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「一人だったら鬱になっていた…」元賞金女王・森田理香子がシードを失って気づいた事(前編)

金明昱スポーツライター
昨年シード権を失った森田理香子だが相変わらず人気は根強い

森田理香子がいないと何か物足りない――。

今年、国内女子ゴルフツアーの現場にいるとそう感じてしまう。2013年賞金女王でもある森田は、昨季賞金シードを失い、クオリファイングトーナメント(QT)ランキングは77位となったため、今季のレギュラーツアーは10試合前後に限られてしまった。

そんな森田にとって、今季3試合目となったスタジオアリス女子オープンで、久しぶりに顔を合わせた。開口一番、「意外と元気だったって書いてください(笑)」と笑う姿を見ながら、少し安心したが、彼女がさまざまな葛藤、悩みと戦いながらシーズンを迎えているのはある程度、想像がついた。

いま、森田がどういう心境でいるのかをちゃんと聞いてみたかった。

「いろいろと考えながら過ごしています。ステップ・アップ・ツアー(下部ツアー)にも出られる試合は出ようと思っていますから。ただ、自分の練習やトレーニングも毎日しっかりやっているので、案外、暇じゃないんですよ」

試合に挑むための準備は怠っていないと、森田は何度も強調した。それに、自分が置かれた環境の変化からも、学ぶべきこともたくさんあるようだった。

「毎週試合に出ていたのが、今はそうでないけれど、自由に時間を使えるのはいいかなって思うようになりました。ゴルフをやってきて、こういうのは今までにありませんでしたし、自分のことを振り返ったり、色々なことを勉強する時間でもあるので、今年1年はそういうものを大事にしてきたいです」

誰よりもいい経験している

ジュニアのころからプロになってもゴルフ漬けの日々に変わりはないが、少し余裕ができたことでゆとりを持てるようになったのだろう。

「久しぶりに試合に来たら、やっぱりうれしいです。当たり前のように出られた試合に出られる幸せを感じます。今までは恵まれていて、スムーズに来ていた部分がありましたし、自分が今の位置になってみないと分からない気持ちを感じています。一度は一番上も経験して、今は試合に出られずウェイティングで出場機会を待つことも経験できているので、誰よりもいい経験はしているのかなと思います」

現状の自分を受け入れることに、どれだけ時間がかかっただろう。悩み抜いた末の決断とはいえ、一度は賞金女王になった人間が、新たな一歩を踏み出すにはかなり勇気のいることだったに違いない。

「もちろん、いま経験していることをうまい具合に自分の人生に役立てていけたら、人間的にもすごく大きな人間になれるんじゃないかなって思うんです。今でも目標は高いところにあるので、この状況を乗り越える経験も大事だと思います」

少し沈黙が続き、森田がゆっくり口を開いた。

「そういう気持ちになれたのも、周りの人がいろいろと言ってくれたからです。一人だったら鬱(うつ)になっていますよ」

(つづく)

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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