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元統一ヘビー級チャンピオン、マイク・タイソンvs.YouTuberのジェイク・ポール

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 元WBA/WBC/IBF統一ヘビー級チャンピオンのマイク・タイソン(58)と、YouTuberのジェイク・ポール(27)のファイトが11月15日に実現する模様だ。当初、同ファイトは7月20日に予定されていたが、5月にタイソンの潰瘍の再発判明し、延期となった。その折、「タイソンの身体に関して医療専門家を交えた会議を行い、数週間は最小限に体を動かす程度でコンディションを整え、その後、制限無しのトレーニングに戻ることが推奨された」と発表された。

写真:REX/アフロ

 だが、<制限無しのトレーニング>と言っても、58歳の彼がそれほど動ける筈もない。筆者はイベンダー・ホリフィールドとの2戦、レノックス・ルイスとの試合も現場に赴き、記者席から見守ったが、鉄の男は、全盛期とは比較にならない程、錆び付いていた。

 2005年6月11日のラストマッチで、無名のホワイトヘビーに一方的に殴られる様には心を痛めた。7ラウンド開始前にセコンドが棄権し、デビュー以来6つ目の黒星を喫したタイソンは、単なる“元チャンピオン”だった。あれ以来、19年以上公式戦のリングには上がっていない。

写真:ロイター/アフロ

 が、今回の一戦が莫大な金を生み、注目されるのは間違いない。NFL、ダラス・カウボーイズのホームであるテキサス州アーリントンのAT&Tスタディアムで催され、Netflixでライブ中継される。

 CBSはタイソンについて以下のように語る「1992年に強姦罪で有罪判決を受けて3年間の懲役刑を経験するなど、人生には苦難があったが、タイソンは過去10年間で世間のイメージを回復してきた」と。

写真:REX/アフロ

YouTubeで財を成したポールはインフルエンサーとして確固たる地位を築き、俳優、ミッキー・ロークのようにスターとしてボクシング界に参入した。どうやら、競技の魅力を感じたようで、10勝(7KO)1敗の戦績で、今回の試合を迎える。しかし、元NBAスターのネイト・ロビンソンや元UFCスターのタイロン・ウッドリー、アンダーソン・シウバ、ネイト・ディアスとの対戦には合意しても、生粋のボクサーとの試合は避けてきた。

 そんな状態ながらもPPVを売り、巨額のファイトマネーを稼ぐポールを苦々しく感じるのはタイソンだけではない。「ボクシングを舐めるな!」というタイソンの胸中は察する。だが、58歳のタイソンに、かつての姿を期待するのはあまりにも酷だ。

写真:Action Images/アフロ

 AT&Tスタディアムでは2010年2月にNBAオールスターゲームが行われ、108,713人ものファンを呼んだ会場だ。そんな場所で、無残に殴られるタイソンなど見たくない。果たして、どんな結末が待ち受けているのか。 

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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