「伊藤洋輝バイエルン移籍」に韓国がナーバスな理由 キム・ミンジェと"丸かぶり" #専門家のまとめ
韓国サッカー界としてはナーバスにならざるを得ない事態だ。
6月23日に一斉に報じられた日本代表伊藤洋輝のシュトゥットガルトからバイエル・ミュンヘンへの電撃移籍。
なぜならドイツの超名門クラブにはすでに、自国の英雄キム・ミンジェが在籍するからだ。"左利きのセンターバック"という点が"丸かぶり"。のみならずキムは移籍初年度となった昨季の後半にポジションを失い、出場機会を得たチャンピオンズリーグ準決勝レアル・マドリード戦ではミスから失点を許し戦犯扱いされた。韓国では「キムの放出有力」という見方から一転、ドイツ発の「新監督が信頼」という情報により、安堵感へと変わっている。ナーバスであったということの証左だ。
ココがポイント
▼直近の報道「新監督で自身もCBだったヴァンサン・コンパニが『キムを評価』」
・移籍説は鎮静…キム・ミンジェ、バイエルン・ミュンヘンで全幅的な支持(スポーツワールド)
▼韓国大手経済紙も「キム・ミンジェの今夏移籍はなくなった」と報道
・大逆転! キム・ミンジェ放出説に終止符。バイエルンGMに続きコンパニ新監督もキムを望んだ…(MKスポーツ)
▼6月13日の時点では「バイエルンは多くの昨季在籍選手を整理」。伊藤獲得は「日本マーケットを狙う意図もあった」(現地有力サッカーYouTuberハン・ジュン氏)
エキスパートの補足・見解
韓国がナーバスになる理由は2つある。
ひとつは2012年の香川真司のマンチェスター・ユナイテッドへの移籍。結果として自国の英雄パク・チソンがQPRへと去り、「欧州名門での自国スターの美しいストーリー」に幕を閉じることになった。
余談だが、香川の加入とパクの移籍は直接の因果関係があったわけではなく、パクにはかねがねファーガソン監督から「出場機会を与えにくくなっている」という話を聞いていたという。パク側も出場機会が減るのなら、とマンUより多くの年俸を払うクラブを探し、QPRにたどり着いた。筆者が移籍決定直前に韓国を訪れていたパクを取材したが、香川に対しては陽気に「マンチェスターにはおいしい鉄板焼き屋があるから教えたい」などと話していた。
もうひとつは欧州組での日韓の構図だ。韓国の立場からすると「欧州組の数は日本に負けるが、トップオブトップは韓国勢が握っている」という自負がある。これが崩れることはサッカー産業的にも好ましくない。
現に今年1月のカタールアジアカップのメンバーは「前線にソン・フンミン(トッテナム=イングランド”ビッグ6”の一角)、中盤にイ・ガンイン(PSG=フランスのトップ)、DFにキム・ミンジェ(バイエルン=ドイツのトップ)がいたことから、「史上最強」の呼び声もあった。
このうちの一角が「日本勢に脅かされる」となれば…本当に由々しき事態。
これは自国内のサッカー産業に大打撃を与える事態だ。日本と同じく「代表のみに関心のあるライトファン層」「Kリーグファン」「サブスクで夜な夜な欧州リーグを観るファン」に分裂している構造の中、この一角のキラーコンテンツ(キムのバイエルンでのプレーぶり)が無くなる点は絶対に避けたいところなのだ。