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ペットにも食欲の秋が到来 ダイエットをどうすればいいのか。間違えれば、病気になるリスクも。

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

食欲の秋が到来しました。いままであまり食べてくれてなかった犬や猫が、気温が下がり始めると、食事が進みます。喜んでいるからといって、好きなだけあげていいのでしょうか。

体重が増えると犬や猫も病気のリスクは高まります。単にダイエットすれば、いいというものではありません。体重が落ちた後に、病気になりやすくなった子もいます。(現実に、キャベツと少量のドッグフードだけ食べて体重は減ったけれど、難治性の皮膚病になった子もいます)今回は、科学的根拠に基づいた犬や猫のダイエット法を。

肥満とは何か?

ボディ・コンディション・スコア(BCS)引用環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
ボディ・コンディション・スコア(BCS)引用環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
猫のボディ・コンディション・スコア 引用環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
猫のボディ・コンディション・スコア 引用環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」

肥満とは、食べたものによって、カロリーがオーバーして、体に脂肪が蓄積される状態のことをいいます。肥満の状態を示すものとして、「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」というものがあります。標準体型かどうか、見たり触ったりして測定します。

簡単な見方

・外から見て、柔らかい脂肪がついている。

・肋骨が触れるか。

・上から見て腰のくびれは見られるか。

などです。難しい場合は、獣医師にやってもらいましょう。

肥満になりやすい子

種類によって変わってきます。

・避妊・去勢手術をした子たちです。

発情のエネルギーを使わないので、食べることが好きになる子が多いので、この子たちは特に、気をつけてください。

・室内飼いの犬や猫(家族の人が食べるときに、ついついあげてしまう)

・元来狩猟などをする犬は、運動量が少ないと肥満になりやい。

 小型犬:ミニチュア・ダックスフンド、カニンヘン・ダックスフンド、パグ

 中型犬:コーギー、ビーグル

 大型犬:ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー

肥満傾向だとなりやすい病気

・心臓病

・関節炎・関節疾患

・皮膚疾患

・糖尿病

・高脂血症

などです。病気のリスクを減らすためにも、適正な体重にしてあげましょうね。

ダイエットする前に

飼い主が単に太りすぎだと思っていたら、体が腫れている場合もあり、病気の可能性があります。

・がん

・猫伝染性腹膜炎(FIP)

・糖尿病

・肝臓病

・副腎機能亢進症(クッシング病)

・妊娠

・便秘(猫の巨大結腸症)

・胃捻転

などがあるので、獣医師に診てもらい、血液検査をしてから始めましょう。(肥満に見えていても総合タンパク質が少ない子・栄養失調の子もいます)

血液検査の見てもらいたい項目

・TP(総合タンパク)

・Alb(アルブミン)

・WBC(白血球数)

・Ht(ヘマトクリット値)

・CRP(犬の炎症マーカー)

・SAA(猫の炎症マーカー)

危険なダイエットの後になりやい病気

・がん

・皮膚病

などになりやすくなります。

その理由は、極端にタンパク質を取らないと、栄養失調になるからです。がんは免疫不全で起こる病気ですが、体の免疫を守る白血球は、タンパク質で出来ています。それが必要量ないと、そのようなことが起こるのです。体がまずタンパク質を頭と心臓に運びます。最後に皮膚にタンパク質が回ってくるので、皮膚に栄養が届きにくくなり、無理なダイエットの後は皮膚病になりやすいのです。

ダイエットの方法

・食べ物のカロリーを減らすことです。

・家族の人が、与えている量を把握する。

家族が多いと、自分が少ししかオヤツをあげていないでも大丈夫と思いがち。4人家族だとその4倍になるので注意が必要。

・食べる回数を頻回にする。

食べることが好きな子が、カロリーを減らせるとストレスになる場合があるので、同じ量のフードをいままで2回であげていれば、3回4回に増やす。フードのカロリーや量が減っているけれど、回数が多いので、彼らは満足します。

・オヤツは極力、与えない。犬の場合は、トマトやブロッコリーの芯などを代用

・猫の場合は、自由に食べさせる(自由給与法)のはやめる。

決まった時間に出すように。(いままで、ずっと置いたままの場合は、1時間、2時間と置いておく時間を減らしていく)

ペットフードの選択

・総合栄養食の中で低カロリーや肥満用のフードを。(タンパク質は必要なので、単に量を減らした方がいいというものではない)

・適切な体重になれば、従来のものにもどす。

運動をする

・散歩の時間を増やす。

・無理な運動をさせると、関節疾患になったりするので、ゆっくりとその子のペースに合わせて。

まとめ

犬や猫の体は当然ですが、飼い主があげたものでつくられています。そのひと口が肥満のもとになります。ただカロリーを減らしたらいいというものではなく、必要なタンパク質の量などは守りながら、体重管理をしてあげましょうね。彼らと楽しみながら、体重管理をしましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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