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今週は長めの寒の戻り 強い寒気の南下で少し早い「雷乃発声」、山は雪の春分の日

饒村曜気象予報士
春 春分 雷乃発声(提供:アフロ)

低気圧の通過で暖かい雨

 令和6年(2024年)3月17日は前線を伴った低気圧が北海道を通過し、西日本の南岸から東日本の南岸を少し波打った前線が通過しました(図1)。

図1 北海道を通過中の前線を伴った低気圧と南岸の前線の衛星画像と天気図(3月17日15時)
図1 北海道を通過中の前線を伴った低気圧と南岸の前線の衛星画像と天気図(3月17日15時)

 このため、ほぼ全国的に雨となり、北海道では雪が降った所もあります。

 とはいえ、低気圧や前線に向かって暖気が北上したため、関東などでは気温が平年よりかなり高くなりました。

 3月17日に最高気温が0度に満たない真冬日を観測したところはなく、最低気温が0度に満たない冬日は309地点(気温を観測している全国914地点の約34パーセント)でした。

 今冬一番の強い寒気が南下してきた令和5年(2023年)12月22日の冬至寒波の頃は、冬日は約85パーセント、真冬日は約29パーセントでしたので、これに比べれば、かなり少なくなっています(図2)。

図2 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2024年1月1日~3月20日、3月18日以降は予想)
図2 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2024年1月1日~3月20日、3月18日以降は予想)

 冬至寒波以降、1月上中旬寒波や、1月下旬寒波など、一週間程度の寒波が南下していたのですが、2月後半以降は強い寒気が南下しても長続きせず、寒波とは呼べない状況になっています。

 ただ、北海道を通過中の低気圧が千島近海で発達し、その後に寒気が南下しますが、3月20日の春分の日の頃に、より強い寒気が南下してきますので、今週に南下する寒気は少し長居をし、長めの寒の戻りになりそうです。

今冬の東京都心の最高気温と最低気温の推移

 今冬の東京都心は、令和5年(2023年)12月上旬までは極端に気温が高い日もあったのですが、冬至(12月22日)寒波以降は、それまでの極端に気温が高い日はなかったものの、気温は高めに推移していました。

 しかし、令和6年(2024年)2月中旬になると季節外れの暖かさとなり、2月20日に23.7度と、2月としては記録的な暖かさとなりましたが、その後気温が急降下しました(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(3月18日~24日は気象庁の予報、3月25日~4月2日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(3月18日~24日は気象庁の予報、3月25日~4月2日はウェザーマップの予報)

 2月23日の天皇誕生日を含む三連休の気温は平年より低くなりましたが、三連休後は、ほぼ平年並みに戻っています。

 しかし、3月5~6日と8日に、南岸低気圧が続けて通過し、気温が大きく下がっています。特に、2回目の8日のときは、4時40分から7時10分まで雪が降り、1センチの積雪を観測しました。

 その後気温が大きく上昇し、最高気温は3月16日に22.7度、17日に21.7度と、連日20度超えとなりました。

 しかし、18日の最高気温の予想は13度となり、しばらくは平年より低くなる見込みです。

 平年より大きく下がるわけではありませんが、季節外れの暖かさからの気温低下ですので、体に堪える大きな気温変化となると思われます。

 気象情報を利用し、こまめな服装調節などで体調維持に努めてください。

春分の日の強い寒気南下

 上空の寒気の強さの目安として、上空約5500メートルの気温が使われます。

 上空約5500メートルで、氷点下30度以下なら平地でも雪が降る強い寒気、氷点下36度以下なら大雪の可能性がある非常に強い寒気です。

 3月20日の春分の日の頃に南下してくる寒気は、氷点下36度以下の非常に強い寒気が東北地方から北陸地方まで、氷点下30度以下の強い寒気が関東の南海上から山陰地方まで南下してくる見込みです(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温分布予想(3月20日夜の予想)
図4 上空約5500メートルの気温分布予想(3月20日夜の予想)

 春は、下層が温まっている所に上空の寒気が入ってきますので、そこそこの上空寒気でも上下の温度差が大きくなり、大気が不安定になります。

 ただ、今回はそこそこの寒気ではなく、強い寒気です。

 特に、春分の日の20日は積乱雲が発達し、山では雪が降り、広い範囲で発雷して落雷の可能性が高くなっています(図5、図6)。

図5 雨雪判別予想(3月20日12時の予想)
図5 雨雪判別予想(3月20日12時の予想)

図6 発雷確率(3月20日昼過ぎの予想)
図6 発雷確率(3月20日昼過ぎの予想)

 春山登山を計画されているかたは、最新の気象情報を入手し、柔軟な予定変更で安全第一をお願いします。

二十四節気の春分

 3月20日の「春分の日」は、国民の祝日のひとつで、「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日とされています。

 この春分の日から4月3日まで、二十四節気の「春分」に入ります。

 「春分」は、初候、次候、末候の3つに分けられ、それぞれ、次のように言われています。

春分の初候(3月20日~) 雀始巣(スズメはじめてすくう)
春分の次候(3月25日~) 桜始開(サクラはじめてひらく)
春分の末候(3月30日~) 雷乃発声(カミナリすなわちこえをはっす)

 春になると、季節が進むにつれて、スズメが巣を作り始め、桜が咲き、恵の雨をもたらす雷が鳴り始めるという意味かと思います。

 この言葉からいうと、春分に入ってすぐ(初候)の雷は、少し早めということもできます。

 なお、「秋分の初候」が、「雷乃収声(カミナリすなわちこえをおさむ)」ですので、昔の人は、春分の末候から秋分の初候までを雷の季節と考えていたことになります。

 雷には、大きく分けて雲放電(雷雲の中や雲と雲の間で起きる放電)と対地放電(雷雲と大地の間の放電で、落雷ともいう。)の二種類があり、それぞれの雷が発する電磁波は、特徴が異なっています。

 気象庁が雷監視システム(通称はライデンLIDEN:LIghtning DEtection Network system)は、雷に伴って発生する電磁波を受信する検知局(全国30ヵ所)があり、電磁波の特徴から雷の種類(雲放電、対地放電)及び発生位置を自動的に算出(標定)しています。

 雷監視システム(ライデン)によると、冬期間でも日本海側を中心に雷がありますが、春分から秋分の夏期間のほうがはるかに多くの雷が発生し、落雷しています。

 図7は月別の雷発生数ですが、縦軸は対数目盛(目盛りが1つ増えると10倍になる目盛)ですので、冬期間と夏期間の観測数には大きな差があります。

図7 気象庁の雷検知システムで観測した雷発生数(雲放電は雲と雲との間の放電、対地放電は雲と地面との間の放電で落雷のことである)
図7 気象庁の雷検知システムで観測した雷発生数(雲放電は雲と雲との間の放電、対地放電は雲と地面との間の放電で落雷のことである)

 昔の人が考えていた通り、春分の末候(雷乃発声)から秋分の初候(雷乃収声)が雷シーズンなのです。

 雷は災害をもたらしますが、稲作にとって大切な雨を伴っています。

 昔から、恐れながらも大切に扱ってきた、それが雷です。

図1、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図7の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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