東京でもうひとつの暑さ記録 予想外の猛暑はなぜ起こった?
新潟県糸魚川市で日本歴代1位の日最低気温31.3度。東京でも熱帯夜が記録的な長さで続いている。猛暑の背景には台風の相次ぐ発生と日本近海の水温上昇にあった。
猛暑日と酷暑日 どう違う?
日最高気温が35度以上の日を猛暑日というようになって10年が過ぎました。2007年4月の気象庁予報用語の大幅な見直しで、新しく作られた言葉です。それまでは日最高気温35度以上の日に決まった名称はなく、猛暑日、酷暑日、炎暑日などさまざまに言い表していました。
当時を振り返ると、今ほど暑さは強烈ではなく、日最高気温が35度を超えることも少なかった。身体に堪える暑さなので、酷暑といっていた記憶があります。だからでしょうか、猛暑日が選ばれたとき、しっくりといかない印象でした。
気象庁によると、猛暑日、酷暑日の両方に意見が寄せられたが、「酷」は否定的な意味で使われることもあるので、猛暑日となったそう。天気の言葉は伝統的に良し悪しをいわないので、このような選択になったと思います。
海面水温の上昇が暑さの原因に
そして、夜の気温も高くなる一方です。新潟県糸魚川市では8月15日(木)、日最低気温31.3度を記録し、日本歴代の日最低気温を約30年ぶりに塗り替えました。台風10号の影響があるにせよ、極めて高い気温です。
日本海側はこれまでも台風や発達した低気圧によるフェーン現象で、気温が突出して高くなることがありました。さらに拍車を掛けているのが日本近海の海面水温の上昇です。この100年間で1.12度高くなり、世界平均(0.54度)と比べ著しい上昇率を示しています。
東京でも暑さの新記録?
夜が暑かったのは糸魚川市だけではありません。16日(金)の東京の朝の最低気温は28.0度とこの夏最も高くなりました。東京では先月26日以降、気温が一度も25度を下回らず、すでに熱帯夜(日最低気温25度以上の日)は22日連続です。
これまでの記録は2010年の29日連続で、東京都心を冷やすような雨がない限り、この記録を破る可能性が高いでしょう。先月の涼しさを思えば、あまりの変わり身に驚いています。
なぜ予想外の暑さに?
エルニーニョ現象がこの春に終息したとはいえ、これほどまでに大きく夏の天候が変わるとは。多少の暑さはあるにせよ、猛暑が予想以上に続いている印象です。
原因のひとつとして考えたのが台風の相次ぐ発生です。今年は6月末まで台風が少なく、7月後半以降、立て続けに台風が発生しました。
こちらは先月上旬と今月上旬のフィリピン付近の雲の様子をみたものです。先月は雲が少なく、今月は雲が多いのがはっきりとわかります。
フィリピン付近の雲に注目する理由は夏の高気圧の強弱に影響するからです。フィリピン付近で雲がたくさん発生する=台風が発生・発達すると夏の高気圧が強まることが知られています。
暑さは少なくとも今月末まで
台風10号の接近・上陸で、夏の高気圧は後退しましたが、再び勢力を強め、本州付近は引き続き、暖かい空気に覆われる予想です。
しかし、記録的な暑さを説明できるほど、高気圧が強いとは思いません。天候が極端に振れやすくなった背景には温暖化による偏西風の変化や海の水温が上昇していることもあるのでしょう。100年で水温1度の上昇がこれほどの暑さをもたらすとは、数十年前には少数の気象専門家を除いて、だれも信じなかった話です。