Yahoo!ニュース

【K-BOOKフェスティバル】韓国関連書籍のイベントに3200人!ノーベル文学賞ハン・ガンの影響も?

西嶋広美翻訳者(韓国語)/フリーライター
韓国書籍専門のブックカフェ・CHEKCCORIさんのブース(筆者撮影)

去る11月23日(土)~24日(日)、出版クラブビル(東京都千代田区神田神保町)にて、「K-BOOKフェスティバル 2024 in Japan」(以下、K-BOOKフェスティバル)が開催されました。

「K-BOOKフェスティバル」は今回で6回目を迎えた“韓国の本=K-BOOK”に関するイベントです。今年は日本と韓国の45の出版社が、各ブースで韓国関連書籍を展示・販売していました。また、チョン・セランさんやキム・チョヨプさん、イ・スラさんら韓国の人気作家も参加し、イベントを盛り上げました。

私(筆者)は24日に行ってきたので、「K-BOOK」についても述べながら、そのようすをレポートしたいと思います。

■そもそも「K-BOOK」とは?

韓国の話題の本(筆者撮影)
韓国の話題の本(筆者撮影)

「K-BOOK」とは、文学やエッセイ、絵本、小説をはじめ、韓国語学習書まで幅広く韓国に関連した書籍のことをいいます。ここ数年、次々と刊行されていて、日本でも10万部以上を売り上げる大ヒット作品が続々と登場しています。

そんな「K-BOOK」人気を証明するかたちで、今年の「本屋大賞」翻訳小説部門においては、『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(1位)と『不便なコンビニ』(3位)の韓国作品が2作品選ばれました。ちなみに、2020年には『アーモンド』が、2022年には『三十の反撃』が1位を獲得しています。

また、記憶に新しいところでは、韓国人作家ハン・ガン(韓江)さんのノーベル文学賞受賞があります。「K-BOOKフェスティバル」でも展示コーナーが設けられていました。(下に記載します)

SNS上での話題性からベストセラーにつながった本もあり、読書家やZ世代のあいだでも、近年、「K-BOOK」への注目度が高まっているのです。

■「K-BOOKフェスティバル」の会場はこんな感じ!

各出版社のブース(筆者撮影)
各出版社のブース(筆者撮影)

会場となった出版クラブビル3階には各出版社のブースが並び、書籍・グッズ販売のほか、韓国から来日された著者や邦訳版の翻訳者によるサイン会もおこなわれていました。

4階では主にイベントが開催されていて、どれも立ち見客が続出するほど大盛況でした。

翻訳者の斎藤真理子さんと金みんじょんさんによるトークショーのようす(筆者撮影)
翻訳者の斎藤真理子さんと金みんじょんさんによるトークショーのようす(筆者撮影)


私が行った時間帯には、翻訳者の斎藤真理子さんと金みんじょんさんによる対談がおこなわれていました。9月に刊行されたソ・ユミさんの短編小説集『誰もが別れる一日』に関するトークショーで、多くの韓国文学ファンが耳を傾けていました。

そして、もう1か所、私が立ち寄ったのは、韓国の大邱(テグ)から来ていた「旅行者の本」というブース。大邱国際空港の向かい側にある「旅行者の本」は1階が本屋とカフェ、2階がBook Stayスペース(本に囲まれながら宿泊・滞在できる空間)になっている施設なんだそうです。韓国人スタッフが一生懸命に絵本やグッズを紹介していて、その姿が微笑ましかったです。

一緒に行った友人の1人は韓国餅・韓国菓子のブースで立ち止まり、もう1人は、気になっていた本(『すべての人にいい人でいる必要なんてない』)をたまたま見つけて購入していました。『すべての人にいい人でいる必要なんてない』はK-POPボーイズグループEXOのBAEKHYUN(ベッキョン)さんが紹介して、人気を博した作品です。

■“ノーベル文学賞”ハン・ガンの書籍がずらり!

ハン・ガンさんに関する書籍が並んだスペース(筆者撮影)
ハン・ガンさんに関する書籍が並んだスペース(筆者撮影)

上述したように、2024年のノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんに関する特設展示コーナーもあり、多くの方が足を止めて見入っていました

韓国人の文学賞受賞は初。アジア人女性としても初となる快挙です。日本でも大きな話題となりましたよね。韓国人のノーベル賞受賞も、2000年に平和賞を受賞した金大中(キム・デジュン)元大統領以来、2人目です。

授賞式は12月10日にストックホルムにておこなわれます。

彼女の作品は、既に日本語に翻訳されている作品も多い(※)ので、興味のある方はぜひ、読んでみてください。

※『少年が来る』や『そっと 静かに』、『すべての、白いものたちの』などの単著が8作品、そのほかアンソロジーに収録されている作品もあります。

【参考記事】
作家ハン・ガン「ノーベル文学賞」受賞&日本語で読める書籍の一覧

『そっと 静かに』(左)と『すべての、白いものたちの』(筆者撮影)
『そっと 静かに』(左)と『すべての、白いものたちの』(筆者撮影)

■出版社の方も来場者の多さにびっくり!?

出版社HANAさんのブース(筆者撮影)
出版社HANAさんのブース(筆者撮影)

私が会場に着いたのが、オープンする5分前。そのときには既に、行列ができていて驚きました。そのようすに驚いたのは、毎年出店している出版社の方も同じだったようです。

株式会社HANA(以下、HANA)の定本さんにお話をうかがいました。
イベント開始前から外に行列ができていたのが印象的でした。ハン・ガンさんの影響もあると思いますし、NHKのニュースなどで取り上げられたことも、反響が大きかった一因のようですね」

HANAは韓国語を学ぶ人たちのための雑誌や書籍をメインに展開していて、韓国語学習者によく知られた出版社です。

「売り上げは前年比で1.5倍ほど伸び、韓国文学や韓国語への関心の高さをうかがい知ることができました」と定本さん。

定本さんのように、各出版社や運営側からも驚きと喜びの声が聞かれました

会場の素敵なエントランス(筆者撮影)
会場の素敵なエントランス(筆者撮影)


「K-BOOKフェスティバル」の2日間での来場者数は約3200人だったそうです。

個人的な感想にはなりますが、韓国の本(邦訳版も含め)はデザイン性が高く、“映え”が見てとれます。K-BOOKに普段接していなくても、そう感じるようです。私自身、周囲から「韓国の本は書店でも目立つよね」といった声を聞くこともしばしば。

私が初めて実際に見た「K-BOOKフェスティバル」。韓国の本に携わる方々やファンの皆さんの熱い思いも伝わってきて、私にとってとても意味深いものとなりました。楽しい時間を過ごさせてもらったという感覚です。

私が購入した書籍やグッズなど(筆者撮影)
私が購入した書籍やグッズなど(筆者撮影)


来年も開催される予定とのことなので、少しでも気になった方はぜひ、参考になさってください。

【イベント概要】
K-BOOKフェスティバル 2024 in Japan
開催日時:2024年11月23日(土)/11月24日(日)
会場:出版クラブビル(オンラインあり)
参加費:全プログラム無料
主管:K-BOOKフェスティバル実行委員会
共催:一般社団法人 K-BOOK振興会、韓国国際交流財団

“韓国歴” 30年以上の翻訳者兼ライターです。
長年の翻訳・取材経験などを生かし、さまざまな視点から韓国の記事を執筆中!
ぜひ、プロフィールからフォローしていただけるとうれしいです♪

翻訳者(韓国語)/フリーライター

小学生の頃から韓国が大好き!“韓国歴”は30年以上。神田外語大学韓国語学科卒(在学中「韓国外国語大学校」に交換留学)。大学卒業後は約18年間に渡り、韓流ポータルサイトのニュース記事(芸能・政治・経済・社会・スポーツ・北朝鮮)翻訳&コンテンツ企画業務に従事。インタビューや取材記事なども多数執筆。現在はフリーランスの翻訳者&執筆家(writer)として活動しています。

西嶋広美の最近の記事