三田佳子さんの次男、高橋祐也君保釈騒動。接見したその日に渋谷警察署前で見た光景
女優・三田佳子さんの次男、高橋祐也君が保釈されることになり、報道がなされている。これがそんなニュースなのかと思ったが、でも一部報道には疑問を感じるのでここで書いておこう。というのも実は私は10月5日、まさにテレビや新聞が保釈時の祐也君を撮影しようとして渋谷警察署前に群がっていたその日に祐也君に接見していたからだ。渋谷警察署前は今、ちょうど工事中で、陸橋へあがる階段がふさがれていたりしているのだが、その一角にカメラマンがひしめいているという異様な光景だった。
逮捕後の送検の時も各社が映像を押さえようと必死になったのだが、祐也君の顔が写っていたりいなかったり差が出たので、今回は各社が必死になっているらしい。
その保釈決定の話を6日に複数のスポーツ紙や全国紙が報じ、『女性自身』なども7日夜にネットで速報を流しているのだが、例えば『女性自身』は、5日に保釈がなされなかったのは三田さんが反対して手続きがなされなかったからでは…と報じている。
http://news.livedoor.com/article/detail/15413313/
高橋祐也被告の保釈決定も母・三田佳子は手を差し伸べず
それはないでしょう。なぜならばその5日、渋谷署前にカメラマンがひしめいていた時に、私は祐也君の父親と一緒に接見しており、別に保釈に家族が反対している事実はないからだ。単純に手続きがその日は間に合わなかっただけだろうが、逮捕時に三田さんが出したコメントで「親としてはもう力及ばずの心境です」と、やや突き放した言い方をしたことから憶測したのだろう。
ついでに書いておくと、『女性自身』が昨年12月5日号で、祐也君に1日15万円の小遣いが渡され、親のカードは使い放題と本人が豪語していたかのような記述があって、ワイドショーがそれを何度も引用していたが、祐也君本人は「そんなこと言ったこともないし、そんな事実もない」と言っている。私はその記事が出た後も本人に確かめたし、今回ワイドショーがやたらそれを引用しているので、もう一度、接見の時に確認したが、本人は否定していた。本人が言うことをお前は全部信じるのかと突っ込む人もいるかもしれないが、でも親のカードを使い放題というのは、幾ら何でも現実離れしていると思わないだろうか。
週刊誌などの記事に出てくる匿名コメントが裏の取れてないことはよくあるのだが、問題はそれをそのままテレビが横並びで引用していることだ。テレビの影響力の大きさは週刊誌の比ではない。そこを、制作している側はもう少し考えてほしい。
この間の、最初の逮捕時に小遣いが月50万円で3回目の時は70万円といった、さんざん繰り返された話も、当事者がそんな事実はないと言っているのに、ワイドショーが表を作ってパネルで映すというのも、どうなのだろうか。いろいろな番組で繰り返しそういう報道がなされたために、信じてしまっている人が結構いる。
確かに祐也君に両親の援助がなされていたのは事実で、それを批判するのは自由だが、間違った事実を何度も流すのはまずいだろう。そもそも三田さんは、毎月一定の額を与えるというやり方はしていない、と会見でも言明している。
そもそも今回の逮捕報道で一番気になるのは、薬物依存について、報道する側がほとんど理解しようとしていないことだ。
例えば9月12日のフジテレビ「バイキング」、祐也君が精神科に通院していたことを取り上げて、「いや、病院でなくて警察でしょ」と声高に言い立てていたが、これ基本的に間違いではないだろうか。いまや薬物依存については、「処罰だけではだめで治療を」という流れに法務省なども舵を切っているのに、ゲストの弁護士含めてスタジオ全体が「病院より通報を」と言い立てるのには、観ていてため息が出た。
実際には2016年6月に「刑の一部執行猶予」制度が導入され、薬物依存については、治療に従事させるためにはどうしたらよいかという方向に大きな転換がなされつつある。アメリカなどに比べて20年遅れていると言われる日本の薬物対策も、ようやく「刑務所にぶちこんでおけ」という原始的な段階から脱しようとし始めているのだ。
それから2年たって、その制度がどんなふうに運用され、再犯防止という目的は達成されているのかという検証も行われている。現実はなかなか思うような効果は出てないようなのだが、それは、制度は作ったが、その治療の受け皿が整備されていないからだ。
10月9日発売の月刊『創』11月号で、高橋祐也君の薬物事件について特集し、本人の面会室でのインタビューも載せている。そして同時に、薬物依存対策の研究では第一人者と言ってよい石塚伸一・龍谷大学法学部教授兼犯罪学研究センター長のインタビューも掲載した。祐也君の約10年前の逮捕の時は、弁護側がアメリカのドラッグコートの例を法廷で詳しく紹介したのだが、そのドラッグコートを日本に紹介した先駆者が石塚さんだ。今はドラッグコートをめぐる議論自体が見なおされていると石塚さんは指摘するのだが、今回、その石塚さんの『創』11月号のインタビューを下記に公開した。やや専門的な話だが、薬物依存について報道する人たちにぜひ読んでほしいと思うからだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181008-00010001-tsukuru-soci
ついでに言っておくと、『女性自身』の前述の記事を始め、今回、祐也君は実刑確実という報道がなされており、実は当初は私自身もそう思っていたのだが、石塚さん始め専門家の話を聞くと、そう単純ではないという。
祐也君は今回の逮捕前、約10年間、薬物に手を出していなかったのだが、そのことは今回の量刑を考えるうえで大事な要素になるというのだ。また前述したように、司法全体に「刑の一部執行猶予」などに見られる「処罰から治療へ」という考えが浸透しつつあり、そのことも今回の裁判には大きな影響を及ぼすのではという。
今回のケースで裁判所がどう判断するかは実はかなり微妙だというのだ。逆に言えば、こんなふうに社会的に話題になっている事件では、その判断がある種の社会的メッセージにもなるわけで、今回の裁判所の判断は注目すべきなのだ。
9月11日の逮捕後、祐也君には3回、接見した。1回で面会時間は15分だから詳しい話は聞けないが、彼にはこの春にも会って、詳しい話を聞いているから、今回彼が薬物に再び手を出してしまった背景はある程度理解しているつもりだ。
妻子との別居により、一人暮らしになったこと、そこへこの間報じられている新たな女性との出会いがあり、その女性との揉め事が昨年の『女性自身』の記事にもなったし、今回の逮捕のきっかけになったことなど、祐也君をめぐる環境の変化が背景にあり、そこへ薬物が入手可能な状況ができてしまったというわけだ。そのへんの事情については法廷で語られるはずなので詳細を書くのは控えよう。
祐也君は昨年、再び覚せい剤に手を出してしまったのだが、それがどんな破滅的な結果を招くかは、理性的に考えれば明らかだ。それは本人も理解していたようで、使用を続けながら、途中で何度もやめようと煩悶してきたという。今回、実際にその破滅の展開になってしまったわけだが、かわいそうなのは8歳になるという彼の子どもだ。最初に接見した時に、祐也君に「子どもがかわいそうすぎるだろう」と言った。彼も、しばらく子どもに会うことができないでいるのが寂しいと言っていた。
考えてみれば祐也君が最初に薬物で逮捕されたのは18歳の高校生の時だった。前回、ヤフーニュースに「ナイーブな少年だった」と書いた祐也君とのつきあいももう20年になる。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20180913-00096644/
三田佳子さん次男の高橋祐也君に20年間つきあってきた者として今回の逮捕に感じた痛み
前回書いたこの記事は多くの人に読まれ、いろいろな人から情報提供もあった。なかにはかつての薬物仲間で今は更生しているという人からの情報も寄せられ、思わず携帯に届いたそのメッセージに電車で見入って、駅を乗り過ごしてしまった(苦笑)。
今回、祐也君に接見する過程で、彼の奥さんにも初めて会ったし、10月5日の接見時にちょっと感動したのは、彼の高校時代の女性3人の友人が面会に来ていたことだ。私と祐也君の父親と、あと1人面会できるので(面会は1日1組で1回に3人までだ)、そのうちの1人には一緒に面会してもらった。
その高校時代の友人たちももう30代後半なのだが、いまでもそんなふうに励ましに来る関係が続いているのだった。祐也君の通っていた高校は少人数で、同級生のつきあいがいまでも続いているのだという。祐也君が高校3年の1月に逮捕された後、3月の卒業の時に、クラスメートたちは、そんな祐也君をがんばってほしいと送別パーティーに招待。祐也君はカナダからわざわざ帰国したのだった。
祐也君と20年間つきあってきて、彼の周囲にとんでもない人たちも含めて、いろいろな人が関わってきたのを見聞きしてきたが、5日に接見に来ていたかつてのクラスメートの女性たちにはホッとした。今回の祐也君の逮捕には、彼が38歳という年齢であることもあって、更生は大変だろう、これがラストチャンスかもしれないと、いささか重たい気持ちになったが、祐也君の更生を応援するそんな友人たちが存在するとしたら、またもう一度やり直すのも可能だと思えたのだ。
祐也君が三田さんの息子でなかったら、今回の逮捕もこんなに大きく報道されることはなかったろう。せっかくそうやって大きな報道をしているのだから、報道する側はもう少しその報道の社会的意義を考えてほしい。
有名女優の家族の不幸を他人事として眺めるだけでなく、これを機に、薬物依存というこの社会を蝕む深刻な問題に、社会全体がもう少し目を向けてほしい。マスコミもぜひそういう思いで報道に取り組んでほしいと思うのだ。
『創』11月号の詳細は下記をご覧いただきたい。