青春18きっぷ、ネット上の主張「ローカル線客は地元の利益にならない」は暴論!? 改悪で心配される影響
「青春18きっぷ」のルールがこの冬から大幅に変更されることから、SNSを中心に「青春18きっぷのよさが失われてしまった」と蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。これまでは期間内の任意の5日間で複数人でも利用可能であったが、この冬からは複数人での利用は不可となり、「連続する3日間用」と「連続する5日間用」の2種類の販売に変更される。JRグループのニュースリリースでは青春18きっぷの大幅なルール変更について自動改札機を利用できることを利点に挙げている。しかし、突然のルール変更については長年の利用者の反発を招く結果となり、「JR旅客6社に対し、『青春18きっぷ』を従来の制度に戻すよう要望」するオンライン署名活動にも発展している。
さらに、今回のルール変更では、購入時に利用日を決めなければいけなくなったことから、これまでのようにシーズンになったらとりあえず買っておき、あとから使用方法を考えるという使い方もできなくなった。このため、青春18きっぷの販売枚数の減少を心配する声もある。青春18きっぷの年間の販売枚数については、JRグループから正式な情報が公開されているわけではないが、これまでの報道などの断片的な情報から年間でおおむね60~70万枚と言われており、シーズンになると全国各地のローカル線に乗車しに行く乗客も少なくないことから、これが地域振興につながっているという見方もある。しかし、今回の「改悪」により青春18きっぷの販売枚数が減ってしまうと、心配されるのはローカル線沿線への地域振興への影響だ。
地方創生が叫ばれる中で、日本の各地では交流人口の増加を、地域活性化の一つの目標としている自治体なども多い。交流人口とは、その地域とは関係のない来訪者のことをいう。特定の地域において新たな訪問者が増えれば、その地域での消費につながり、それが地域にとっての経済効果につながるという考え方が一般的だ。こうした交流人口を増加させるために地域プロモーションについて多額の予算を拠出している自治体もあるほどだ。
青春18きっぷシーズンとなれば、毎回、全国各地のローカル線には多くの来訪者があり、これが交流人口の増加につながっているケースは多い。インターネット上では、青春18きっぷでこうしたローカル線を訪れる来訪者について、「ローカル線に1円も落とさない乗客なので地元には全く利益がない」という主張が存在するが、こうした主張には交流人口の増加という地域経済の活性化という視点が欠けている。現状の集計方法では、ローカル線単体の売上としては計上されにくいのかもしれないが、実際に青春18きっぷを活用してその鉄道沿線を訪れる来訪者が増加することで、食事や宿泊など沿線で何らかのお金を使えばそれが地域にとっての経済効果に直結する。
地域プロモーションの手段としては、自治体が税金から予算をねん出して広告会社に地域プロモーションを依頼するよりも、青春18きっぷシーズンに鉄道系YouTuberなどのインフルエンサーが沿線を訪問してくれて、鉄道を通じて地域の良さをPRしてくれた方が予算もかからず効果が高いのではないかという声も一部では聞かれるほどだ。
こうしたことから、インターネット上にはびこる「青春18きっぷ客は地元には全く利益がない」という主張はやや暴論ではないだろうか。
(了)