バルサ復帰説、暴行容疑、度重なる負傷...。パリSGが抱えた「ネイマール」という名の爆弾。
ネイマールの周囲が、騒がしい。
ネイマールは2017年夏にバルセロナからパリ・サンジェルマンに移籍した。バルセロナとネイマールの契約上で設定されていた契約解除金2億2200万ユーロ(約275億円)が支払われ、移籍が成立した。
ネイマールの移籍でマーケットの流れは変わってしまった。移籍金の高騰は留まるところを知らず、才能溢れる若手選手やスタープレーヤーをめぐる資金潤沢なクラブのマネーゲームは加熱の一途を辿っている。
ネイマールを失ったバルセロナは、その喪失感からいまだ抜け出せずにいる。ウスマン・デンベレとフィリップ・コウチーニョの獲得に移籍金固定額で総額2億2500万ユーロ(約280億円)を投じたが、バルセロニスタを完全に納得させるには至っていない。移籍市場が開く度にネイマール復帰の憶測が飛び交うのはそのためだ。
■負傷とスキャンダル
フットボール史上最高額でネイマールを獲得したパリSGだが、掲げられているプロジェクトの中心に彼がいるのは間違いない。
2011年にカタール投資庁の子会社であるカタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)に買収されたパリSGは文字通りの「国家クラブ」となった。ナセル・アル・ケライフィ会長の野望のひとつが、チャンピオンズリーグ制覇だ。欧州の頂点を極め、花の都にビッグイヤーを持ち帰る。エッフェル塔の周辺で盛大なセレモニーを催せば、世界にカタールの存在をアピールできる。なにより、ヨーロッパを中心に回ってきたフットボール界を、アジアの一国が征服したというインパクトを残せる。イメージ戦略としては、この上ない効果が期待できる。
だから、彼らはネイマールを獲得した。ファイナンシャルフェアプレーに抵触するリスクを負いながら、賭けに打って出た。しかし、計算外だったのはネイマールの負傷だ。大きな野心を抱いて臨んだチャンピオンズリーグにおいても、この2シーズン、大事なところで負傷欠場している。2017-18シーズン、決勝トーナメント1回戦セカンドレグのレアル・マドリー戦。18-19シーズン、決勝トーナメント1回戦セカンドレグのマンチェスター・ユナイテッド戦。この2試合にネイマールの姿はなかった。そして、パリSGはベスト16敗退に追い込まれた。
負傷欠場した試合数は、53試合にのぼる。さらに、先に行われた国際親善試合のカタール戦で足首を痛め、コパ・アメリカの欠場が決まった。2019-20シーズン序盤戦の参加に黄信号が灯っている。プレシーズンで、ネイマールを中心にしたチーム作りをするのが困難になる。こういった細事の積み重ねが欧州制覇の成否を分けるのだ。
また先日、女性への性的暴行容疑をかけられるなど、ピッチ外でのスキャンダルが取り沙汰されている。良くも悪くもネイマールはメディアの標的になるタイプだ。リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した時でさえ、批判を浴びせていた人々に対して「我慢して僕を受け入れなければいけない」と発言して物議を醸した。ピッチ上ではダイブする選手として非難され、父親で代理人を務めるネイマール・シニアは金の亡者だと揶揄されてきた。
■捩れ
それはある種の組織内の捩(ねじ)れである。パリSGというクラブは、ネイマールという名の爆弾を抱えているようなものだ。
ネイマールを扱うのは容易ではない。エース重視の度が過ぎれば正当性は揺らぐ。バルセロナでは、リオネル・メッシの存在が抑止力になっていた。バロンドールを5回受賞している、名実ともにナンバーワンのメッシに対して、ネイマールは敬意を示し模範としていた。ルイス・スアレスを含め「MSN」と称された南米勢3人の関係性は非常に良かった。
スポーツ的側面においては、パリSGを率いるトーマス・トゥヘル監督の下で「ネイマール・システム」が機能しているとは言い難い。ネイマールをトップ下に組み込む布陣で、エディンソン・カバーニをはじめ複数選手が少なからず犠牲になっている。
その中でネイマールの新たな相棒となったのが、キリアン・ムバッペである。ネイマールと同時期に加入したムバッペはクラブの顔になれるような選手だ。
フランス代表の10番を背負い、ロシア・ワールドカップ優勝に大きく貢献。パリ出身であり、ファンからの支持を受けている。そのムバッペが、18-19シーズン終盤に移籍をほのめかした。加入後、58試合に出場して、51得点29アシストを記録しているネイマールに対して、ムバッペは加入後、87試合に出場して60得点32アシストを記録している。どちらを中心にチーム作りをするのかというテーマは、いまもなお解決を見ていない。
ネイマールの価値は疑いようがない。だが、ネイマールの存在は余りにも大きくなってしまった。もはや、それはコントロール不可の領域に達しようとしている。