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あなたの水道水は大丈夫?PFASの健康リスクとその対策法

TOUYA化学系研究者

最近、ニュースなどで「PFAS(ピーファス)」という言葉がよく聞かれるようになりました。PFASとは一体何であり、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか?この記事では、PFASの基本的な情報とそのリスクについて解説します。

PFASとは?

PFASは、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の略称です。これは、有機フッ素化合物の総称で、少なくとも4,700種類以上の物質があると言われています。PFASは非常に安定した性質を持ち、耐熱性や撥水性に優れているため、フライパンの焦げ付き防止加工、衣類の撥水加工、食品包装、泡消火剤や半導体など、日常生活のさまざまな製品に使用されています。

PFASの健康リスク

PFASは自然環境で分解されにくく、長期間にわたって残存するため「永遠の化学物質(forever chemicals)」とも呼ばれています。PFASは環境中に広がりやすく、人体にも蓄積されやすいため問題視されています。PFASの中でも、特に有害性が高いとされるのが、ペルフルオロオクタンスルホン酸「PFOS(ピーフォス)」とペルフルオロオクタン酸「PFOA(ピーフォア)」、ペルフルオロヘキサンスルホン酸「PFHxS(ピーエフヘクスエス)」です。この三つの化学物質は、国際的に規制されており、日本でもすでに輸入や製造が禁止されています。

高濃度のPFASに長期間ばく露されることで、腎臓がんや精巣がん、肝機能障害、脂質異常、免疫機能の低下などの健康リスクが指摘されています。国際がん研究機関(IARC)はPFOAについて「発がん性がある」とし、PFOSについては「発がん性がある可能性がある」と発表しています。しかし、PFASが人体にどの程度の量や濃度でどのような影響を及ぼすかについて、詳しくはまだ分かっていないのが現状です。

PFASの基準値

PFOSやPFOAを最も多く取り込むとされる飲料水に関して、各国は基準値を設定しています。日本では、PFOSとPFOAの合計が「水1リットルあたり50ナノグラム(暫定目標値)」とされており、この量を毎日摂取しても健康に影響がないと考えられています。一方、ドイツではPFOS・PFOAなどの合計が1リットルあたり20ナノグラム(2028年から)、アメリカではPFOS・PFOAそれぞれについて1リットルあたり4ナノグラムという、日本に比べてより厳格な基準が設けられています。(1ナノグラム=100億分の1グラム)

PFASは体に残り続ける?

PFOSやPFOAは体内で分解されにくく、摂取が続けば体内に蓄積しますが、新たな摂取が止まると体内の濃度は時間をかけて減少します。例えば、欧州食品安全機関によると、体内に取り込まれたPFOSの濃度が半分に減るまでには約3.1~7.4年、PFOAの場合は約2.3~8.5年かかるとされています。このため、摂取を減らすことで、徐々に体内の濃度を低下させることが可能です。(参考:東京都保健医療局 健康影響

水道水に含まれるPFAS濃度の確認方法

近年、いくつかの地域で水道水や河川水、地下水から国の暫定基準を超える濃度が検出され、動揺が広がっています。一部の地方自治体では、水道水の水質に関するデータを公開していますので、PFAS濃度を確認したい場合は、各自治体の水道局のウェブサイトを参照してみましょう。

まとめ:あなたの水道水は大丈夫?PFASの健康リスクとその対策法

PFASは、多くの製品に利用される非常に便利な化学物質ですが、その一方で、健康や環境へのリスクが懸念されています。今後の規制強化がどのように進展するかに注目が集まる中、すべてのPFASを一律に規制するのではなく、有害性が確認された物質に限定して慎重に規制を行うことが求められます。この問題については、引き続き動向を注視し、皆さんにお伝えしていきたいと思います!

化学系研究者

東京工業大学大学院の修士課程を卒業後、化学メーカーの研究者として従事。研究成果がメディアに取り上げられた経験有り。科学やAIを活用したお役立ち情報を書いていきます!

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