スクエアエニクス社、賞金制ゲーム大会の仕様を変更
スクエアエニクス社が展開するアーケードゲーム「ガンスリンガーストラトス」の全国大会における賞金仕様に変更が行われました。以下、公式サイトより転載。
『ガンスリンガー ストラトス3』賞金制公式大会に関するお知らせ
http://gunslinger-stratos.jp/gs3/players/information/22187
今回皆様に、12月に開催を予定しております『ガンスリンガー ストラトス3』賞金制公式大会「GUNSLINGER'S BATTLE ARENA-ReBirth-」の賞金の配分について、諸般の事情により変更することといたしましたので、変更内容とそれに至る経緯をお伝えさせていただきます。
2013年に開催された第1回「GUNSLINGER'S BATTLE ARENA-Birth-」以来、過去4回に渡って大会の成績優秀者となった方々へ賞金提供を行ってまいりましたが、これまで同様の金額による賞金提供は見送らせていただきます。
過去4回に亘って行われてきたガンストの大会ですが、例えば昨年の実施における賞金拠出は賞金総額1000万円、一位チームへの賞金が500万円という国内アーケードゲーム史上では最高金額となるゲーム大会でありました。それが、今年の開催から「諸般の事情」により、賞金総額は1,000万円を据え置きのまま最高賞金額が10万円(ベスト8に残った計8チーム・32名が対象)に変更になったとのことです。
勿論、ここでいう「諸般の事情」とは、先日、私自身が動いたことで消費者庁から初めて明示された賞金制大会における景表法の適用条件に関する法令判断であります。コンプライアンスを最も重視しなければならない上場企業として、今回のスクエアエニクスさんのご判断は非常に賢明なものであると思います。
【参考】総括:賞金制ゲーム大会を巡る法的論争
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9356604.html
実は今回、私自身が消費者庁にコンタクトを取るにあたって、これまで国内の賞金制ゲーム大会において行われてきた各種法制論議をざっと調べております。例えば、昨年12月にゲーム総合情報サイト「Gamer」に掲載された記事によると、以下のように表現されています。
日本で高額賞金のかけられたゲーム大会が開催されないのはどうしてなのか?法的観点から考えてみる
http://www.gamer.ne.jp/news/201512120002/
景品類の最高額等を制限する法律として、景品表示法(正式名称は、不当景品類及び不当表示防止法といいます)というものがありますが、これが原因なのでしょうか?
制限の対象とされる景品類とは、顧客を誘引するための手段として、取引に付随して提供する経済上の利益を指します(景品表示法2条3項)。少し分かりづらいですが、お客さんの購買意欲を高めるため、商品におまけをつけたり、入店した際に抽選券等を配布するといった場面を思い浮かべてみてください。
ケース4
ゲーム制作会社Dは、参加資格をD社制作のゲーム購入者に限定した賞金付きゲーム大会を開催することにし、賞金はスポンサー会社から全額提供してもらうことにした。
ケース4では、賭博罪と風営法はクリアしているので、賞金付き大会を開催すること自体に問題はありません。ただし、参加資格を商品購入者に限定しているため、参加資格目当ての購入を誘引することにつながるもので、取引に付随して経済上の利益を提供しているということになります。したがって、この場合は、景品表示法によって提供できる最高額等が制限されることになります。
他方で、ケース4と異なり、参加資格を限定しない場合には、最高額の制限は問題になりませんし、実際、開催されているほとんどの大会で、参加資格は限定されていません。そうすると、賞金が高額にならない理由は法律のせいではなさそうです。
上記記事を執筆したのは服部匡史さんという弁護士さんであるわけですが、服部弁護士は本稿において「ゲームセンター等を営んでいない者が主催者となって、参加費をとらず、参加資格も限定しなければ、賞金に限度額のないゲーム大会を開催することに法律上の障害はありません」と結論づけておりました。
ところが、先の私が消費者庁に対して直接行った法令適用の確認で判明した事は、実際は業界内で共有されてきたこの法解釈が全くの間違いであり、これまで「法律上問題がない」と説明されてきた多くの賞金制ゲーム大会が、上記ガンストの大会も含めて実は「違法状態にあった」ことが判明してしまったワケで、これまで行われてきた法的検討が如何に適当なものであったのか、ということになります。
また、これまた同様に業界内で「法律上問題がない」と説明されてきた、賞金もしくは大会の取り仕切りする中間法人を立てることでゲームメーカーからの直接の賞金拠出を避ける(避けているように見せる)手法に関しても、私が消費者庁とこれまで直接やりとりした範疇では相当法的にリスクがあると思われる状態なわけで、例えば「eスポーツ推進機構」なる中間法人を立ててこの方式の賞金制大会を推進してきたカドカワドワンゴさんなんかは、今後どうするつもりなのでしょう?
特にカドカワドワンゴさんは、本年の開催では会場内で提供される賞金総額が1億円を超えた実績を持つゲームの祭典「闘会議」の開催を来年2月に控えており、もうそろそろ各ゲーム大会の具体的な内容が発表され始める時期であろうと思うわけですが、スクエニさんが行ったように各社がコンプラ重視の方向で動くのか否か。私自身としては、息を呑みながら各社の動向を見守っているのが実情であります。