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【緊急】チェルノブイリ原発、電力断たれ冷却ができない事態に ※IAEAの情報を追加

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナの国営原子力発電公社(エネルゴアトム)は9日水曜日、テレグラムのメッセージで、チェルノブイリ原発とその安全装置への電力供給が、戦闘のため「完全に」遮断されたと発表した。

同公社は、チェルノブイリに保管されている燃料を「常に冷却する必要があります」と述べた。「これは、電気があればこそ可能なことです。このままでは、ポンプが冷えません」。仏紙「ル・モンド」が伝えた。

同公社は「環境への放射性物質の放出」のリスクを警告し、「風はウクライナ、ベラルーシ、ロシア、ヨーロッパの他の地域に放射性の雲を移すことができる」とも述べている。もちろん、欧州だけではない。日本にも関係する。

国際原子力機関(IAEA)は8日、1986年に民間で最悪の原子力災害を引き起こしたチェルノブイリ原発の核物質を遠隔監視するシステムが、データの送信を停止したと報告した。つまりIAEAでは原発の状況を把握できていないという意味だろう。

チェルノブイリ原発は、ロシア軍が占領した後、規制当局とも電子メールでしか連絡ができない状態だと報道されていた。

【続報】チェルノブイリ原発から出されたSOSメッセージ全文

続きの記事:ウクライナのクレバ外相のSOS「予備電源は48時間」IAEA「重大な影響なし」チェルノブイリ電源喪失

※【追記】国際原子力機関(IAEA)が昨日発表した内容(今日のSOSの前)

内容は、チェルノブイリ原発で働く約210人の技術職員と警備員の交代を要求するものだ。彼らは、約2週間前に同原発がロシア軍に占拠されてから、ずっと悪環境で働き続けている(それはフランスで報道されていた)。

ウクライナ当局はIAEAに、彼らが適切な環境で働けるよう、国際的なイニシアチブをとってほしいと依頼していた。

3月2日にはIAEAで、この問題に対する理事会が開かれた。スタッフの規則正しいシフトや休息は、原発の安全に必要不可欠だという。グロッシー事務局長は、チェルノブイリでも他の施設でも自ら赴いて、安全を確かなものにする確約をとる用意があると述べていた。

以下、全文です。

Update 15 - ウクライナ情勢に関するIAEA事務局長の声明

2022年3月8日

オーストリア・ウィーン

ウクライナは本日3月8日、IAEAに対し、約2週間前にロシア軍が現場を掌握して以来働いている、約210人の技術職員と警備員を交代させることが、チェノブイリ原発の安全管理のために、ますます緊急かつ重要になってきていると述べたと、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は言った。

ウクライナの原発の職員が定期的に交代している現状とは対照的に、かつて1986年4月26日に事故が起きたチェルノブイリ原発では、ロシア軍が入った2月24日の前日から同じシフトの職員が勤務しており、実質的には13日間そこで生活していることになると、規制当局は述べている。

ウクライナの規制当局は、職員は限られた範囲で食料と水、医薬品を入手することはできていたと加えた。しかし、スタッフの状況は悪化してきていた。当局はIAEAに対し、同施設に効果的なローテーションシステムを提供するために、現在の職員を交代させる計画の作成に必要な国際的支援を主導するよう要請した。

グロッシー事務局長は、原子力施設を運営する職員は、休息を取りながら規則正しいシフトで働くことが、原子力の安全にとって重要であると繰り返し強調している。

3月2日のIAEA理事会は、ウクライナ情勢がもたらす安全、セキュリティ、セーフガードへの影響に対処するために開催されたが、グロッシー事務局長は、不当な圧力を受けずに意思決定を行う能力は、原子力の安全とセキュリティの7つの不可欠な柱の一つであると説明した。

「チェルノブイリ原発の職員が直面している困難でストレスの多い状況や、これがもたらす原子力安全にとっての潜在的なリスクを、私は深く心配している。私は、現場を実効支配している勢力に対し、そこにいる職員の安全なローテーションを大至急、進めるよう求める」と8日に述べた。

規制当局は、チョルノブイリ原発での核物質の取り扱いは、当分の間、保留されていると付け加えた。立ち入り禁止区域にある同サイトには、廃炉や放射性廃棄物処理施設も存在する。規制当局によると、原発との連絡は電子メールでのみ可能だという。

同国の核施設を守るため、事務局長は、紛争当事者からウクライナのすべての原子力施設の安全とセキュリティへの約束を取り付けるために、チェルノブイリ原発やその他の場所に出向く用意があると表明している。

また、事務局長は、チェルノブイリ原発に設置された保障措置監視システムからの遠隔データ伝送が失われていたことを指摘した。同局は、ウクライナの他の場所に設置されている保障措置監視システムの状況を調査中であり、まもなくさらなる情報を提供する予定である。

規制当局は、ウクライナの稼働中の原発の状況について、先週からロシア軍に支配されているザポリジャー原発の2基を含めて、同国の15基の原子炉のうち8基が稼働しており、発電所の職員が交代で勤務していると発表した。また、放射線量も正常であるとしている。

※詳細が入ったら追加で発信します。私の知る範囲では、ル・モンドのニュースが一番速く、少し遅れてフランス公共放送の速報サイトにも載りました。

12時31分(日本時間20時31分)にチェルノブイリ(仏語のつづりでTchernoby)のニュースを伝えるルモンドの記事。筆者によるスクリーンショット
12時31分(日本時間20時31分)にチェルノブイリ(仏語のつづりでTchernoby)のニュースを伝えるルモンドの記事。筆者によるスクリーンショット

チェルノブイリの事故を伝えるフランス公共放送のサイト。情報は日本語で訳したものと同じで、まだ短信。筆者によるスクリーンショット
チェルノブイリの事故を伝えるフランス公共放送のサイト。情報は日本語で訳したものと同じで、まだ短信。筆者によるスクリーンショット

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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