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生き残りをかけた元世界王者同士のサバイバル

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/SHOWTIME

 昨年4月、売り出し中の若手選手、ジャロン・エニスに6ラウンドKOで敗れた元IBFスーパーライト級王者のセルゲイ・リピネッツ。その試合内容から、峠を越えたと見る関係者は多かった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210413-00232143

 しかし、ガザフスタン出身の33歳は、オマール・フィゲロア・ジュニア(32)との元世界王者対決を制し、WBCスーパーライト級タイトル挑戦者決定戦に勝利した。それもTKO勝ちで。

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 試合開始直後から、両者はクロスレンジで激しく打ち合う。まさに、元世界王者同士の意地のぶつかり合いだ。

 2ラウンドに入ると、リピネッツの正確性が増す。サウスポーのフィゲロアよりも的確にヒットを重ねた。

 そして同ラウンド1分45秒、右フックをクリーンヒットしてダウンを奪う。

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 その後も削り合いが続いたが、リピネッツの有効打が優り、試合はワンサイドになっていく。フィゲロアは苦し紛れに何度かスイッチを試みたが、ペースを奪うことは叶わなかった。

 結局、8ラウンド終了時にフィゲロアのコーナーが棄権を申し入れ試合終了。リピネッツは17勝(13KO)2敗1分、フィゲロアは28勝(19KO)3敗1分となった。

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 勝者は言った。

 「フィゲロアはいい選手でした。あの闘志には脱帽ですよ。とにかく出てきましたね。でも、彼のパンチの躱し方はトレーナーと共に対策を練っていたんです。そのうえで、こちらも攻撃する策が上手くハマりました。140パウンドは自分の階級。私は、戻ってきたんですよ」

 3連敗となったフィゲロアは、引退をアナウンスした。

 「自分に心から失望した。トレーニングキャンプでは、いい練習をこなしてきたんだ。でも、もう体が限界だ。27年間ボクシングをやってきて、十分だと感じる。ファンの皆さん、期待に応えられず、ごめんなさい。これで終わりにします。ボクシングをやって多くの幸せな時間が持てました」

 生き残ったリピネッツと、ラストマッチで全てを出し尽くしたフィゲロア。派手な興行ではなかったが、ボクシングとは何かを見せつけられたかのような一戦だった。両者に拍手を送りたい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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