気象台の地図記号は風速計 シンボルマークは風速計から地球が抱える自然現象へ
気象台の地図記号
気象台や測候所の地図記号は、タイトル画像にあるように、アルファベットのTに似たマークです。
これは、昔、気象台や測候所で風の速さをはかるために使われていた「ロビンソン風速計」を横から見た形を図案化したものです。
国土地理院のウェブサイトには、北海道の帯広測候所付近の地図が例として表示されています(図1)。
また、中央気象台(気象庁の前身)の蔵書印に横から見たロビンソン風速計のイラストが使われていました(図2)。
また、ロビンソン風速計を真上から見た形を図案化したものが、備品のヘルメットなどにつけられました(図3)。
ロビンソン風速計
中央気象台が最初に使っていた風速計がロビンソン風速計です(図4)。
鉛直に支えた回転軸の上に、この軸を中心に水平面上にアームを延ばし、先端に等角度で半球型のカップ(風杯)を取り付けたもので、ロビンソン風速計は4方向に配置していることから、4杯式風速計とも呼ばれます。
1回転するたびに信号がカウンターに送られ、歯車が進む方式ですので、観測員は決められた時刻の10分前に風速計の目盛りを読んでから観測を始め、雲や視程などの目視観測や気圧や温度などの機器観測を10分間で行い、風速計の目盛りを読んで観測を終了していました。
そして、最初に読んだ目盛りと最後に読んだ目盛りから、10分間に空気の動いた距離(風程)を求め、平均風速を計算していました。
ただ、戦後になり、ロビンソン風速計では、風速の変動がある時に実際の風速より大きい値を観測してしまうことが分かり、風杯を120度毎に3個配置し、アームを少し短くした3杯式風速計での観測に切り替わっています(図5)。
また、流線型の胴体の先端に4枚程度の羽を持つプロペラ(風車)を、後部に垂直尾翼をつけた風車型風向風速計の登場により、風向計を別に用意する必要がなくなったことから、3杯式風速計も使われなくなってきました(図6)。
筆者が気象庁に勤め始めてまもない、40年ほど前には、風車型風向風速計が主力で、風杯型(3杯)風速計はほとんど使われなくなり、ロビンソン風速計は全く使われていませんでした。
しかし、シンボルマークとしては、ロビンソン風速計を図案化したものが使われていました。
その風車型風向風速計も、令和3年(2021年)からは超音波式風向風速計への置き換えが進んでいます(図7)。
超音波式風向風速計は、音波が空気中を伝播する時、その速度が風速によって変化することを利用して風向や風速を求める装置で、周囲の雑音と区別するため100キロヘルツ程度の超音波が使われています。
気象観測のシンボルは風速計としても、その風速計はどんどん進化し、新しいものに変わっています。
気象庁のロゴマーク
気象庁は、平成13年(2001年)1月6日に中央省庁の再編に伴い、国土交通省の外局として発足したことを契機に、ロゴマークとキャッチコピーを作っています。
ロゴマークは、中心の球は大気圏に包まれる地球を表し、表面に地球を周回する大気の流れを描いています(図8)。
そして、全体としては芽吹き、海の波など地球が抱える自然現象をも表現するものとしています。
さらに、このロゴマークには気象庁の英語名である「Japan Meteorological Agency」の頭文字「J」「M」「A(a)」を模様の中にあしらっています。
また、キャッチコピーは、「守ります 人と自然とこの地球」です。
タイトル画像、図3の出典:筆者作成。
図1の出典:国土地理院ウェブサイトhttps://www.gsi.go.jp/KIDS/map-sign-tizukigou-h05-01-07kisyoudai.htm
図2の出典:「海上保安庁海事検査部(昭和27年(1952年))、ルース台風総合報告書」に押されていた蔵書印。
図4の出典:三浦栄五郎(昭和19年(1944年))、測候観測法講和(改正7版)、地人書館。
図5、図6の出典:気象庁(平成10年(1998年))、気象観測の手引き。
図7、図8の出典:気象庁ホームページ。