Yahoo!ニュース

25度目のKOで、デビューから27連勝を飾った期待のウエルター級

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 第6ラウンド2分6秒、サウスポースタンスから繰り出したジャロン・エニスの右アッパーがセルゲイ・リピネッツの右グローブを撥ね上げる。間髪を容れずに右フックがクリーンヒット。そして左アッパーが顎を捉えると元IBFスーパーライト級王者は腰からキャンバスに崩れ落ちた。

 ダメージを考慮したレフェリーが試合終了を告げ、エニスはデビュー以来27個目の白星をKOで飾った。正式なノックアウトタイムは、同ラウンド2分11秒。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 同ファイトを放送したSHOWTIMEは、勝者を「ウエルター級ライジングスター」と称して売り出し中だが、確かにセンセーショナルなKO劇だった。

 1階級下のスーパーライトでIBFのベルトを巻いた経験のあるリピネッツだが、ファーストラウンドから劣勢を余儀なくされた。

 試合前に語っていたように、接近戦での打ち合いを挑んだが、フットワークも連打のスピードも、かなりの差があり、9歳下のエニスからペースを奪えない。

 エニスの時折見せるスイッチも、リピネッツを困惑させた。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 5回までの採点は、2名のジャッジが49-45、残る一人が50-44とエニスを支持していた。

 「俺は毎試合、自分のパフォーマンスを深く反省する。今の目標は、常に成長し、より鋭く、速く、強いファイターになること。そして世界チャンピオンになることだ。今回はトップ選手と戦えて幸せだったよ。

 2021年末か、来年の頭には世界王者になっていたいね。その鍵となるのは、忍耐だろうな」

 エニスは試合後に、そう語った。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 32歳の元IBF王者は、これで16勝(12KO)2敗1分けとなった。無数のパンチを浴びて疲弊しながらも、闘志だけは見せた。

 4ラウンド1分24秒にエニスの左アッパーを顎に喰らったリピネッツは、プロ生活2度目のダウンを喫した。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 エニスは結んだ。

 「リピネッツはベストコンディションに仕上げて来たね。驚くほどだった。打たれ強かったよね。だからペース配分が上手くできなかった。

 今夜、俺は一つ階段を上れたと思う。とにかく、上を目指してやっていくよ」

 SHOWTIMEでメインを張り、圧勝したエニスには、近い将来、世界タイトルマッチが用意されるだろう。数々の名チャンピオンが誕生したフィラデルフィアの歴史に、その名を刻むことが出来るか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事