えた中堅戦士が、ヘル ウヴェ(前ヤマハ)、ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ)、ジェームズ・ムーア(宗像サニックス)といった日本大会組との争いに名乗りを挙げる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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