アジア人女性初!作家ハン・ガン(韓江)さんが「ノーベル文学賞」を受賞|いま、韓国文学が熱い!
韓国の女性作家ハン・ガン(韓江)さん(53)が、2024年のノーベル文学賞を受賞しました。10月10日にスウェーデン・アカデミーにより発表されました。
韓国人の文学賞受賞は初。アジア人女性としても初となる快挙です。韓国人のノーベル賞受賞も、2000年に平和賞を受賞した金大中(キム・デジュン)元大統領以来、2人目となります。
受賞が知らされると、韓国では速報で伝えられました。尹錫悦(ユン・ソンニョル)現大統領や人気グループBTS(防弾少年団)のメンバーをはじめ、多くの有名人が祝福するコメントを残しています。
都内の書店でも特設コーナーが設けられていました!
■作家ハン・ガンさんとは
1970年、光州広域市生まれ。延世(ヨンセ)大学国文科卒業。父親のハン・スンウォン(韓勝源)さんも小説家です。
ハン・ガンさんは1993年に文壇デビュー。2005年、『菜食主義者』に収録された「蒙古斑」で、韓国最高峰とされる文学賞「李箱(イサン)文学賞」の大賞を受賞。2016年には『菜食主義者』の英語版で、英国の「国際ブッカー賞」をアジアの作家として初めて受賞しました。
また『別れを告げない』において、2023年にフランスで最も権威のある文学賞のひとつ「メディシス賞」の外国小説部門を、ことし3月には、フランス語で出版された現代アジア文学作品に授与される「エミール・ギメ アジア文学賞」を受賞しています。
まさに、名実ともに韓国を代表する作家のひとりです。
■日本語で読めるハン・ガンさんの書籍
既に日本語に翻訳されている作品も多くありますので、ご紹介しますね。
-『菜食主義者』(連作小説集)
2016年に「国際ブッカー賞」を受賞した短編集
訳者:きむ ふなさん/出版社:クオン/出版年:2011年
-『少年が来る』(小説)
1980年の光州民主化運動を扱った長編作
訳者:井手俊作さん/出版社:クオン/出版年:2016年
-『ギリシャ語の時間』(小説)
訳者:斎藤真理子さん/出版社:晶文社/出版年:2017年
-『そっと 静かに』(エッセイ集)
訳者:古川綾子さん/出版社:クオン/出版年:2018年
-『すべての、白いものたちの』(小説)
訳者:斎藤真理子さん/出版社:河出書房新社/出版年:2018年
-『回復する人間』(小説)
訳者:斎藤真理子さん/出版社:白水社/出版年:2019年
-『引き出しに夕方をしまっておいた』(詩集)
訳者:きむ ふなさん、斎藤真理子さん/出版社:クオン/出版年:2022年
-『別れを告げない』 (小説)
1948年に起きた済州島四・三事件を背景にした物語
訳者:斎藤真理子さん/出版社:白水社/出版年:2024年
(※出版年は邦訳におけるものです。)
そのほか、アンソロジー収録された作品も数編あります。
ノーベル賞受賞を受けて、さらに邦訳版が増えることでしょう(期待も込めて)!
スウェーデン・アカデミーはハン・ガンさんの作品について、「歴史的なトラウマと向き合い、人間の生命のもろさを暴いた詩的な散文」と評価しています。
授賞式は12月10日にストックホルムにておこなわれます。
■韓国文学・出版翻訳との縁
ここからは個人的なことになりますが、私(筆者)はことし初め、『そっと 静かに』の訳者・古川綾子先生の出版翻訳(書籍の翻訳)講座を受講していました。そのなかで先生が、ハン・ガンさんのことも話されていたのが印象的です。
私は韓国文学の初心者ですが、一緒に講座を受講した方々は韓国文学にもとても詳しく、それに圧倒されてしまいました。それだけ、韓国文学の世界にファンがたくさんいるということを実感したのです。
そして、長きにわたって、優れた韓国文学作品を日本に広めようと尽力していた方々が多くいることを知りました。出版社、翻訳者、読者、書店員、そのほか関係者のみなさんにとって、喜びもひとしおだったことと思います。ハン・ガンさん受賞発表後のSNS上の“にぎわい”を見ても、それが伝わってきました。
4月の本屋大賞もそうですが、小説、エッセイ、絵本といったジャンルを問わず、近年、韓国文学に注目が集まっているのは確かです。ハン・ガンさんの作品は現在、重版・入荷待ちの状態のようですが、ぜひ一度、手にとって読んでみてはいかがでしょうか。
※本屋大賞についての記事はこちら
“韓国歴” 30年以上の翻訳者兼ライターです。
長年の翻訳・取材経験などを生かし、さまざまな視点から韓国の記事を執筆中!
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