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視力6000億!?NASA考案の最新観測構想が最強すぎる…

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「系外惑星の大陸まで見える最新の観測構想がヤバイ」というテーマで動画をお送りしていきます。

●進化し続ける観測技術

近年、人類の観測技術は目覚ましい進歩を遂げています。

様々な観測技術が確立され、そして科学技術が進歩するにつれて設備も進化し続けています。

今から30年前の1990年、地上約600kmで地球を周回しながら大気の影響を受けずに遠方の宇宙空間を観測することを目的とした、ハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられました。

やはりこの望遠鏡の功績は本当にすさまじいです。

ハッブル宇宙望遠鏡は比較的近場にある天体の細かい構造まで鮮明に捉えられるだけでなく、非常に遠く暗い天体を観測することにも長けているため、地球から何十億光年~100億光年以上も彼方にある深宇宙の探査にも用いられてきました。

Credit:NASA, ESA, G. Illingworth, D. Magee, and P. Oesch (University of California,Santa Cruz), R. Bouwens (Leiden University), and the HUDF09 Team
Credit:NASA, ESA, G. Illingworth, D. Magee, and P. Oesch (University of California,Santa Cruz), R. Bouwens (Leiden University), and the HUDF09 Team

こちらはハッブル宇宙望遠鏡の撮影で実際に得られた画像です。

2012年に公開されたこの画像に映っているのはどれも地球から数十億光年~100億光年以上彼方にある、観測可能な宇宙の果てに近いほど遠くにある銀河です。

このような超遠方の天体を鮮明にとらえることで、人類は大昔の宇宙で何が起きていたのかを徐々に知ることができています。

Credit:EHT Collaboration
Credit:EHT Collaboration

そして2019年に史上初めてブラックホールの直接観測に成功した、VLBIという手法も画期的です。

VLBIは、各地に設置された複数の望遠鏡同士をネットワークでつなぎ、通信することで仮想上の巨大望遠鏡を実現する手法です。

Credit:NRAO/AUI/NSF
Credit:NRAO/AUI/NSF

ブラックホールの観測に成功したEHTプロジェクトでは、このように世界各地に設置された8つの望遠鏡を繋ぎ、地球サイズの仮想望遠鏡を実現しています。

このネットワークによって人間の視力換算で300万もの観測性能を実現しました!

そして2021年12月25日に打ち上げに成功したジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル望遠鏡の後継機とされるほど期待される、単一の望遠鏡としては史上最強と名高い次世代望遠鏡です。

宇宙最初の世代の恒星である「ファーストスター」や、「プラネットナイン」など、非常に注目度が高い天体が、この望遠鏡の活躍で今後たくさん発見されるかもしれません。

●最新の観測構想がヤバすぎる

そして今回紹介するのは、先述の観測技術をも遥かにしのぐ恐るべき観測性能を実現する壮大な構想です。

現在の技術ではその存在を点のようにとらえることが限界の系外惑星を、なんとその大陸の姿まで鮮明に映し出すことができるとか…

Credit: ESA/Hubble & NASA
Credit: ESA/Hubble & NASA

そんな夢のような観測を実現するためには、重力レンズ効果を利用します。

重力レンズ効果とは、特に質量が大きく重力が強い天体の周囲の空間が歪められている影響で、その天体の背後にある天体からの光が歪んで見える現象です。

重力レンズ効果が起こると本来地球に届かなかった光まで進路が歪められて地球に届くようになるので、本来よりも多くの光が届き、光源の天体はより明るく見えます。

Credit: The Aerospace Corporation
Credit: The Aerospace Corporation

重力レンズ効果は当然太陽の周囲でも起きています。

太陽の重力で進路を歪められた遠方の天体からの光は、太陽から550au離れた場所にて1点に集まります。

auは地球と太陽の距離を1とした距離の単位で、約1.5億です。

太陽から海王星まででも30au程度しかないので、550auとなると想像を絶する超遠方の世界になります。

40年以上前に打ち上げられて現在も17km/sという速度で太陽から遠ざかるボイジャー1号ですら、太陽から150au程度の位置にいます。

Credit: Toth, V.T. & Turyshev, S.G.
Credit: Toth, V.T. & Turyshev, S.G.

もし太陽から550au離れた焦点にて、太陽系から100光年ほど離れたところにある太陽系外惑星を観測できたとすると、その惑星の光はなんと本来の1000億倍にも増幅されると考えられているそうです!

この太陽の重力によって起こる重力レンズ効果を利用した観測構想を、Solar Gravitational Lensing(SGL)と呼んでいます。

SGLで得られる観測性能を人間の視力に換算すると、実に6000億という数値になります…

ブラックホールを直接観測したEHTプロジェクトが成し得た300万という値すらも軽く凌駕してしまっています。

この性能を人間スケールに置き換えると、海王星にある米粒を見分けることができることになります。

いかにSGLがとてつもない威力を誇るかがわかりますね!

ちなみに上部に表示されている画像は、太陽系から最も近い4.24光年彼方にある恒星プロキシマケンタウリから、SGLの性能を用いて地球を観測した場合にどのように見えるのかをシミュレートした画像となります。

確かにはっきりとその大陸の分布まで見えていますね。

この観測手法が確立されれば、わざわざ太陽系外惑星まで直接向かわなくてもその惑星に生命が生息可能なのかがはっきりとわかってしまいそうです!

この夢のような観測構想が実現するには太陽系の遥か深い場所まで観測機器を送る必要があるため、私たちが生きている世代に実現すると断定はできません。

ですが人類の科学技術の成長率を考えれば、決して不可能であると断定することもできないでしょう。

生きている間に別の惑星の表面の様子を鮮明に見てみたいものです!

●情報参照元:https://www.nasa.gov/directorates/spacetech/niac/2020_Phase_I_Phase_II/Direct_Multipixel_Imaging_and_Spectroscopy_of_an_Exoplanet/
https://aerospace.org/article/solar-gravity-lens-looks-exoplanets
https://www.universetoday.com/149214/if-we-used-the-sun-as-a-gravitational-lens-telescope-this-is-what-a-planet-at-proxima-centauri-would-look-like/
●サムネイル画像クレジット:Slava Turyshev

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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