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シンセカイセンが約4年を経てたどりついた「まだ見ぬ世界」~ファーストワンマンライヴレポート

宗像明将音楽評論家
ワンマンライヴでのシンセカイセン(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)

紆余曲折を経てきたグループの初のワンマンライヴ

それは、泥臭いまでの叩き上げの精神が、シンセカイセンの立つステージを一段押しあげたライヴだった。

2018年1月20日、渋谷TSUTAYA O-WESTでシンセカイセンの初のワンマンライヴ「シンセカアップデート中ver1.0-START NEW WORLD-」が開催された。

シンセカイセンは、でんぱ組.incを輩出した秋葉原ディアステージで出会った鳴海ちか、キャンディスン、松永ゆずり、神楽坂れたすによるアイドル・ユニット。かつてはギミック、PRPという名前でもあったが、2017年2月14日にシンセカイセンに改名。そして、1年足らずでたどりついたのが渋谷TSUTAYA O-WESTのステージだった。

シンセカイセン。左から神楽坂れたす、松永ゆずり、鳴海ちか、キャンディスン(提供:ディアステージ)
シンセカイセン。左から神楽坂れたす、松永ゆずり、鳴海ちか、キャンディスン(提供:ディアステージ)

松永ゆずりは一度、秋葉原ディアステージを辞めているが、それでもメンバーは4人での活動を選び、2017年からはDr.Usuiをプロデューサーに迎えてシンセカイセンに改名。そんな紆余曲折を経てきたグループの初のワンマンライヴだった。

2017年12月30日に大阪城ホールで開催されたでんぱ組.incのワンマンライヴ「JOYSOUND presents ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」のバックダンサーにも抜擢されたシンセカイセン。初のワンマンライヴでも、彼女たちはレベルの高いパフォーマンスを見せることになった。

代表曲「ハカイノウタ」の突然の中断

定刻通りに客電が落ちると、映像がスタート。シンセカイセンのライヴでおなじみのSEに合わせて、ファンの声が早くも会場に響いた。そして、SEの中のメンバー紹介に合わせて、シンセカイセンがステージに登場。ハードなエレクトロであるサード・シングル「Actress」でライヴは幕を開けた。

「Empty」「PIECE OF CAKE」「Break It Out」と前身ユニットPRP時代の楽曲が続き、フロアのファンの声も熱を帯びていく。

MCでは、神楽坂れたすが「私たちがワンマンライヴをできる日が来るとは」と語ったが、これまでの歴史を考えればまさに本音なのだろう。

そして、「私たちの新しい世界線を感じてください」という言葉とともに初披露された新曲が「Trust me」。メンバーのヴォーカルを、これまで以上にしっかりと聴かせる楽曲だ。

「あの娘に伝えて」はエレキギターがうなり、ファンのシンガロングも起きる楽曲。MCを挟んでの「あれ あれ?」は、サビのメロディーもダンスもチャーミングなダンス・ナンバーだ。

シンガロングによってステージとフロアが一体化したのが、セカンド・シングルである「Want U,Want U to Kiss Me」。「もう少しだけ」は、シンセカイセンの魅力が激しさだけではないことを、せつないメロディーが伝える楽曲だ。

そして、この日最初のピークタイムとなったのがファースト・シングル「ハカイノウタ」。EDMの楽曲であり、約1分にも及ぶビルドアップでは、メンバーのパフォーマンスによってドラマティックな世界観を表現する。激しいシンガロングとあわせ、シンセカイセンの代表曲と呼ぶにふさわしい。

ところが、その「ハカイノウタ」の最大の見せ場であるビルドアップで楽曲は中断してしまった。メンバーがステージを去ると、ピアノ演奏による「ハカイノウタ」が流れだした。すると、映像が流され、約4年に及ぶ活動を振り返りはじめた。当初は衣装も楽曲も手作りだったこと。メンバー同士の衝突もあったこと。それでも4人でやりたかったこと。2017年2月14日のライヴで初めてオリジナルの衣装と楽曲を手にしたこと。

その映像が終わると、シンセカイセンが登場して再び「ハカイノウタ」のビルドアップからスタート。メンバーの衣装は新しいものになっていた。

(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)
(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)

続けて、この日リリースされたフォース・シングルである新曲「START NEW WORLD」へ。「まだ見ぬ世界へ」と高らかに歌う、現在のシンセカイセンにふさわしい楽曲だ。

そこからノンストップで「Knock! Knock! Knock!」へ。シンセカイセンとファンがともに踊るなか、本編は終わりを迎えた。

「これからもこの4人でシンセカイセン」

アンコールでは、シンセカイセンの4人がひとりずつ感謝の言葉を述べた。キャンディスンは泣くのをかろうじてこらえている状態だ。鳴海ちかは「これからもこの4人でシンセカイセンなのでよろしくお願いします」と述べ、約4年の歴史への誇りを感じさせた。そして、重大発表として発表されたのは東名阪ワンマンツアー「SSS TOUR2018-Chaos Theory-」の開催だ。

(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)
(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)

さらに、再び「もう少しだけ」「ハカイノウタ」が歌われた。「ハカイノウタ」はアンコールでようやくフルで歌われたわけだ。

ファンとともにタイトル・コールをして再び歌われたのが「START NEW WORLD」。シンセカイセンの初のワンマンライヴは、希望に満ち溢れた雰囲気のなか終わった。「キミと、セカイをアップデート! シンセカイセンでした。ありがとうございました!」という挨拶とともに。

約4年という期間は、「苦節」と呼ぶには短いかもしれない。しかし、ほんの1年前までは、真っすぐな道を歩めなかったシンセカイセンの4人の葛藤は相当なものだっただろう。その葛藤を乗り越えたからこそ、「まだ見ぬ世界へ」と歩みだしたシンセカイセンの今後を楽しみにしたいのだ。

(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)
(提供:ディアステージ、撮影:BOZO)
音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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