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白キャン解散直前インタビュー:浜辺ゆりな「惜しまれたいし、ずっと心に残るライヴにしたいし」

宗像明将音楽評論家
浜辺ゆりな(株式会社PLAYYTE提供)

7人組アイドル・グループの真っ白なキャンバス(通称:白キャン)が、2024年11月4日に幕張メッセ幕張イベントホールで解散ライヴ「明日も変わらない1日を」を開催し、7年間の活動に終止符を打つ。

解散ライヴに向けての7人の個別インタビューの3人目は浜辺ゆりな。コロナ禍の2020年に新メンバーとして加入し、その天真爛漫なキャラクターは白キャンに新風を吹き込んだ。その一方で、浜辺ゆりなは「何回も逃げたかった」とも振り返る。浜辺ゆりなの白キャンでの4年間について聞いた。

つらかったことも脳が勝手に「楽しかったな」にしちゃう

――解散が決まってから、浜辺さんの中でライヴや特典会で変わったところはありますか?

浜辺ゆりな ライヴは、今までは新しい人に向けてやってたところがあった気がするんですよ。対バンも、今来てくれてる人を楽しませるのも大事だし、新しく来てくれる人にも白キャンのことをもっと好きになってもらいたいって思いでライヴをしてたけど、最近は今来てくれてる人たちと過ごす時間を大事にしようという気持ちが強くなってきたかなって思います。

――浜辺さんは、ライヴは休まないって宣言してたじゃないですか。みんなから「ポジティヴで元気な浜辺ゆりな」というイメージで見られるのが、しんどい時期はなかったんですか?

浜辺ゆりな はい、全然しんどいですよ。毎日なんか超悩むし、基本ポジティヴだけど、めっちゃ毎日悩むし、けっこうネガティヴな気持ちもめちゃくちゃあるけど、引きずるのが本当に大っ嫌いで、「ずっと下を向いてても変わらないな」と思っちゃうから、寝て忘れる(笑)。忘れて前を向きます。それのおかげで休んでないのかな、って思います。

――自分自身に負荷をかけてきて、よく折れなかったですよね。

浜辺ゆりな 学生時代ずっとネガティヴでマイナス思考すぎたけど、ポジティヴな子にすごい憧れてて、そこから無理やり変えました。

――そうやって自分の意志で天真爛漫になった子が、2020年に白キャンに新メンバーとして入ってきてくれたことで、白キャンは続くことができたんですよ。

浜辺ゆりな そんなこと言ってくれるの、宗像さんぐらいですよ(笑)。

――白キャンでの活動を振り返ってみて、楽しかった思い出、嬉しかった思い出はあります?

浜辺ゆりな いっぱいあるけど、やっぱり初めてコールが聞けたとき(2022年7月9日の『真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏』)はすごい嬉しかったです。えまむぎ(鈴木えま、麦田ひかる)が戻ってきて、7人で初めて「白キャンハウス」(2021年9月1日~3日『7人の心を一つに!第1回 白キャンハウス~3日間連続生配信~』)で3日間配信して仲良くなれたときも、「好きだった6人と一緒にいる!」ってめっちゃ嬉しかったです。あとはTDCホールのライヴ(2022年11月18日TOKYO DOME CITY HALL『希望、挫折、驚嘆、絶望、感謝 それが、私。』)も、360度に人がいるのが昔から憧れてた光景だったから嬉しかったです。全部の「初めて」にワクワクしちゃうから、最初のライヴ(2020年7月11日『真っ白なキャンバス新体制お披露目ライブ「BRAND New PALETTE」』)が印象に残ってるかな。全部のスタートだったし、「これからどんなことがあるんだろう?」みたいな想像できないところに入って。生誕祭もワクワクしたし、全部ワクワクしてるな(笑)。楽しい思い出いっぱい。毎日楽しかった、って思っちゃいます。けっこうつらいことも、「楽しかったな」って脳が勝手にしちゃうから(笑)。

――その脳の変換機能はみんな欲しがりますよ。

浜辺ゆりな なんなら、白キャンの合宿(2022年11月7日~9日『真っ白なキャンバス 合宿企画2022 〜Be the SUPER IDOL〜』)ですら「楽しかったな」と思っちゃう(笑)。嫌だった1万字作文をして、ビラ配りをして、それも楽しかったなと思っちゃうから、全部楽しかったです。白キャンがなかったら、こんないろんな感情になってないし、その感情全部が楽しかったし、思い出だなって思ってます。

2024年10月14日なんばhatch公演の浜辺ゆりな(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の浜辺ゆりな(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

ずっと2019年までの白キャンが羨ましいのかもしれない

――逆に苦しかった思い出はありますか?

浜辺ゆりな やっぱりずっと苦しいのは、「昔の白キャンがいいな」って思っちゃう自分がいるところです。

――それはなぜ?

浜辺ゆりな ずっと2019年までの白キャンが羨ましいのかもしれない。「自分もそこにいたかったな」みたいな(笑)。

――浜辺さんは、そういうことはこれまで言ってこなかったですよね。

浜辺ゆりな デビューして新しいグループとして初期メンがたどってきた道を知らないまま活動してるのが苦しいところがあります。セットリストでもわかるんですよ、ファンの人が沸く曲って昔の曲ばっかりで。白キャンのことを知ってる人の中で、ゆりなのことを知ってる人ってあんまりいないなと思ってて。

――そんなことはないですよ。

浜辺ゆりな だから、それがやっぱり羨ましくて、ちょっと苦しいところがあって、そっちのほうが圧倒的につらい(笑)。どうしようもできないから。

――昔と比べられるのがしんどかったと。

浜辺ゆりな はい、しんどかったな(笑)。真っ白なキャンバスっていうグループと一緒に浜辺ゆりなが上ってきたわけじゃなくて、真っ白なキャンバスっていうグループがあって、そこにゆりなが乗っかってるから、自分の力でここまで来てない、っていう気持ちがあって。

――でも、新メンバーってそういうものじゃないですか。

浜辺ゆりな そう、新メンってそういうものなんですよ。だから、この活動をしてて、すごいそれを感じて。全然誰も悪くないし、自分が勝手に苦しんでたし、この気持ちはわかってくれる人が誰もいないんですよ。ファンの人にもわかってもらえないかも、って思っちゃう(笑)。「新メンが自分じゃなかったら、もっと変わってたかな」と思っちゃいます。

――浜辺さんはそう言うけど、白キャンに浜辺さんみたいな明るい子が入ってきてくれて、本当に良かったと今でも思いますよ。

浜辺ゆりな そう言ってくれる人がいて嬉しい(笑)。自分は性格がこんなに明るいから、「今までの売れてきた白キャンを壊してしまわないか」みたいな心配がずっとあったんです。

――その葛藤はいつ頃収まったんですか?

浜辺ゆりな うーん、やっぱ7人の活動時間が増えてくと、一緒に白キャンを作ってるな、っていう感覚が出てきました。

――そう考えると、浜辺さんの4年間って、実は悩んでいた4年間でもあったんですね。

浜辺ゆりな けっこう毎日、活動のことを悩みまくってましたね。

――悩むことも楽しいこともいっぱいあったし、心の動きが忙しかった4年間だったんじゃないですか?

浜辺ゆりな 忙しかったかも(笑)。いろんな感情になってました。

――それが終わっちゃったらどうなっちゃうんでしょうね?

浜辺ゆりな ですよね、また新しい楽しいことを見つけます(笑)。

2024年10月14日なんばhatch公演の浜辺ゆりな(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の浜辺ゆりな(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

頑張ってきた自分を認めたい

――解散ライヴが幕張イベントホールと聞いたときはどう思いましたか?

浜辺ゆりな 「幕張、本当に? 本当にやるの?」みたいな(笑)。どうしたらいいんだろう、っていう不安もあるけど、「最後ぐらい楽しんで終わりたいな」みたいな(笑)。

――幕張イベントホールのステージに立ったら、どんな気持ちになると思います?

浜辺ゆりな うわー、人がいっぱいいるかによるかもしれないです。

――現実的ですね。

浜辺ゆりな けど、「7人でパフォーマンスしてきたけど、これが最後なんだな」と思ったら、今は想像できないけど、グッてくると思います。今までけっこう複雑な気持ちで活動してきちゃって、しかも最近は、終わりになるにつれて、みんな昔の話が多いじゃないですか。今までやってきたライヴハウスも回るけど(2024年9月24日~10月23日の『真っ白なキャンバス リフレインツアー 「白事記」』)、あのフライヤー写真、ゆりな1枚も写ってないんですよ(笑)。そういうのでちょっとつらくなっちゃったりもするんですけど、でもそこだけが白キャンじゃないし、ちゃんと自分が活動してきた4年間も白キャンだから、頑張ってきた自分を認めて、「頑張ってきたから幕張に立てたんだ」って思おうって思います。最後は(笑)。

――この4年は、そんな浜辺さんによって支えられてきたんですよ。

浜辺ゆりな そんなことない(笑)。ゆりなは何回も逃げたかったですよ、「自分はいらない」と思ったとき。応援してくれるファンの人がいる、ってわかってるにもかかわらず、「逃げて早く楽になりたい」と思っちゃったし、白キャンにいない自分を考えちゃったりしてたけど、頑張ってきて良かったのかも、って思います。

――そんな葛藤を抱えてきて、解散ライヴはどんなものにしたいですか?

浜辺ゆりな いろんなアイドルさんの解散や現体制終了、卒業がいっぱいあるなかで、白キャンも終わってしまうんですけど、「やっぱりあの頃の白キャン良かったよね、7人の白キャン懐かしいね、なんか恋しいね」みたいに何年先もずっと言ってもらえるようなライヴにしたいです。みおち(橋本美桜)もよく言ってるけど、やっぱ惜しまれたいし、ずっと心に残るライヴにしたいし。幕張メッセに立った白キャンを目に焼きつけてほしいです。

真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)
真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)

真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』

2024年11月4日(月・祝)

幕張メッセ 幕張イベントホール

開場:17:30 / 開演:18:30

https://shirokyan.com/news/3632/

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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