ライスボウル改革論 前篇
真のアメフト日本一決定戦はライスボウルか?JXBか?
アメリカンフットボールの「日本一」を決めるライスボウルが、本日1月3日に東京ドームにて行なわれる。
今回の対戦は社会人王者決定戦のジャパンXボウル(JXB)を制した富士通フロンティアーズと、大学王者決定戦の甲子園ボウルで勝利した日大フェニックスが「日本一」の座をかけて戦う。
ライスボウルは日本アメリカンフットボール界で最上位に位置するボウルゲームだが、近年はファンを中心にその開催意義に疑問符を投げかけられている。
フロンティアーズが所属するXリーグは、日本トップリーグ連携機構に加盟するアメフト界のトップリーグ。
アメリカでスポーツ取材を続けている筆者には、トップリーグのチーム(ほとんどの場合はプロチーム)と学生チームが試合すること自体に興味を持てない。メジャーリーグでも春先のスプリング・トレーニング中にメジャーのチームが大学生チームと試合をすることはあるが、勝ち負けに意味のない練習試合でしかない。
日本一やアメリカ一(アメリカの場合は『世界一』という名称を好んで使うが)を争う真剣勝負を行う場合、勝って当たり前のプロ側にとってリスクだけ大きく、メリットは少ない。
トップリーグのチームが学生チームに負けた場合には、トップリーグの威信を大きく傷つける。
日本にはプロチームもアマチュアチームも参加できる「天皇杯」があり、サッカーやバスケットボールの天皇杯ではプロとアマチュアチームの対戦も珍しくはない。
サッカーの天皇杯を見てみると、Jリーグが始まった1993年以降全ての年の決勝カードはJリーグチーム同士の対戦である。天皇杯の最多優勝チームは慶應義塾大学の9回だが、慶應が最後に天皇杯を掲げたのは1956年とはるか昔のことだ。Jリーグ発足前でも天皇杯の決勝カードは社会人のトップチーム同士の対戦ばかりであり、最後に学生チームが決勝戦まで勝ち進んだのは1969年に決勝で敗退した立教大学まで遡る。
男子バスケットボールの天皇杯でも決勝カードは社会人チーム(Bリーグ、bjリーグのプロチームを含む)同士が続き、1975年の明治大学以降は40年以上も学生チームは決勝戦の舞台に立っていない。
ラグビーは社会人対学生の「日本一決定戦」を廃止に
アメフトはサッカーやバスケットボールとは異なり、肉体の衝突が繰り返し行なわれる「ボールを使った格闘技」だ。20代後半、30代の鍛え上げられた選手と、成長過程にある10代の選手が同じフィールドでプレーするのは危険極まりない。
相撲の全日本相撲大会はアマチュア力士日本一を決める大会で、大相撲の力士は参加できない。ぶつかり合いのあるスポーツでは、実力差のある選手同士が対決することは非常に危険だ。
体重制に分かれていない相撲で、大型の外国人プロ力士と小柄な日本人アマチュア力士が真剣勝負をしたら、アマチュア選手に大ケガを負わせて、彼らの将来を潰すことになりかねない。
アメフトと同じく肉弾戦が繰り広げられるラグビーは、1998年までは日本ラグビーフットボール選手権試合にて社会人と大学の優勝チーム同士が「日本一」の座をかけて戦っていたが、社会人と学生の実力差があまりにも開き過ぎたことから、この方式を変更。
2017年からは大学チームの参加資格をなくし、トップリーグチーム同士の対戦となっている。
1948年に始まったライスボウルは今年で71回目を迎える由緒ある大会だが、元々は大学生のオールスター戦で、1984年から今と同じ社会人と大学生が「日本一」を争う方式となった。1984年から91年までは大学生が7勝1敗と圧倒。1992年から2001年までは今度は社会人が9勝1敗と形勢逆転した。2002年から大学生が3連覇を成し遂げたが、それ以降は社会人が12勝1敗と圧倒的な強さを見せている。
実力差がこれだけ開いたXリーグと学生がライスボウルで「日本一」を争うのは無意味に感じる。大多数のXリーガーにとっての目標はJXB制覇であり、大学生は甲子園ボウルに勝って「大学日本一」になることを目標にシーズンを戦っている。正直なところ、「日本一」を争う試合であるはずのライスボウルは、「オマケ」的な立ち位置に追いやられている。
Xリーグのチームと大学チームの最も大きな違いはアメリカ人選手の存在だ。日本の大学にも外国籍の選手は在籍するが、その数は少数でXリーグのアメリカ人選手のようにチーム力を大幅にアップする存在とは言い難い。
成長途中にある日本人大学生と身長2メートル近いアメリカ人選手が同じ土俵に上がって対戦するのは危険である。
格闘技で顕著だが、日本では体格差のある選手同士の戦いが興味本位で盛り上がる傾向があるが、アメリカでは大会主催者側(格闘技団体)がそのような試合を組んだとしても、大会を管轄するアスレチック・コミッションからの許可が降りないことが多い。