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ノルウェー銀行、石油・ガス株への投資停止を財務省に提案

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
化石燃料への依存を減らす議論が続くノルウェー(写真:ロイター/アフロ)

15日、ノルウェー中央銀行(Norges Bank)は、3000億ノルウェークローネに相当する石油・ガス関連株式の売却をノルウェー財務省に提案した。

同銀行は財務省に代わってノルウェーの石油収入の長期的運用を支える政府年金基金(石油基金)を運用。基金の資金は国外へ投資されている。

このニュースは世界中で話題となり、ノルウェー国内では環境派らが「気候変動対策のためにも、ノルウェーが石油・ガス事業から撤退するべきだというサインだ」、「化石燃料依存の時代は終わる」として歓喜した。

しかし、エギル・マトセン副総裁は、現地メディアを通じて、この提案は「気候変動対策や環境のためではない」と否定。

石油価格変動に影響を受けやすい現状はノルウェー政府の弱点となっており、経済的なリスクを減らすためだと強調した。

石油分析家のティーナ・サルトヴェット氏は、国営放送局NRKの夕方のニュース番組でこう語る。

「中央銀行は政治的な機関ではないので、環境問題を考慮しての提案ではないでしょう。私たちは石油価格の下落に影響され、傷つきやすい状況にいます。時代は変わりつつあり、石油には対抗馬もでてきました。石油は交通機関に使われますが、ノルウェーは電気自動車EVへと移行しつつあります。環境のためではないと銀行が主張しても、世界に送るシグナルは大きいでしょう」。

投資停止は中央銀行からの「提案」であり、国会がどう受け入れるかはまだ明らかとなっていない。

今週はノルウェーでは「石油」という言葉が連日報道されている。

現在は、オスロ地方裁判所で一部の市民と環境団体が、石油開発を進める政府は憲法に違反しているとして裁判が進行中

ノルウェーのバレンツ海にあるGoliat油田では、開発現場で次々と問題が発覚している。安全面に問題ありと指摘されながらも放置され、都合のいい数字が国会に報告されていたなどとして、石油・エネルギー大臣が野党に厳しく責任を追及されている。

中央銀行が環境のためではないと否定しても、この日のニュースは環境派らを喜ばせるものとなった。

参照

中央銀行から財務省への提案の手紙

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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