ノート(111) 検察側から新たに開示された関係者の供述調書を読んで気づいた点
~整理編(21)
勾留87日目
新たな証拠開示
この日は、検察側から新たに開示された検察関係者の供述調書などを読み込み、分析する作業に没頭した。
公判前整理手続の過程で検察側に開示を請求し、開示済み分のコピーが弁護人から差し入れられていたからだ。いずれも検察側が裁判の証拠として使おうとせずに「不提出」とし、手のうちで抱えていたものばかりだった。
検察は基本的に起訴した事実や被告人にマイナスとなる情状を立証する証拠だけを裁判所に提出しようとするので、公判前整理手続の中で手持ち証拠の開示を得ないと、被告人にプラスとなる事実は表に出てこない。
たとえ自白事件であっても、情状面を争って公判前整理手続が行われれば、そうした証拠を検討する機会が生まれる。これこそが弁護団の狙いだった。
新たに開示された検察関係者の供述調書などは、次のようなものだった。
(1) 國井弘樹検事の供述調書:8通
(2) 林谷浩二検事の供述調書:2通
(3) 白井智之検事の供述調書:5通
(4) 塚部貴子検事の供述調書:5通
(5) 海津祐司検事の供述調書:2通
(6) 遠藤裕介検事の供述調書:2通
(7) 谷岡賀美公判部長の供述調書:1通
(8) 郵便不正事件や厚労省虚偽証明書事件に対する捜査の前年度に特捜部で財政経済班の主任を務めていた検事の電話聴取報告書:1通
念のため、ここで厚労省事件に関する彼らの役回りを改めて振り返っておくと、次のようなものとなる。
(國井検事):厚労省事件の捜査段階で実行犯である厚労省の元担当係長やその上司である元担当課長らの取調べを担当
(林谷検事):捜査段階でその更に上司である元部長らの取調べを担当
(白井検事):特別公判室長で起訴後の裁判を担当した公判部の主任検事
(塚部検事):捜査段階で郵便不正関係者らの取調べを担当し、起訴後は裁判を担当
(海津検事):捜査段階で厚労省や郵政との折衝などを行う総括を担当し、起訴後は裁判を担当
(遠藤検事):捜査段階で元課長や元係長らの取調べを担当し、起訴後は裁判を担当
(谷岡部長):厚労省事件の裁判当時の公判部長
(1)から(4)の関係者については、検察側が公判で証拠として使う供述調書を選定して弁護側に開示し、裁判所にも取調べを請求済みだった。例えば國井君だと、公判提出分が7通あったから、今回の不提出分と合わせ、合計15通の供述調書にサインしたということが分かる。
(1)から(4)の関係者の不提出分の供述調書を読むと、提出分と重複しているほか、枝葉にわたっていたり、大坪さんらの隠ぺい工作や口止め状況などに重点を置いた内容となっていた。大坪さんらの有罪を立証するためには必要でも、確かに僕の裁判には不要なものだと思われた。
組織の論理と自己保身
ただ、例えば塚部さんの供述調書の中には、次のような驚くべき記載もあった。厚労省事件の公判対応に関する部分だ。
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