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『おっさんずラブ』ロスのアナタに! 今こそ見てほしい『君の名前で僕を呼んで』

渥美志保映画ライター

田中圭演じる“春たん”の爆発的なポンコツぶりと、林遣都演じる牧の切ないツンデレぶり、そして吉田鋼太郎演じる部長こと黒沢武蔵のけなげな“ヒロイン”ぶり……純粋無垢な恋する気持ちを、爆笑と涙と胸キュンで描き切った『おっさんずラブ』。みんな幸せになって欲しい!と祈りながら迎えた最終回、ついに結ばれた春田と牧を祝福しつつも――“ロス”に陥っている人はかなり多いんじゃないでしょうか。

そんなあなたに、いまこそ見てほしい作品、それがイケメン同士のピュアなラブストーリー『君の名前で僕を呼んで』です。ミニシアター系作品が大ヒットしにくい昨今の映画業界では珍しいのですが、4月末に公開されて以降、熱烈な観客の支持を集めて、いまだにロングラン上映中というこの作品。今回は、なんとなーく“おっさんずラブ”的視点も絡めつつ、ご紹介したいと思います。ということでまずはこちらをどうぞ!

主役は17歳のエリオと24歳のオリヴァー。二人そろって出てくるだけでご馳走様と言いたくなるほどのイケメンです。これは以前に聞いた某ドラマのプロデューサーの言ですが、「イケメンをセクシーに見せるなら水に濡らすに限る」。水も滴るいい男っつうのはホントだってことですね。「おっさんずラブ」の初回、春田と牧のシャワー中のキスシーンしかりですが、夏のイタリアを舞台にしたこの映画では、エリオもオリヴァーも常に水滴った半裸状態で、素晴らしくセクシーです。

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さて。考古学の教授をしているエリオの父が、ひと夏のアシスタントとして読んだ大学院生オリヴァー。ふたりは一目会った時からなんとなく互いを意識しています。経験豊富なオリヴァーは「全世界共通の好意を匂わすお触り第一弾」ともいうべきカタモミとかマッサージみたいなことで、エリオに“好き好きサイン”を発信。でもまだまだ子供だし、自分が「女性より男性が好き」を確信できないエリオは、そのサインを正確にキャッチできません。それでいて、(エリオの目の前でわざと)誰にでも魅力を振りまくオリヴァーにイライラして、つっけんどんに対応しちゃったりして、可愛いったらありゃしません。

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このエリオがオリヴァーの気持ちに気づき、自分の気持ちを確信することで、物語は急速に転がってゆきます。互いの気持ちを言葉で確認した後、エリオは子供らしいストレートさでオリヴァーを挑発してゆくのですが――こうした関係がちょっとした戯れから一歩踏み出すとなると、大人は急に慎重になるものです。エリオのドキドキが、オリヴァーの肩透かしと期待外れの連続に翻弄される様も、「ツンデレ」好きにはたまりません。

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「おっさんずラブ」では部長が春田を「可愛すぎる、存在が罪」と言ってましたが、おそらくオリヴァーもエリオをそんな風に思っていて、“春田に屈服する部長状態”になることを恐怖しているような感じがあります。オリヴァーは誰を相手にしてもついパワーゲームを演じてしまうアメリカ人で、優位をとるためにエリオを弄んでしまうんですね。ところがある時、エリオを羞恥プレイ的にからかううちに、泣かせてしまう。エリオはそれを楽しめるほど余裕がない、まだまだ子供なんですね~。そうしたエリオの愛情と欲望の痛々しいほどの真っすぐさに心打たれ、オリヴァーは優位をとろうとしなくなる。オリヴァーはガードを完全にといて無防備に―ーつまるところ彼はエリオに屈服するんですね。ふたりが恋を前にすっかり丸裸になる、この場面の胸がぎゅーっとなることといったら!

まだ好奇心だけの小悪魔のエリオが、オリヴァーを挑発する場面。これはこれですごくかわいい
まだ好奇心だけの小悪魔のエリオが、オリヴァーを挑発する場面。これはこれですごくかわいい

そこから先のふたりは、ひたすら見ているこちらが幸せになる感じ。

どうでもいい話ですが、エリオ役ティモシー・シャラメも182cmあるようですが、まだまだ少女のような柳腰で、一方のオリヴァー役アーミー・ハマーががっちりが素敵な194cm、この体格差でいちゃいちゃするふたりが個人的にはめちゃめちゃ萌えます。

さらには、ようやく素直になったふたりの恋愛感情のピュアさとストレートさ。この映画が「おっさんずラブ」にすごくよく似ているなと思うのは、その部分に加えて悪人が一人も登場しないこと。だからこそ同作と同じように、観客誰もが「ふたりには幸せになってもらいたい!」と願うんじゃないかなあ。

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まあそんな中、迎える結末は。実はラストの10分で「春田に出会えなかった黒沢武蔵」ともいうべき人物の姿が浮かび上がってきます。確かに春田級の爆笑はないし、見終わった後に残る気持ちはちょっと違うかもしれませんが、この人の存在、この人の言葉は、すべての観客の胸にグッとくるに違いありません。「おっさんずラブ」ロスで、みなさんの心にぽっかり空いた穴を、この作品がちょっぴりでも埋められるといいな~。

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さて、いまだ上映館を増やし続けているこの映画。LGBTの恋愛を描き日本でも大ヒットした『キャロル』の興行成績を上回るペースで、大ヒット中。公開がない中国本土からの観光客も、劇場に多く足を運んでいるようです。未使用の場面写真を収録した限定版のパンフレットは公開初日でほぼ完売、急遽増刷した分も売り切れちゃっているのだとか。エリオ役の美少年ティモシー・シャラメは、この作品によって最も注目を集める若手俳優の一人に。6月1日公開の『レディ・バード』にも出演中です。そのあたりもぜひご注目下さいね~。

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『君の名前で僕を呼んで』

(C)Frenesy, La Cinefacture

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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